新学習指導要領の全面実施まで1年 学校図書館を積極的に活用するための課題と提言

新学習指導要領の全面実施まで、小学校は残り1年、中学校は残り2年。「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、学校図書館をどう活用すべきだろうか。現状と課題、学校図書館のあるべき姿について、関係者が語り合った。

(司会・教育新聞編集部長 小木曽浩介)


■多様な資料を、多様な視点で活用すべき

小木曽 新学習指導要領の全面実施が近づいてきました。「主体的・対話的で深い学び」を実現していくために、学校図書館が求められていることは何でしょうか。

授業改善に生かしていく 文部科学省総合教育政策局地域学習推進課 課長 中野 理美氏

中野 「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善に、学校図書館を生かすことが、新学習指導要領の総則に明記されたことは大きいと捉えています。これからのSociety5.0の時代に生きていく子供たちには、読解力や表現力、感性や創造力を育んでいくことが必要です。変化が激しく予測できない時代において、自ら課題を見つけ、それを解決していく力や、学び続ける力も求められており、学校図書館の果たすべき役割が非常に大きいと考えています。

課題としては、図書館資料の充実と、司書教諭や学校司書といった人材の充実が引き続き挙げられます。また、学校長には、学校図書館長としてリーダーシップをとり、図書館資料の整備や授業改善への活用を学校全体で推進していただきたいと思っています。

設楽 新学習指導要領で求められる授業改善には、学校図書館に書籍や雑誌、新聞、ビデオ、アプリなど多様な資料をそろえ、多様な視点からそれらを活用できるようにすることが必要だと考えます。

また、学校図書館は資料の場だけではなく、子供たちが議論したり、まとめたことを発表したりする交流の場としても、活用を考えていく必要があるのではないでしょうか。

教職員をはじめ子供を取り巻く人たちが、学校図書館は主体的に学習するために欠く事のできない場所であることを理解し、活用していく機運を高めていくことが大切です。

図書館に行く仕掛けを 中央大学附属中学校・高等学校 司書教諭 平野 誠氏

平野 改正学校図書館法が施行され、学校司書の資質向上のために研修などが実施されるようになりました。これにより、学校司書は学校教育の基礎知識や教育課程を学ぶこととなり、生徒対応もより充実したものへと変わってくるだろうと期待しています。

図書資料については、学校によっては全教科への対応が難しい状況です。そこで、ICT環境の整備を進めることが、資料を充実させる助けになるのではないかと考えています。生徒に1人1台の学習者用コンピュータがあれば、資料を個々に見られるという展開も生まれます。より深く学びたい生徒もいるので、そうした個の対応もできるのではないでしょうか。

ICT環境の整備が進めば、アナログ資料とデジタル資料の両方をうまく生かした新世代の学校図書館ができ、活用度も高まるのではないかと考えています。

竹下 子供たちのニーズや個性、悩みなどを一番よく知り得るのは、担任教員でしょう。しかし、今の教員は必ずしも本のことをよく知っているとは思えない面があります。教員が本について知らないと、子供への適切な対応が望めないのではないかと危惧しています。

子供たちは本によって想像力や思考力、他人を思いやる気持ちなどを獲得していきます。また、本は子供の抱える問題などを解決する力を持っています。教員を目指す人は、子供の本を多く読み、子供たちに薦められる本のリストを持っておくことが必要ではないかと思います。

■地方財政措置の予算化推進を

小木曽 学校司書や司書教諭の人材配置、ICT環境も含めた整備計画の進捗(しんちょく)状況はどうなっているでしょうか。

中野 2017年度からの「学校図書館図書整備等5か年計画」では、図書の整備に5年で1100億、新聞配備に5年で150億、学校司書の配置に5年で1100億の地方財政措置がとられることになっています。

他方、16年度「学校図書館の現状に関する調査」の結果によると、学校図書館図書標準を達成している学校の割合は、小学校が66.4%、中学校が55.3%と、前回調査より増加はしているものの十分ではない状況です。また、学校司書を配置している学校の割合は、小学校で59.2%、中学校で58.2%、高校で66.6%です。

