JICA海外協力隊経験をもつ教員への期待

(独)国際協力機構(JICA)と全国OV教員・教育研究会はこのほど、「途上国経験をSDGs時代の日本の教育に生かす」をテーマに、第2回全国OV教員・教育研究シンポジウムをJICA関西(兵庫県神戸市)で開催した。OV教員(JICA海外協力隊経験をもつ教員)と2019年度ボランティアとして派遣予定の教員(現職教員特別参加制度2018年度合格者等)らが参加し、JICA海外協力隊経験を日本の教育の中で生かすための実践的な情報の共有と交流がなされた。JICA海外協力隊経験で得られる「人間的な成長と豊かな経験」が次期学習指導要領の考え方や内容と共通点が多く親和性があることに着目し、教育現場におけるJICA海外協力隊経験を持つ教員への今後の期待と役割に関し取材をした。

今回のテーマについて佐藤真久東京都市大学環境学部教授が講演を行い、その中で佐藤教授は「情報化やグローバル化といった社会的変化が加速する中、次期学習指導要領では『主体的・対話的で深い学び』『広い視野で自ら課題を見つけ解決する能力の育成』などを重視している。それらを実現するには世界(グローバル)と地域(ローカル)の視点でさまざまな問題を関連づけて考えることのできる『グローカル教員』による質の高い教育を行うことが期待されている。その役割を期待されているのがJICA海外協力隊経験をもつ教員」と述べ、その理由について「教員としての資質・能力を高めてきているだけでなく、途上国経験を教育現場で生かす上で重要な『人間的な成長と豊かな経験』を獲得してきている」と指摘した。

佐藤教授はJICA海外協力隊経験によって身につく「人間的な成長と豊かな経験」について具体的な12のキーワード()で提示し「これらは、途上国経験の中で段階的に身につくもので、途上国経験を教育現場で生かしていくには、今できること(派遣前)、行ってできること(派遣中)、帰ってできること(派遣後)を常に時間軸の中で自分が『何ができるか』を考えることが重要」と述べた。

途上国経験を日本の教育現場で生かすことの有効性についてOV教員からは、佐藤教授が示した12のキーワードと関連づけながら、「言語や生活習慣、文化の異なる土地で少数、もしくはたった1人の外国人として現地の人とマイノリティーの立場として活動・経験をすることで、少数の立場、多様性の理解につながっている。異なった価値観や考え方を身につけたことで帰国後は、以前と同じ状況に対しても冷静に状況分析ができ、さらに、人(同僚、上司、子供たちなど)に頼ることが自然にできるようになった」など、具体的な成果が報告された。いずれも教科指導、学級運営、国際交流、多様性の理解、地域社会との交流などさまざまな課題に取り組む上で参考になる内容で、今後、JICA海外協力隊経験をもつ教員の役割が期待される。

文科省総合教育政策局教育改革・国際課の小林美陽海外子女教育専門官は「12のキーワードには次期学習指導要領で目指している『生きる力』に通じるところがあり、共通点と親和性がある。教室の中の育成だけでなく子供たちにリアルな体験を伝えてほしい」と期待感を述べた。

■獲得した知見を生かすには管理職の役割は重要

JICA海外協力隊として参加する教員やOV教員にとって管理職の理解はとても重要である。自身も経験者である京都市立高雄小学校の坪内昌子校長は「過度な期待をせず、どう意欲を持たせ生かすかが重要。帰国してから意気込みが強い教員には『日本の中で何ができるか自分の考えを熟成させることが大切』と助言し適材適所を考えてあげてほしい。焦りを感じている教員には自己肯定感を持って帰国後のスタートを切ってもらうため、実践レベルで一歩先をいっているのを認識させ心に余裕を持たせてあげたい。また、仲間の理解を得ながら経験を広めていくには、自身の経験、身に付けてきた資質・能力、還元しようと考えていることなどを管理職や同僚に説明できるだけのビジョンをまとめておくとよい。派遣前や派遣中も帰国後に理解が得られるよう、メールやICTを活用してコミュニケーションをとっておくのが重要」など、経験を学校現場で生かすための管理職の役割について指摘した。


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