新学習指導要領に向けたICTを活用する授業づくりのポイント

東京学芸大学教育学部准教授 高橋 純
■新学習指導要領におけるICT活用

情報活用能力は、言語能力などと並んで学習の基盤となる資質・能力として示され、プログラミング教育も位置付けられた。各教科などにおいて、ICT活用に関する記述も増えている。つまり新学習指導要領の実現に、ICTは大きな役割がある。さらに、学習者用コンピューターを3クラスに1クラス分程度を整備することが教育振興基本計画で示されたり、いくつもの必修の教職科目においてICTを活用した指導法を学ぶことが教職課程コアカリキュラムで示されるなど、さまざまな施策が行われている。

■確実なICT環境整備を

総則には、ICT環境について「コンピュータや情報通信ネットワークなどの情報手段を活用するために必要な環境を整え」と、異例ともいえる言及がある。このように多くの学校での課題は、ICT環境の不足であろう。地域差もさらに状況を複雑にしている。文科省によれば、電子黒板の整備状況であっても、佐賀県の129%から、神奈川県の11%まで大きな差がある。授業づくりにICTの整備状況が大きな影響を及ぼしていることは間違いない。

東京都渋谷区立広尾小学校では、全ての教室に電子黒板が常設され、児童の人数分のLTE付きPCが準備され、学校のみならず家庭にも持ち帰って活用している。このような学校では、ちょっとしたことや隙間時間にもPCを活用する。日常化とはそういうことであろう。充分なICT環境整備が行われた学校と、そうでない学校の差は、まず教員や児童の感覚、慣れの違いなのだと思い知らされる。慣れているからこそ、授業でICTが活用できる。

PCとは“パーソナル”コンピューターのことである。人数分の台数が整うことが一番だ。大抵は無理とはいえ、置き方や活用ルールの工夫などで、擬似的にもパーソナルにICT活用できる環境を整えていくべきだ。本格的に授業でICTを活用しようとすれば、こうした環境整備が欠かせない。

■確実な情報活用能力の育成を
「かく活動」を重視している藤の木小学校

内閣府によると、小・中・高校生のインターネット利用時間は平均一日159分である。これだけインターネットを使っていれば、さぞ児童生徒はICT操作に長けているのではと考えてしまうが、実際にはそうでもない可能性がある。

例えばPISA2015では、前回調査と比較して、読解力の平均得点が有意に低下した結果が得られた。この原因として、コンピューター使用型調査への移行の影響などが挙げられている。友人同士とのコミュニケーションといった軽めのことにICTを活用できても、読解といったレベルには到達していない。

幼稚園児が経験的に日本語を上手に話しても、国語教育は必要である。同様に、経験的にICT機器が操作出来るだけでは不足なのだ。各教科などでICTをスムーズに活用するためにも、情報手段の基本的な操作の習得も含んだ情報活用能力を意図的に育んでいく必要がある。

■主体的・対話的で深い学びとICT活用

総則においてのICT活用に関する主な記述は、「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」の項にある。主体的・対話的で深い学びの実現に向けたICT活用のために、文科省では、「次世代の教育情報化推進事業『情報教育の推進等に関する調査研究』」において、ICT活用推進校(ICT―School)を指定し、具体的なICT活用法を明らかにしようと試みている。私も主査として取り組んだ昨年度の報告書が公開されている。

主体的・対話的で深い学びの実現のためにICTを活用しようとすれば、「学習過程」「見方・考え方」「言語活動」といった考え方も同時に駆使していく必要がある。短い言葉では説明が難しいが、イメージの一例を示せば、知識の理解の質を高め、資質・能力を育む学習過程の質的な改善のために、主体的・対話的で深い学びがあり、それらを支えるために見方・考え方、言語活動、ICT活用があると説明できるだろう。さらに、こうした道具としてのICT活用を支えるために、先に述べたICT環境や情報活用能力がある。つまり、単純にICTさえ活用すれば実現するわけではない。

フューチャースクールの実証校であった広島市立藤の木小学校は、8年が経過した現在でも1人1台でPCの活用を進めている。今年の研究テーマは、学習過程の質的な改善のための「かく活動」の充実である。ICTは、研究テーマの言葉として目立っては現れない。それでも児童は多くの授業で適切にICTを活用する。つまり、ICT活用そのものは学習活動の質を高めるための前提となっており、透明化している。ICT環境が整い、情報活用能力が育った学校では、ICTはこのように道具として位置付けられた実践になる。


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