新学習指導要領実施に向け ICTを活用した授業づくりの大切なポイント

金沢星稜大学前教授 佐藤 幸江

子供たちの未来

10年くらい前までは、スマホのような小型のパソコンを持ち歩く生活や、自分が生きている間に「鉄腕アトム」のようなコミュニケーションロボットが製品化されるなど想像もできなかった。過去30年とこれからの30年では、きっと技術の進歩のスピードは比べものにならないほど速くなるであろう。また、「令和」になって誕生した子供たちが大学を卒業する頃には、高齢者・労働力不足といった2040年問題に直面、労働力は外国の方々に頼る部分が多くなると言われている。そのような未来に、これからの子供たちは生きていくのである。

これまでの学校教育の課題

これまでの日本型学校教育は、国際的にも評価が高い。しかし、一方では、日本の学校教育現場では取り組まなければならない課題も少なくない。例えば、前述のAIの飛躍的な進歩によって加速度的に変化する社会に応じた教育への転換が、どこまでできるかという課題である。

これまでの日本型学校教育では、教師が答えを持っていて機転の速い子を中心に授業が行われることが多く見られた。じっくり型や視覚的理解が得意な子供にとっては、時間がなくて考えがまとまらない、自信がなくて答えられないという状況があったのではないかと、自身への自戒も含めて思うことである。

さらには、学ぶことに対して有用性を感じていない子供たちの増加には、危機感を感じる。今後、早く正解を導き出す「情報処理力」の高さが重要視されてきた授業から、唯一の正解が存在しない中で、周りの人と議論して考え方や見方を修正しながら、お互いに「納得解」を探っていく力を育成する授業へと「観」の転換が迫られる。

ICTが授業を手助け

そのような授業を考えたときに、強い味方になってくれるのがICTの効果的活用であると考えている。最近では、自治体による差が気になるが、学習者の学びのツールとしてタブレット端末が整備され、授業で積極的に活用する先生も増えてきている。これまで学習者の学びのツールというと、鉛筆と消しゴムだけであった。ここにタブレット端末が加わったのは、授業を大きく変える可能性があると期待している。

そこで、ICT活用に関わって、先生方に考えていただきたいポイントを以下に示すことにする。

(1)情報活用能力の育成を意識する

新学習指導要領では、「総則」において、情報活用能力(情報モラルを含む)を、言語能力と同様に基盤となる資質・能力と位置づけた。その育成を図るためには、各教科等の特性を生かし、教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとすることが明記された。

その育成を意識しないで授業を実施するとどうなるであろうか。インターネットで情報検索しても信頼性の低い情報をうのみにする子供。大量の情報をコピーペーストで収集したけれど、整理や取捨選択ができずに自分の考えの構築に生かせず、ただの丸写しで終わってしまう子供。発表でも、単に情報を羅列することで何を伝えたいのか分からないということが、これまでも見られた。このような「パソコンで検索、ワークシートでまとめ、模造紙で発表する」といった学習活動が、「All in one」でできるタブレット端末を使うことでスムーズに進んでも、これらの課題がより増長されては本末転倒である。

(2)協働的に学ぶ価値を共有する

タブレット端末を活用して協働的に学ぶという名の下で実際に行われている授業で、タブレット端末にある情報をペアで見せ合って交流するだけで後は教師が上手にまとめてしまうという授業。画面を見せて発表する際にどのように話すかという話型指導が強化される授業。結局、教師主導型の授業色を強めることになるという、まったく逆向きに進んでいる状況はないだろうか。

タブレット端末を活用して協働的に学ぶことを通して、より主体的になっていくという価値と、協働的に学ぶそのものの価値を学習者と共有しておく必要がある。

(3)教師の役割を考える

(1)や(2)を解消していくには、教師の役割の転換を自覚することである。まずは、教師自らが今、目の前にいる学習者にどのような力をつけるべきかを分析、授業改善に取り組む姿勢を自らが持つことである。教師自身が、未来を生きる子どもたちに必要な力を考え、その育成を目指す授業と今の自分の授業とのズレを自覚してこそ改善につながる。

國學院大學人間開発学部初等教育学科の田村学教授は、この「子どもが主役となる学びの姿がイメージできるかどうかが『アクティブ・ラーニング』に移行できるかどうかのポイントである※1」と述べている。このような授業改善は、一気には進まない。これからの学びやそこにICTの活用の意義を再度確認し、実践研究を深め、その成果を日常の授業で活用していくことを期待したい。

【引用文献】※1=『授業を磨く』(田村学、東洋館出版社、2015)


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