中学校「特別の教科 道徳」 全面実施に向けて踏まえておくポイント

教科書を用いた授業の在り方は

東京都教職員研修センター教授 峯川 一義

昭和33(1958)年に道徳の時間が特設され、60年の歳月を経て教科となる。10年前、前回の学習指導要領の改訂のときに、中教審「豊かな心をはぐくむ教育の在り方」に関する専門部会の委員であった私は、道徳を教科にするに当たり「教科書は…、教員の免許は…、評価は…」などの疑問を投げかけた。

それらの「答」が整理され、小学校に続き中学校でも来年度から「特別の教科 道徳」(道徳科)として全面実施される。そして、各学校で使用する道徳の教科書は、8月末までに採択の結果が公表される。そこから7カ月後に始まる新しい教科書を用いた道徳科の授業について考えたい。

▽ポイント1「早期に自校で使用する教科書に目を通し、各教材の主題の構想を立てる」

道徳教育の全体計画や道徳科の年間指導計画などは、道徳教育推進教師等が中心になって新たな原案が作成されるであろうが、他の教師は、新年度が始まるころになってから道徳の教科書に目を通せばよいということではない。自校で使用する教科書には、どのような教材が掲載され、どのような「主題」で授業を進めるかを、あらかじめ構想しておくことが大切である。

ちなみに「主題」とは、各内容項目の手掛かりになる言葉とは異なり、「ねらいと教材で構成し、授業の内容が概観できるように端的に表したもの」である。

▽ポイント2「『特別の教科 道徳』の意味を押さえた指導体制をつくる」

道徳科が他の教科と異なることは、大きく二つあると考える。一つは、道徳科の教科担任はいないということである。授業は原則として学級担任が行うのであるが、全てを学級担任任せにしてしまってよいというものはない。ティーム・ティーチングや学年の副担任が授業者になるような授業も1回以上は計画するなど、全教師の協力体制をつくることが大切である。

もう一つは、評価である。学級担任は、一人で最大40人の生徒の学習の状況や成長の様子を文章で評価しなければならない。多感な思春期の時期にある中学生の様子を一面的に捉えることなく適切な評価を行うには、一人一人の生徒を多くの教師で多面的に捉え、担任に伝えることが必要であろう。通常の教科とは異なる「特別の」の意味をおさえ、新しい指導体制をつくることが必要である。

▽ポイント3「道徳科の授業での『考え、議論する』ことは何かを明らかにする」

最近、教材を一通り読み終えて、登場人物の行動について、「あなたならこの場合どうするか」と討論をさせる授業を見る機会が多い。登場人物を批判するグループと擁護するグループに分かれて、活発な討論が続く。そして、最後に教師が「どちらのグループの考えがよいということはありません。今日みんなが考えたことを大切にしてください」などといったまとめをする。こうした授業で、道徳性が育成できるのだろうか。

道徳科の授業を行うに当たっては、まずは学習指導要領解説道徳編を熟読して、何を「考え、議論する」のかを明らかにしておく必要がある。次に教科書を読み込み、各教材で何を「考え、議論する」のか、何を「語り合ったり、話し合ったりする」のが効果的であるかなど、指導を構想しておくことが大切である。私は、多くの教材で「考え、議論する」場面は、道徳科の目標にある「人間としての生き方」についてであると考えている。

▽ポイント4「教科になっても変わらないこと」

「生徒が語り合い、考え、議論する」学習の展開をする際、「教師は生徒とともに考え、悩み、感動を共有していくという姿勢で授業に臨み…」と学習指導要領解説道徳編に示されている。道徳が教科になっても、昭和33年以来変わらず受け継がれている指導の在り方であることを忘れてはならない。


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