文科省が目指す次世代の教育 髙谷情報・外国語課長に聞く

これからの情報教育の見通しを語る髙谷課長

2023年度までに、遠隔教育を実施したいができていない学校をゼロにする――。文科省は今年3月、学校現場のICT化を進めるための具体策を示した「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」の中間まとめを公表した。遠隔教育の推進と先端技術の活用、そして、学校のICT環境整備の3本柱で、教育の情報化を強力に進めようとしている。推進方策が掲げる施策によって、日本の学校教育はどう変わるのか。文科省初中局情報教育・外国語教育課の髙谷浩樹課長に聞いた。

遠隔教育が広げる可能性
――「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」の狙いは。

推進方策の狙いは、ICTを基盤とした遠隔技術などの先端技術を効果的に活用することで、子供の力を最大限に引き出していくことだ。決して、教師本来の仕事をICTで置き換えるのではない。むしろ、教師がこれまで以上に子供と向き合う時間を確保するためにも、先端技術の活用は必要と考える。

今年の全国学力・学習状況調査で、初めて中学校で英語が実施された。「話すこと」調査でパソコンが使われたが、この調査を受けない学校も多くあった。現在分析中だが、学校のICT環境の遅れが一因であることは間違いない。

これまでは、ICT化を推進によるメリットが強調されてきたが、この学力調査や、教科書にQRコードによるURL引用が増えていることなどからして、学校におけるICT活用は必須と言えるが、全く追いついていないのが実態だ。

「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策」の中間まとめでは、こうした課題を踏まえ、遠隔教育の推進や先端技術の活用、学校のICT環境整備についての具体的な施策を描いた。

――遠隔教育を推進する目的は。

遠隔教育は教育の質を高める可能性がある。学校同士をつないだ合同授業や外部人材の活用、外国人児童生徒への日本語指導、病気療養児に対する指導など、学習の幅を広げたり、機会を確保したりできる。

今年、文科省が全国の教育委員会に遠隔教育の実施状況や活用の意向を調査したところ、全体の4分の1に相当する454自治体が「遠隔教育を実施したいが、実施できていない学校がある」と答えた。遠隔教育を実施できない理由では「ノウハウがなく、どう実施したらよいかわからない」(211自治体)や「コスト面で断念している」(227自治体)といった声が多く挙がった。

文科省では、23年度までにこうした「遠隔教育を実施したいが、できていない学校」の割合を0%にする目標を掲げ、三つの施策を推進する。

まず、学校に遠隔教育の接続先をマッチングしたり、指導面・技術面のアドバイスをしたりする「マッチング&アドバイザリープラットフォーム」を立ち上げ、高等教育機関や民間企業と連携して、学校を支援する。

「遠隔教育システム導入研究事業」を通じて、遠隔教育の効果的な活用方法や技術的な検証を含む実証事例の創出に取り組む。19年度中に、中学校に遠隔教育特例校制度を創設し、同時双方向の遠隔授業で充実した学習が実施できる場合は、その教科の免許を持たない教員が受信側の授業を担当できるようにする。

もう一つが通信インフラの強化である。

SINETとの接続で小中高大のネットワークが実現
遠隔教育の推進に関する工程表(文科省提供資料から)
――遠隔教育で懸念される通信インフラの強化策は。

その問題に対しては、国内の国公私立大学や公的研究機関を100Gbpsで結ぶ世界最高速級の通信インフラ「SINET」を、希望する全ての初等中等教育機関が利用できるようにする。

「SINET」の活用で、高速で大容量の通信確保と合わせ、初等中等教育と高等教育の交流・連携のネットワークを構築することができる。例えば、初等中等教育では、全国の子供が大学の最先端の研究内容や教育にアクセスしやすくなり、地域の枠にとどまらない「小中高大連携」や、遠隔地の高校生が交通費などの費用をかけずに行きたい大学について知ることができる「バーチャルオープンキャンパス」の開催などが考えられる。

大学側にとっても、子供たちの学習データを活用した研究や教員養成、教員研修で可能性が広がる。遠隔教育で教員志望の学生が子供の学習支援をしたり、英語の授業で大学の留学生が登場したりすることも考えられる。また、目的意識や意欲の高い高校生とつながることもできる。

文科省では、20年度から2年間をかけてトライアル校で先行実施をし、22年度からの本格運用を目指している。

――先端技術の活用については。

EdTechなどの先端技術の活用では、学習履歴の蓄積や校務支援システムによる業務の効率化、児童生徒の音声や表情を認識し、把握できるセンシング技術による支援、人工知能(AI)によるドリル学習、協働学習支援ツールなど、すでに学校現場でさまざまな技術の導入が始まっている。

6月に取りまとめる推進方策の最終まとめでは、これらの技術を整理し、学校現場での活用を進めるための基本的な考え方を示したい。それを踏まえ、19年度予算で約2億6000万円を計上している「新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業」の実証先を公募する。

――ICTの環境整備を促進するための施策は。

学校のICT環境の整備の現状は、全国平均で教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は5・6人となっている。22年度までの目標としている3クラスに1クラス分程度の実現には、まだ約185万台が不足している計算だ。さらに、ICTの整備では地域間格差も大きい。整備が進まない理由は、予算要望が自治体の中で通らないということや、整備コストが高くなることだ。

そこで、総務省や経産省とも連携しながら、自治体を超えてICT機器を共同調達し、コストを安くする方法を検討している。民間企業に対しても、学校に提供するハードやサービスのモデル転換を働き掛けていく。学校の教育活動に必要なスペックは必ずしも高い必要はない。1台5万円弱を目安に、教育現場にはどのような機能が必要で、どういう仕様だと使いやすいのかを検討していきたい。

このためにはクラウドの活用を学校現場でも進める必要がある。従来のように学校でサーバーを管理するのではなく、業者に頼んでクラウド化した方がコストも安くなる。こうしたクラウド利用に対応するため、「教育情報セキュリティーポリシーに関するガイドライン」について、夏をめどに見直しを進める。

――今後の情報教育の展開を踏まえ、教員へのメッセージを。

今年9月の「未来の学び プログラミング教育推進月間」では、各地から多数の応募があった。小学校では、新学習指導要領を目前に、プログラミング教育への準備が進んでいると感じる。文科省でも、各地での説明会や「未来の学びコンソーシアム」を通じて情報提供していき、20年度の全面実施を迎えたいと考えている。

中学校や高校の情報教育にもしっかりと取り組んでいく。高校では、プログラミングが必修となる「情報I」について、大学入試で出題する方向で議論が進んでいる。小学校に続き、中学、高校での情報教育を盛り上げていく。

また、現在、国会では議員立法による「学校教育の情報化の推進に関する法律案」が審議されている。法案では、学校の情報化について、国や地方自治体が計画を立てることを求めている。法律になれば、大きな前進になると期待している。

未来を生きる子供たちにとって、地域間・国際間でICT利活用に差が出ることは、大きな問題だ。企業や保護者はもとより、社会が一体となって学校のICT整備に取り組んでいきたい。


【戻る】