地域の宝 貴重な海と産業を学ぶ

全市立小・中教員に海洋教育研修 市ぐるみで推進する「みうら学・海洋教育」
三浦の海を体験を通じて理解する

子供たちに三浦の海を体験させ、豊かな生態系などへの気付きと理解を深めさせる――。

神奈川県三浦市は、児童生徒に市内の身近な海の素晴らしさと重要性を学んでもらおうと、多様な団体と連携した海洋教育を行っている。全市立小・中学校11校で、地域の海とそれに関わる産業などを体験したり、探究したりする「みうら学・海洋教育」の確立と推進を図る。

2016年度からは、市立小・中学校の教職2年目の全教員を対象に、研修も実施。海洋教育の指導者育成と推進体制にも力を入れる。

■多様な協働で豊かな海の理解を図る

三浦市は、東京湾、相模湾、太平洋に囲まれた立地で、海には豊富な魚種と海洋生物が生息する。豊かな海から恩恵を得て、市では水産業が盛んだ。

市の海洋教育は、貴重な海の学びを通して地域に誇りを持つ、子供たちや教員の育成を目指して2012年度からスタートした。

学習には、市内にある東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所(略・三崎臨海実験所)をはじめ、海に関わるNPOなどの関係団体も参画。専門研究者などが指導に携わり、複数のフィールドワークを行っている。三崎臨海実験所が学区にある市立名向小学校が先駆的に実施し、3年目には、全市立小・中学校の展開へと結実した。

名向小では、三崎臨海実験所やNPOと協力しながら、近隣の海岸で研究されていた真珠養殖などを学習題材にした。

児童は真珠の核入れ作業や取り出し作業などを行い、真珠作りの過程を体験。地域の海と関わる歴史も学んだ。育てた真珠はネクタイピンにし、同校卒業生に贈呈する取り組みも図った。

市立初声中学校では、海洋教育を理科の授業に位置付け、「煮干し」の解剖と観察などを行った。解剖作業の講師には、県立海洋科学高校の教員があたった。生徒に煮干しを乾燥標本と捉えさせ、魚体の構造などを学ばせた。

地元の漁業と海の環境変化を考える探究学習も進めた。職場体験学習では、三崎臨海実験所を生徒が訪問。生物標本の整理など、研究職の一端を学んだ。

■各教科と関連付けたみうら学・海洋教育

同市では、市内の豊かな海洋環境や生態系、海と漁業などの地場産業との関連性を学びながら、子供たちに地元の豊かな海の理解と、郷土に関する誇りを養うことなどを目指す。

同市教委の高梨真一指導主事は「一連の海洋教育とそこで育む力は、新学習指導要領が目標とする『豊かな人間性』『確かな学力』などに通じる」とも指摘する。

そのような学びに迫るため、市では、日本財団の助成を受け、多様な協働をコーディネートしながら、全市的な海洋教育を促進するための「みうら学・海洋教育研究所」も設置した。

みうら学・海洋教育研究所の渋谷総一事務局長(左)と、三浦市教委の高梨真一指導主事(右)

同研究所は、元市立学校教員などが職員になり、みうら学の確立と推進に向けた▽カリキュラム開発▽人材育成▽情報発信――を担う。市内各校の実践例を集約、整理し、授業開発に役立つ研究発表会を開き、広報紙を通じた実践の周知などを図る。学校と協働団体が新たな実践を見いだせるよう、さまざまなサポートも行う。

カリキュラム開発では、各教科とみうら学・海洋教育との学びの関連を示す資料などを作成して各学校に伝える。学びの関連性を明らかにする中で、あらゆる教科にみうら学・海洋教育を絡めた実践構想や年間指導計画の作成などを目指す。

■年間10回以上の研修

市立小・中学校教員の半数以上が市外に在住している状況もあり、同教委では2016年度から、全市立小・中学校の教職2年目の教員を「みうら学研究員」として委嘱。教員には年間10回以上のみうら学・海洋教育に関する研修も受講させる。一連の学びを通じて、教員の海に関する理解や指導力向上も目指している。

同研究所の渋谷総一事務局長は「みうら学・海洋教育の実践により、小・中学生から海の自然環境の重要性などを記す作文などが発表されている」と、学習の成果を挙げる。

今後は「児童生徒だけでなく、広く市民が関わる海洋教育につなげていきたい」と抱負を語る。


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