対談 海洋立国日本における海洋教育の推進と教育現場への支援

宮原耕治・日本海洋少年団連盟会長(海洋立国懇話会会長・日本郵船(株)相談役)
鈴木仁・日本PCA教育振興会会長(宇都宮サッシュ工業(株)代表取締役社長)

国は「ニッポン学びの海プラットフォーム」を設立し、産学官オールジャパンで2025年までに全市町村での海洋教育の実践を目指す。新学習指導要領では、学校と地域、社会が連携し、子供たちの生きて働く知識・技能の育成などを掲げるが、これは海洋教育が育む力とも合致する。そこで海に関わる社会教育を行う日本海洋少年団連盟の宮原耕治会長(日本郵船(株)相談役)と日本PCA教育振興会の鈴木仁会長(宇都宮サッシュ工業(株)社長)に、海洋教育の意義や同要領の受け止め、団体の取り組みなどで対談してもらった。


■海洋国家日本を支える海洋教育の在り方と人材育成

宮原 海洋国家日本としての今後の在り方を考えると、世界の平和を見据えた海上の安全保障を国策としてしっかり持つことが大事。海洋人材の育成も重要になる。海洋人材の育成は、今年から5カ年で進める国の海洋基本計画でも、大きな柱の一つになっている。

海洋教育には、複数の要素がある。一つは、海洋資源やエネルギー開発などに関わる専門技術者の育成。もう一つは、青少年の教育。青少年に海に親しんでもらいながら、海洋に関わる職業の選択肢を考えてほしい。

国民の祝日である「海の日」の意義を一層、国民間で浸透してほしい。国全体で海の恩恵に感謝し、海洋立国としての発展を確認する機会になればと願う。

■新学習指導要領と海洋教育、ニッポン学びの海プラットフォームへの思い

鈴木 海洋教育は、日本PCA教育振興会も責任を持って取り組む必要性を感じている。

同振興会では、設立3周年に「夢と希望」をテーマにした大人の教育シンポジウムを行った。この中で「大人と子供の井戸端会議」を実施した。

井戸端会議では、高校の体育館を会場に、大人に分からないよう子供たちに大人への意見を書いてもらった。

新学習指導要領では、生きて働く知識や技能、未知の状況に対応できる思考力・判断力・表現力、学びに向かう人間性の育成が示唆されている。

各地で臨海学校の実施機会が減少している。全国的に臨海学校の実施や施設が減少する背景には、安全管理などの観点からプール指導に偏る状況がある。

海洋教育の全国推進と体制整備を目指す国のニッポン学びの海プラットフォーム事業を視野に、海を通した自然環境や生態系など、広範な理解を深める体験的な実践が進むのを願っている。

■新学習指導要領の「社会に開かれた教育」と海洋少年団の活動と教育的意義
宮原氏

宮原 子供たちには臨海学校の素晴らしさを味わわせたい。臨海学校では、子供たちが海と戯れながら多くの発見も得られる。親と離れ、異学年の仲間同士で集団生活する機会なども持てる。

ニッポン学びの海プラットフォーム事業が目標にする「全市町村での海洋教育の実施」は大事。市町村は本気になって臨海学校施設の建設などの予算を確保し、地域ぐるみの海洋教育を進める必要がある。

新学習指導要領では、「学校と家庭と地域の連携」の必要性も示されている。私が会長を務める日本海洋少年団連盟でも、この連携による教育実践を担いたい。

現在、海洋少年団は、全国に90団あり、約4100人の団員がいる。最盛期は3万人の団員がいたが減少している。背景には、子供と保護者の海離れや習い事などの多忙がある。

団では、海を舞台にした体験活動や集団生活、ボランティア活動などに携わる。ボートこぎやロープワークなどを通じて、集団生活に必要な規律を学んだり、自己鍛錬を図ったりしている。

活動では、子供たちが多くの仲間とコミュニケーションし、成長している。活動は、地域の熱意や理解に支えられている。同プラットフォーム事業を通じて、地域の連携にも力を尽くしたい。

■「社会に開かれた教育課程」の日本PCA教育振興会の受け止めと取り組み
鈴木氏

鈴木 日本PCA教育振興会が設立20年を迎えようとする中、社会に開かれた教育課程を踏まえて取り組みたいことがある。一つが、先に紹介した「大人と子供の井戸端会議」。これを全国の同会会員やボーイスカウトなどの協力を得て、親子での活動や対話の機会につなげられればと考えている。その際、日本海洋少年団連盟さんに協力してもらい、船に親子が集まってトークし合う催しなども開きたい。

このアイデアは、過去に私がライオンズクラブにいた際、試みた。全参加者が船に寝泊まりしながら活動を共にしたことで、参加者同士の印象深い思い出にもなった。

■海洋教育を学校で実施する意義と海事関係団体の協力

宮原 海洋教育は、学校の机上だけで行うのではなく、体験学習を行う点が重要。その際、海に関わる団体がしっかり協力しないとニッポン学びの海プラットフォームがうたうオールジャパンの海洋教育は進まない。

日本船主協会では、船を公開し、船室巡りや船長からの話を聞く機会などを設けている。コンテナ船でのコンテナ分類のオペレーションを見てもらう機会もある。国の海洋研究開発機構(JAMSTEC)の海底探査船への乗船機会なども増やすべきだ。日本には海洋博物館と称した施設が多数ある。施設同士の交流や地域の子供の招待など、博物館の有効利用も必要だと思う。

子供たちには、海運で日本の資源や食糧などが支えられていることをしっかり伝える教育が必要。海に関する国際交流の必要性も感じている。私たちのような団体が協力して行動を起こし、国や自治体を動かしたい。


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