役割増す学校図書館の施策 組織一元化で連携進める

平川康弘図書館・学校図書館振興室長に聞く

来年度以降、全面実施を迎える新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」を実現するためには、学校図書館の利活用が欠かせない。学校図書館は子供たちにとって、本との出会いの場となるだけでなく、学習センターとしての役割も期待されている。それは教員にとっても同様だ。文科省総合教育政策局地域学習推進課で4月に発足したばかりの図書館・学校図書館振興室の平川康弘室長に、学校図書館を巡る施策や展望を聞いた。


■3年目を迎えた第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」の課題

文科省では、2017年度から「学校図書館図書整備等5か年計画」がスタート。学校図書館の図書整備として総額約1100億円(単年度約220億円)、学校図書館への新聞配備として総額約150億円(同30億円)、学校司書の配置に総額約1100億円(同220億円)の地方財政措置が講じられている。

しかしながら、地方財政措置は使途を特定しない一般財源として措置されるため、自治体によって学校図書館の整備・充実に差が出てしまっている現状がある。

文科省が16年度に調査した「学校図書館の現状に関する調査」によれば、学校の学級数に応じた蔵書の整備目標である「学校図書館図書標準」の達成率は、小学校で66.4%、中学校で55.3%だが、都道府県によっては小学校で40%、中学校で20%を下回るところもある。同様に学校司書の全国的な配置率は小学校59.2%、中学校58.2%だが、小・中共に低いところでは10%に満たない低い水準となっている都道府県もある。

平川室長は「これまでの予算の執行状況を見ても、地方財政措置として組まれた予算があまり活用されているとは言えない。自治体によって異なる学校図書館に対する温度差や優先順位の低さをどうするかが課題だ」と指摘する。

■学校司書と連携した授業づくり

中でも懸念されるのが学校司書の配置だ。本来は各学校に専門的な知識・技能を持った学校司書が配置されるのが理想だが、現実は学校規模の問題から配置されていなかったり、複数校を兼任していたりするため、日によっては学校図書館が閉まったままになっている学校もあるという。

平川室長は「新学習指導要領の実施を迎えれば、『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けて、担任が学校司書や司書教諭と連携して授業に必要な教材となる図書を選定したり、学校図書館を使った授業を実施したりする場面は増える。何より、子供の興味関心に応じて、求めている本を探し出すといったことは、学校司書でなければできない」と強調する。

文科省では学校図書館の充実を図るため、16年度に「学校図書館ガイドライン」と「学校司書のモデルカリキュラム」を策定。19年度には学校現場におけるガイドラインを活用した効果的な事例を収集していく。

さらに、昨年10月の文科省の組織再編によって、これまで初等中等教育局や生涯学習政策局に分かれていた学校図書館、公立図書館、子供の読書活動の施策が、生涯学習政策局に代わって新たに誕生した総合教育政策局の地域学習推進課に一元化されることになった。

図書館・学校図書館振興室はその業務の中核を担う部署として、今年4月に発足。これによって、公立図書館と学校図書館の連携や読書活動の一体的な施策が進むと期待される。例えば、現在一部の地域で実施されている公立図書館の蔵書を学校図書館に貸し出したり、公立図書館の司書と学校図書館の学校司書が合同で研修を実施したり、公立図書館の司書が学校の授業を支援したりするなどの取り組みが全国に広まることが考えられる。平川室長は「図書館と学校図書館の部署が一つとなった手始めに、今年度は公立図書館と学校図書館の連携事例を収集し、普及させていきたい」と語る。

■読書活動の推進に向けて

01年に施行された「子どもの読書活動の推進に関する法律」に基づき、国は18~22年度までの第4次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」を策定した。

第4次計画で現状の課題として指摘されたのは、1カ月に1冊も本を読まない子供の割合(不読率)が小中学生は改善傾向にあるものの、高校生では依然として高い傾向にあり、17年度では50.4%だったことだ。平川室長は「日常的に本を読まない高校生には、部活動や他にやりたいことがあり、忙しくて本を読む時間がないという生徒と、中学校までに読書習慣が形成されず、本を読むことを面倒と感じていたり、関心を持てなかったりする生徒の二つの層に分かれている」と分析する。

そこで、第4次計画では、22年度までに不読率を小学生で2.0%、中学生で8.0%、高校生で26.0%に下げる数値目標を設定。乳幼児期から高校段階まで、発達に応じた効果的な読書活動を提供することや、「子ども司書」、ブックトーク、書評合戦(ビブリオバトル)といった、友人同士で本を薦め合い、読書への関心を高める取り組みを充実させることをうたった。

4月23日の「子ども読書の日」に合わせて、東京都渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催される「子どもの読書活動推進フォーラム」では、子供の読書活動で優れた実践をしている全国の学校や図書館、団体が表彰される。今年度は小、中、高校、特別支援学校など138校、47図書館、56団体(人)が文科大臣表彰を受ける。

平川室長は「子供に対する読書活動は言葉や感性を磨き、表現力や想像力を高めるために非常に有効だ。新学習指導要領の『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けて、学校司書や公立図書館と連携して、教員はより一層、学校図書館を活用した授業を展開してほしい」と話した。


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