教育の情報化の全国的な底上げを 文科省の髙谷情報・外国語課長に聞く

「現場を全力でフォローする」と語る髙谷浩樹課長

小学校のプログラミング教育や高校の「情報Ⅰ」など、新学習指導要領の実施に向けトピックが満載の情報教育。Society5.0を見据え、学校現場にも変革の波が押し寄せている。課題が山積する中で、学校現場に求められていることは何か。文科省初等中等教育局情報教育・外国語教育課長の髙谷浩樹氏に聞いた。

――来年度、情報教育に関連してどのような施策、取り組みを実施するのか。

2020年度から小学校でプログラミング教育が全面実施されるなど、情報教育関連の施策は「待ったなし」の状況だ。引き続きプログラミング教育の指導事例や教員向けの研修用教材を作成・配布するなど、現場を全力でフォローする。

もちろん、ICT環境の整備といったハード面も喫緊の課題だ。地方財政措置として2018~22年度の5年間で、単年度当たり1805億円が充てられている。現在掲げている学習用コンピューターの拡充や普通教室への無線LAN整備など、新学習指導要領の実施を見据えて最低限必要とされる環境を、自治体が主となって早急に整備してほしい。

――来年度の概算要求で掲げた施策の中で、目玉となるものは。

二つある。まず新規事業としてEdTechの推進事業に7億円計上した。

今年6月、文科省では「Society5.0に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~」という報告書を出した。その中で触れられていたように、これからはAIなど先端技術を用いたEdTechを教育現場で効果的に活用し、児童生徒に、公正に個別最適化した教育を提供していかなければならない。その実証事例を積み上げて普及していく必要がある。

具体的には、▽一人一人の能力や適性、学習状況に応じた学びの個別最適化▽支援が必要な児童生徒の早期発見、支援の個別最適化▽教員の指導力を分析し資質能力を向上▽児童生徒の学習データを蓄積・活用し、教職員・保護者の負担軽減や教育施策の改善・充実――これら四つの分野で実証事業を実施する。各分野4カ所、計16カ所の教委と協力して、課題解決に向け4年間をかけて、事例を作っていく。それらを全国的に普及させ、「公正に個別最適化された学び」を広く実現させたい。

◆英語とICTは親和性が高い
――二つ目は。

英語4技能育成のためのICT活用普及活動事業だ。こちらも新規事業で、約2億5千万円計上した。ICTを活用した英語力育成として、大きなポイントとなる事業になるだろう。

同事業では、新学習指導要領の全面実施に向けて、自治体と民間機関が連携し、動画やアプリなどICTを活用しながら、英語4技能の能力を高める。

新学習指導要領の英語は「聞くこと」「読むこと」「話すこと(やり取り)」「話すこと(発表)」「書くこと」――五つのバランスの取れた育成を図ることを目標とする。その点で英語とICTの親和性は非常に高い。ICTをうまく活用すればこれまで以上に英語教育の質が上がり、4技能を飛躍的に強化できるだろう。

文科省では47都道府県で各10校を対象に3年間、普及促進事業をする。自治体と民間機関のマッチング支援を行い、各地域に事例を作る。地域間でより参考になり、課題解決につながるICT活用事例を普及させる。

――10月の組織再編で生涯学習政策局にあった情報教育課が、初等中等教育局情報教育・外国語教育課になった狙いは。

新学習指導要領では、「情報活用能力」に重きが置かれている。Society5.0に向け「情報活用能力」を身に付けることが必要とされているし、小学校でのプログラミング教育や高校での「情報Ⅰ」が始まる。これまで以上に密に進めていかなければならない分野だ。

加えて「外国語」と一緒の所管になったことも大きい。情報も外国語も新学習指導要領で、学習内容のさらなる充実を求められており、変革期にある。授業をするに当たり、両分野共、ICTの活用や環境整備など共通する課題も多い。学校現場と連携して、児童生徒がスムーズに学習できる仕組みや制度を整えていける体制が必要だ。

そもそも情報における「プログラミング言語」も「外国語」もコミュニケーションのツールという点は共通している。新学習指導要領では情報活用能力は言語能力と同様に、学習の基盤とされる資質・能力として位置付けられている。両者を一体的に進めていく必要がある。

◆未来を生き抜く子供たちのために
――教員に向けたメッセージを。

文科省として推し進めたいのは、教育の情報化の全国的な底上げだ。全ての地域の学校、児童生徒が整った環境で学習できるようにしなければならない。そこに地域格差が生じてはならない。

現場の先生方は日々の業務の上に、これまでやったことがないことを始めるということで、戸惑いを抱えている人もいるだろう。日本の学校教育は現場の教員たちによる努力のたまもので、しっかりと結果も残してきた。

ではなぜ今このような新たなものを取り入れるのか。それは目の前の子供たちのためだ。10年後、20年後、彼らが大人になった社会は、当たり前のようにAIやプログラミングと共存していかなければならない、全く新しい社会になっているだろう。その中を彼らが生き抜いていくために、われわれ教育関係者は今こそ手を打たなければならない。

文科省でも手引やロードマップを作ったり、市町村教委向けに研修をしたりなど、普及活動に励んでいる。どれも初めての取り組みなので、問題点や課題点も出てくるだろう。そこは教委やわれわれにご相談いただきながら、共に解決していきたい。一丸で子供たちの未来のために取り組んでいきたい。


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