教材整備に向けたポイント 坂本淳一文科省大臣官房会計課地方財政室長に聞く

坂本淳一文科省大臣官房会計課地方財政室長

ICT整備で働き方改革を促進

学校における働き方改革で中教審答申が出された。新学習指導要領の全面実施も迫る中、教員の業務負担を軽減し、質の高い授業を実現するためには、ICT機器をはじめとする教材整備が欠かせない。坂本淳一文科省大臣官房会計課地方財政室長に、教材整備を進める上でのポイントを聞いた。

■働き方改革とICT環境整備
――教材整備を巡る施策の現状は。

1月末に中教審で「学校における働き方改革」の答申が出たのをはじめ、教育再生実行会議の中間報告や、昨年示された大臣方針「柴山・学びの革新プラン」は、これからの教材整備を検討する上でも重要な指針になる。特に、学校における働き方改革とICT環境整備が、教育条件の整備で大きな意味を持つようになるだろう。

学校現場に目を向けると、子供の数は減っているものの、特別支援教育や外国人児童生徒への日本語教育など、個別に対応しなければならない課題が山積しており、教員の多忙化の解消を図らなければならない。

まずは定数改善や外部人材の活用を進めていくことが重要だが、その中で改正労働安全衛生法が2019年4月から施行され、勤務実態の客観的な把握が義務付けられるようになる。すでにICカードやタイムカード、パソコンによる勤務時間管理を取り入れている学校も増えているが、この義務化への対応は喫緊の課題だ。

今年度からスタートした「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画」の中にも、学習者用コンピューターや大型提示装置などと並んで、統合型校務支援システムの整備が盛り込まれている。ICカードによる勤務時間管理のシステムを自治体で整備しようとしたとき、行政の一般経費だけでやろうと思えばできるが、財政負担が大きくなる。そこで、例えばこの5カ年計画による単年度1805億円の地方財政措置の枠組みを活用し、統合型校務支援システムとして一体的に整備していく方法が考えられる。学校が抱える課題に対して、現行の支援スキームを工夫しながら活用してほしい。

また、柴山プランでは、全ての小中学校、高校で2020年代の早い時期に遠隔教育ができるようにすることがうたわれている。例えば、離島やへき地の学校や、小規模校で教員の確保が難しい場合など、ICTを活用した遠隔教育の在り方はしっかりと検討していくべきだろう。

2018年度以降の学校のICT環境の整備方針における目標水準
■教育成果のアピールが鍵
――自治体が学校のICT環境の整備を進める上でのポイントは。

ICT環境に関しては、自治体によってばらつきがあるのが実情だ。地方財政は各自治体の行政課題に対して、あくまでもその裁量で一般財源を充てていく。学校の環境整備に使うのか、それ以外の喫緊の課題に充てていくのかは、自治体が自ら判断することになる。文科省としては、学校現場のICT環境の整備を進めるべきだという認識があるが、それに対する整備状況は自治体の考え方によって濃淡がある。そこで、文科省では自治体ごとのICT環境の整備状況を今後積極的に公開し、自治体に対して働き掛けていく方針だ。

首長と教育委員会がその自治体の教育課題を協議する「総合教育会議」の場で、例えば「ICT環境がそろえば、これだけの実践ができる」「こういう教育効果がある」ということを、文科省のモデル事業の成果なども活用しながら示してほしい。ICT環境の整備を進めた後も、その成果を目に見える形でアピールし、理解を得る努力をすることで、さらなる条件整備の改善につながっていくはずだ。

こうした成果の「見える化」が、文教関係の財源をしっかりと確保するための大きなポイントになるだろう。

教材費の財源措置の流れ
■19年度に新たな整備指針
――教材整備に関する今後の動きは。

新学習指導要領の本格実施を控える中で、約10年前から進めている現行の「義務教育諸学校における教材整備計画」は2021年度までとなっている。そこで、来年度には新学習指導要領に沿った新たな教材整備指針を作成することとしている。

教材整備指針は標準的に学校で備える教材を例示するものだ。まずは新たな指針を示した上で、それが財源的・計画的にしっかり整備できるように、20年度以降、次の整備計画を検討していくことになる。

新指針では、例えば新学習指導要領で必修化されるプログラミングに関連した教材や教科に関わらず働き方改革を進めるために整備するものとして、多機能複合機の導入なども考えられる。

具体的な検討はこれからになるが、パブリックコメントなどを通じて、ぜひ多様な意見を寄せていただければありがたい。

――その他に教材整備にはどのような課題があるか。

学校によっては、老朽化して安全面に関わるような教材がそのまま使われていることもあるだろう。そういうものに関しては、やはり早急な更新が必要だろう。教科教育では学習指導要領に沿って10年を一つの目安にして整備計画を立てているが、特に近年は技術革新が早くなる中で、整備したものが陳腐化していくことも十分に考えられる。

一方で、自治体はそれぞれ財政力に違いがある。そう簡単に全部を入れ替えるわけにはいかない面もあるだろう。そこは、優先順位をどう付けていくかが重要だ。一般的に備えなければならない教材を、どう計画的に整備していくかを十分検討してほしい。

――教育現場へのメッセージを。

やはり学校現場の教員にとって、教材整備では「本当はあれもほしい。これも足りない」という状況があると思う。地方財政措置では、教材整備計画やICT整備計画で財源措置をしている。それを、どうやって予算として確保するかは、教育現場でこれらがどのように活用され、どんな効果が見込めるのかについて、特に首長や財政当局からしっかり理解が得られるかどうかにかかっている。教育の世界の中だけにとどまらず、保護者や自治体関係者など、ぜひ外に向けた情報発信を進めてほしい。


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