障害がある子供の世界を広げる 東京都立鹿本学園

読書環境に多様な工夫

図書の貸出数がアップ

本校は肢体不自由教育部門(小・中・高)と知的障害教育部門(小・中)の2部門5学部が併置された、東京23区内で義務教育段階である肢体と知的の小・中学部が併置された初めての特別支援学校である。

本が手に取りやすいよう工夫

児童生徒数は肢体不自由教育部門157人、知的障害教育部門285人で、知的障害教育部門高等部を設置していない学校としては東京都内でも最大規模の学校である。教職員は234人在籍しており、肢体不自由・知的障害のさまざまな専門性を有する教職員や外部の専門家にも協力を得て、専門性の高い教育を実施している。

■本を手に取りやすい環境づくり

本校の学校図書館は母体校2校の学校図書館を統合し、新たな場所にオープンした。図書室は車いすの児童生徒が本を借りるには決して広いとは言えず、400人以上の児童生徒に必要な本を十分に展示することが難しい状況であった。

そのため、学校図書館前の幅の広い廊下に、高さの低いオープン型(面だし)書架を設置した。この書架が「もっと本を借りたくなる!」学校図書館づくりの最大のポイントとなった。

本の表紙を見せることで、本の表紙にこめられた作者・装丁者の思いや内容がタイトルの文字が読めない知的障害がある児童生徒にも理解しやすくなる。また書架の高さが約1メートルと低く、身長の低い児童や車いすの児童生徒が見やすく、手に取りやすい利点がある。

■新しい本を用意して貸出数アップ

本校の蔵書数は2019年3月現在、約6500冊である。鹿本学園の開校にあたり、各母体校で所有していた古い本を大量に廃棄した。古い本を手に取る児童生徒はいないからである。「自分が手に取らない本は子供たちも手に取らない」を合言葉に蔵書の廃棄基準を明確にして廃棄した。

開校から5年間、東京都教育委員会より読書活動等の研究開発校に指定され、本や消耗品などの予算が特別に配布された。

学校の予算と合わせて購入しているが、それだけではこれだけの蔵書数にはならない。本校の読書活動の取り組みに共感し応援してくれる個人や団体から多くの本を寄贈してもらった。

購入図書の選定に当たっては、図書貸し出しシステムのデータを活用して、よく読まれるジャンルの本を重点的に購入することができた。

学校図書館の環境整備が整い、利用者が増え、学校図書館を応援してくれる方が増え、新しい本が増えれば、読書環境が整備され、ますます利用者が増えるという好循環を生み出した。

現在では年間で1万冊を超える貸し出しがある。知的障害がある肢体・知的の小学部低学年の児童の利用が一番多い。

■読書推進月間の実施

開校記念日である11月1日の前後1カ月を開校記念行事「読書推進月間」と指定し、学校図書館利用の促進や読書習慣の定着のため、全校で行う読書活動月間とした。

各児童生徒に配布した読書カードに、1冊借りるごとに1枚ずつシールを貼って読書の意欲を高めていく取り組みだ。この読書推進月間では2学期の終業式に、たくさん本を借りた児童生徒を表彰している。

肢体不自由教育部門小学部2年生の女子児童は1年生のとき、この2カ月、毎日本を借り、その数はなんと77冊に達し1位で表彰された。

また、訪問学級の在籍で障害が重く、学校に通学が困難な生徒であっても、教員が本を選んで家庭へ運んだりして、毎年表彰されている生徒もいる。

■おわりに

特別支援学校が校長のリーダーシップの下、学校全体で読書活動に取り組むことで知的障害のある児童生徒が本を読むことの楽しさを知ったり、読書習慣を身に付け文字を読むことができたり、興味関心の幅が広がったりするなどの成長を確認できた。

知的障害がある児童生徒の知的好奇心を高め、自己選択、自己決定の機会を与えるため、本に十分親しめる環境整備と、読書習慣を確立させる周囲の理解と努力が欠かせない。

今後も校内外での読書活動の充実に寄与し、知的障害がある子供の世界を広げ、共生社会の実現につなげていきたいと考える。

(主幹教諭・高澤昇太郎)


【トップに戻る】