小学校でのプログラミング教育の授業の進め方~ポイントと留意点~

聖心女子大学非常勤講師 榎本 竜二
■機器が無くてもプログラミング教育はできる

2020年度から小学校でプログラミング教育が全面実施される。しかし予算措置も不十分な状況で、どのような機器が導入されるのか不透明な状況では、何を学んで準備しておけば良いのか分からない。

ただ、プログラミング教育とは「コンピューターを意図した通りに動かせるように指示する体験」と「将来どのような職業でも時代を超えて普遍的に求められる力としての、プログラミング的思考の育成」が目的である。そこで、最初から機器利用を前提とせず科学的に学ぶ、コンピューターサイエンス・アンプラグド(アンプラグド)から始めるのはどうだろうか。

例えば、多くの学校が取り組んでいる地域の良いところや学校の良いところ探しなど、見どころのポイントを列挙し、順番に並べることができればプログラミング的思考を駆使したことになる。もちろん、相手が高齢者だったらなど、条件に即して分岐させることも考えられる。他にも教室以外で地震や火災の放送を聞いたときの行動や、遅刻や宿題忘れが無いようにするための行動など、プログラミング的思考を取り入れられる活動は数多い。

プログラムとは行動手順書である。自分の行動を見直すために、段取りの順番を考える。同じ手順は他の友達の参考にもなり、手順の組み立て方を学んでいれば最終的には無機質な機械まで動かすことができる。そうした機器までのつながりが理解できれば、プログラミング教育の目的は達成できる。

■題材が日常や社会と離れ過ぎないこと

ロボットなどを授業に持ち込むと、子供たちは自分の生活や体験と切り離された抽象的な別世界と意識してしまいがちである。そうした学習教材を遊離して見せないためには、社会とのつながりを見せることと、子供の想像力「物を見立てる力」を生かしたい。

例えば「子供たちを社員と見なして自社の車の改良を行う」「これは新型車いすの検討モデルで機能を考える」などである。自動販売機でも何でも、誰かの何かに役立つために存在して、それはプログラムで動いている。誰かの役に立って笑顔にすることが目的である。社会とのつながりを意識した目的のあるプログラミングは楽しい。

センサーを使う授業では、センサーの精度が甘いため、検知した値を前提にすると失敗するので注意したい。音を鳴らす授業では、教室内に音が溢(あふ)れて混じってしまう。

例えば今回は「光らせる」ことで代替して、「本当はここで音が鳴っているよ」と説明するのが現実的である。ここでも、子供の想像力や「物を見立てる力」を最大限に生かしたい。

■教科で行う時は教科の目標を達成する

教科にプログラミング的思考を加味して授業を行う時は、元の授業の目標(めあて)が達成されなければならない。単に技術習得で終わっていたり、創作活動が主になったりしてはいけない。

プログラミング教育を取り入れることで、元の授業の理解がより進むことを考えなくてはならない。例えば、繰り上がりを間違える子供のために、筆算の手順を書き出させて順番に並べれば、算数をよりよく理解し、プログラミング的思考も身に付く。分かる授業の達成のためには、今までもさまざまな視聴覚機器の導入が行われてきた。プログラミング教育はこれと同じである。授業を壊さず双方の目的を達成するようにしよう。

■情報教育のためだけにあらず

「指導要領上は算数と理科と総合だけだから他教科では不要」という声がある。しかし、プログラミング的思考は、プログラミングの体験にだけ使うものではない。

計算が速くても、文章題の読めない子供たちがいる。文章を論理的に読むことは、全ての教科の基本である。問題を解決するために大きな問題を分割し、最適な順序に並べることは、文章の読解や表現の組み立てに大変有効である。プログラミング教育は新たに入った異物としての邪魔者ではなく、全ての教科をよりよく理解するためのステップの一つであると意識してもらいたい。

自分が担当する学習活動のどの部分に、プログラミング的思考を入れられるか考えるだけでも、授業の見直しや手法改善につながるため、取り組むメリットは非常に大きい。難しい・分からないというマイナス思考ではなく、取り組むだけでもメリットがあると思って、まずは一歩踏み出してもらいたい。


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