地方財政措置を生かして各市町村で適切に予算化し、これらを100%に近づける努力を続けていく必要があります。

教科横断型の学びに期待 (公社)全国学校図書館協議会理事長 設楽 敬一氏

設楽 地方財政措置の予算化を図るためには、学校側の需要をどう高めていくかが重要です。

今の世の中、教員は教科に精通しているだけでは子供たちにうまく伝えられません。子供たちが主体的に学ぶためには、子供たちに学び方をどう指導していくかがカギであり、「学び方の指導」に多くの教員の意識が向けば、学校図書館の資料がなくては授業が成り立たないと気付くでしょう。そして「本が欲しい、資料が欲しい」という需要が高まれば、予算化が図られるのではないでしょうか。

また、同計画では学校図書館図書標準の達成を目指すことに加え、古くなった本を新しく買い換えることを促進している点にも注目しています。学校図書館の本を更新し、新しい本を書架に入れていくことが、子供たちが本を手に取ることにつながります。

■「図書館に行く」仕掛けを授業の中に

小木曽 こうした課題を踏まえ、今後の学校図書館はどうあるべきだとお考えですか。

かに学ぶかを教える場 日本児童図書出版協会会長 竹下 晴信氏

竹下 本来、子供は本が大好きです。本が書棚に配架されていれば、必ずや手を伸ばしてくれます。文科省が1993年から予算化した延べ4668億円の図書予算が、ほとんど使われずにいることは大きな問題です。学校図書館の整備に使わなくては、ますます無駄を助長することにつながります。

また、学校図書館の使い方を教えることは、「いかに学ぶか」を教えるということです。小学校の段階でぜひ教えていただけるよう強く希望します。

平野 学校図書館はますます使われる存在となるでしょう。そうなると、今以上に全教科で、教科横断型の学習で利用できるような資料を満遍なくそろえていることが必要になります。また対児童生徒だけでなく、対教職員の資料提供にも対応できるよう準備が必要です。

授業で図書館が使えるようになると、児童生徒は昼休みや放課後も図書館に調べにくるようになります。いつでも児童生徒対応ができるよう、図書館に司書教諭と学校司書が常駐することも、学校図書館を生かすために必須条件となるでしょう。

今後、授業形態によってはデジタルの方が使いやすいケースも出てきます。司書教諭や学校司書は、デジタルコンテンツに関しても、信頼性があり質の高い情報を選んで提供できるような目利きも必要になります。

学校図書館に行けば、本だけでなく、インターネットで情報を集めたりすることもできる。そして、信頼性のある情報を教えてくれる司書教諭や学校司書がいる。つまり、「学校図書館に行けば困ったことを解決してくれる」というイメージがつけば、児童生徒も教職員も図書館に行くようになるのではないでしょうか。「図書館に行く」という仕掛けを、授業の中にも作っていくことが大切なのではないかと考えています。

設楽 2000年から「総合的な学習の時間」が始まりましたが、授業を受けてきた子供たちを見ていると、その成果が出てきていると感じます。同様に、私は今後増えてくるだろう「教科横断型」の学びが、子供たちに与える影響に期待しています。なぜなら、子供たちは教科の枠が外れると自動的に主体的に学ぶようになるからです。

教科横断型学習を取り入れ、学校図書館を活用すれば、子供たちが主体的に学ぶことに非常にプラスになるのではないでしょうか。

中野 新学習指導要領のポイントの一つとして、カリキュラム・マネジメントが挙げられます。今後、学校図書館が教科横断的に活用され、カリキュラム・マネジメントに寄与できるようになれば、素晴らしい展開になると思います。

また、昨年の秋から当省では公共図書館・学校図書館が同じ課の所管になりました。学校では、例えば探究学習の題材として、自分たちの住む地域を学ぶことが多く取り入れられています。地域の公共図書館は地域資料の宝庫なので、そうした面では学校図書館と公共図書館がしっかり連携していけると、より学びも深まるのではないかと考えています。

設楽 文科省の組織再編については、「子供から大人につなげる読書」という意味から考えると大いに期待しています。利便性の良さから考えても、学校図書館は子供だけでなく、地域の人たちにとっても「身近な知の拠点」として活用されるようになればいいと思います。


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