「今までのICTを超えるものを」 京都産業大学附属中学校・高等学校

想定を超えた利用率の高さ
「探究」や深い学びの実現に向けて

■新しい学びの実現目指し、ICT整備に着手

「利用の敷居は低く、それでいて今までのICTを超えるものを生み出そうと考えた」――。そう話すのは京都産業大学附属中学校・高等学校(福家崇明校長、生徒1565人)で情報科主任を務める森本岳(たかし)教諭。同校のICT整備事業の推進者として、情報システム整備を担当している。

かつて同校の教室は、黒板だけのオーソドックスなものだった。生徒にスライドなどを見せようと思ったら、教員は持ち運び用のプロジェクターを収めたカートとスクリーンを教室に移動させ、動作確認して調整した上で授業に臨まなければならなかったため、休み時間を全て費やすこともまれではなかった。しかも、カートは全校に6台しかなく、全て出払っていることもしばしばあったという。

新しい時代に求められる学びを実現するためには、生徒が自らの考えを表現する場を設けるとともに、思考・判断の基本となる知識を、いかに効果的に習得させることができるかが鍵になるとして、2016年にICT整備に着手した。

■誰もが活用でき、高い効果を生み出す設備を
専用ペンで直接書き込み、瞬時に消せる

森本教諭はICT整備に当たって、▽不慣れな教員でも手軽に始められる▽すでに活用している教員にはより便利で、より効果の高いものにする――の二つを目指し、必要条件に「操作が分かりやすく、短時間で準備・片付けができ、授業のテンポ感を保(たも)てる」「これまでの蓄積の上に、新たな価値を創造できる」「セキュリティー面での信頼性や、動作の安定性が高い」を据えた。

その全てを兼ね備えていると判断して導入したのが「みらいスクールステーション(みらスク)」。校内サーバーと教室などのプロジェクターを校内LANでつなぐ総合教育ソリューションだ。大掛かりな設備を必要とせず、横浜市や札幌市などの自治体、各学校などで導入が進んでいる。

多彩な機能の一つ「教材コンテンツ視聴」では、教室からサーバーにアクセスして瞬時にデジタル教材を再生できる。プロジェクターにタブレット画面を転送する「タブレット画面転送機能」も備わっている。

これら多彩な機能を実現するのが、独自の技術力を結集して開発されたメディアボックス。リモコンや画面への直接タッチで簡単に操作できるように作られ、PDF化したファイルの投影に加え、マイクロソフト社のオフィスや動画共有サイトの視聴、教材アプリなどさまざまなサービスに対応しており、学校の日常シーンの中で手軽に使用できる。

■「生徒の顔が上がった」

当初は実際に活用されるか不安もあったという。「導入は2017年の2学期からで、その前の1学期末に説明会と研修を行ったところ、夏休み中に練習をしたいという声が続々と上がった。練習用にいち早く設置してもらった教室は連日、フル稼働だった」という。これまでICTを使用していなかった教員も、その手軽さや便利さで次々活用するようになり、あっという間に全校に浸透した。

これまで「チョーク&トーク」にこだわっていた教員も、ついにICTを取り入れた。生徒の反応は「顔が上がった」という。プリント教材の投影によって、これまで板書に費やしていた時間や労力に余裕が生まれ、踏み込んだ解説や生徒との対話ができるようになったというのだ。

森本教諭は「いろいろな伝え方が可能になり、できることが増えて、授業設計の幅が広がった」と語る。起動も速く、パソコンを用意しなくても多様な教材が提示できるので、すでにICTを活用していた教員らも、みらスク導入で授業が大きく変わったと喜びの声を上げているという。

■知的創造活動や「探究」へ

「教室のICT化と、教員による導入はできた。次は『学びの質的転換』」――。森本教諭は「生徒が考えを表現する場を設けることが、学びの質的転換につながる。その中核として、みらスクはなくてはならない存在」と話す。

みらスク導入によって授業の効率化が進み、生徒に自ら思考したり判断したりした内容を表現させる余裕が生まれた。また、ICTを通じた多彩な表現の場を設けることができるようになった。そのため、授業で生徒にプレゼンテーションをさせる教員が増えたという。

校内で実施している「プレゼンテーションコンテスト」に向けた練習も、みらスク導入によって各教室で行えるようになったことで、昼休みや放課後の自主練習が盛んになり、他の生徒と意見を出し合いながら切磋琢磨(せっさたくま)しているという。

「18年2月に行われたプレゼンテーションの全国大会に3チームが出場できたのも、みらスクのおかげ」と森本教諭。「本校でのICT整備が目指すところは、探究的な学びの確立。その中で重要なのは、新しい知を創造して伝えること。みらスクを導入したことで学びが劇的に深まり、生徒の表現力も向上した」と話す。

■生徒にも身近な存在

生徒にとっても身近な存在になり、あらゆる場面で活躍しているという。生徒らは文化祭の企画を立てる際、設計図や完成イメージなどを映し出してイメージを共有した。部活動でも試合の分析や公演の様子の確認に大活躍。昼休みには、生徒会選挙の候補者PRや文化祭企画のCMに用いられている。

体育祭では思いもよらない活用があった。本番が雨天のため中断されたが、残された競技の一部を体育館で開催し、全教室にみらスクで配信したところ、生徒らはライブ中継を見ながら熱く応援した。

同校では18年から全教員がタブレット端末を持ち、メディアボックスの機能を使ったタブレットからの投影が可能になった。山田亘副校長は「今後は生徒もタブレットを持ち、双方向型の授業を進めることで、学びを一層深めていきたい」と抱負を語る。みらスクは、これまでなかった学びを次々と実現可能にしている。


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