スーパーバイザーでICT推進 次の一手はリーダー育成

滋賀県草津市教委の先進的実践

小中学校のICT活用が課題になって久しい。だが、文科省によれば、2019年3月現在、全国1812の自治体のほぼ半数に当たる50.1%でICT環境の整備が進んでいない。その中で、全国ICT教育首長協議会の2019 日本ICT教育アワードで、滋賀県草津市教員委員会の「ICT活用で『元気な学校』をつくる草津市の戦略9」が最高賞の文部科学大臣賞を受賞した。

「評価されたポイントは、スーパーバイザーの存在にあると思っています」

学校政策推進課の西村陽介専門員は「ICT活用を進めるためには校長のリーダーシップが不可欠です。草津市教委では、小学校の校長を勇退したばかりのベテランをスーパーバイザーに充て、現場の校長にノウハウを伝えたり、悩みや課題の相談相手になったりしています」と説明する。

タブレット端末を活用

スーパーバイザーとして白羽の矢を立てられたのは、糠塚一彦元校長だ。

糠塚氏は5年前に市教委の課長としてタブレット端末の導入を推進。続いて同市の志津小学校と草津小学校で校長を歴任し、ICT活用のモデルケース作りに取り組んできた。草津小では、多くの教科でタブレット端末を使って児童がクラスメートと話し合いをしながら自分の考えをまとめたり、人型ロボットのPepperを活用してプログラミング学習を行ったりといった先進的な授業を導入。18年には日本教育工学協会(JAET)から全国で19校しかない学校情報化先進校に選ばれた。

こうした実績を持つ糠塚氏は校長を勇退した昨年4月、スーパーバイザーに就任した。

「ICTを活用しろと言っても、現場の教員はいろいろ不安を抱えています。だから、どうしても慎重になってしまう。その不安を解消していくためには、教員への支援が必要です。私は志津小の経験を通して、支援の大切さを学びました」

糠塚氏の説明は実感たっぷりだ。「やらなければならないのは、現場の教員が気軽に相談できるリーダーを全ての学校に育成することです。ところが、実際にはリーダーになれる人材が学校の中で埋もれてしまっていることが多い。そこにスーパーバイザーの役割があります。校長に相談し、リーダーになれる人材を見つけ出し、一緒に育てていく。リーダーがうまく育ち、組織が動き始めれば、あとは現場の教員たちが自分たちで工夫しながらICTをうまく活用していってくれます」

定期的に学校訪問を繰り返し、リーダーの育成や授業の内容など進捗(しんちょく)状況をチェックしていくと、6カ月から7カ月ぐらいでICTの活用が軌道に乗ってくるという。

草津市教委学校政策推進課の方々

草津市教委の先見性は、スーパーバイザーの存在だけではない。同課の江竜眞司課長は「思いつきでやっていくのではなくて、きちんと教育情報化推進計画を立てたこと。ICTを専門に扱う課として、市教委に学校政策推進課をつくったこと。ICTの推進には、特にこの二つが大きかった。学校教育課や教育総務課が扱うのであれば、業務が煩雑になる。もし、市町村が本気でICT教育に取り組むのなら、これがモデルになると思います」と、ICT活用の“奥義”を語る。

次の一手として、草津市教委が力を入れているのは、情報化リーダー研修会におけるリーダー教員の育成だ。市内の小中学校から選ばれた教員に毎年7回程度の研修を行い、各校で少なくとも1人はリーダー教員を確保できるように運営している。14年のスタート当初は授業でのタブレット端末活用法が中心だったが、現在では教育の情報化やカリキュラムマネジメントなど幅広く専門性の高い内容になってきた。

同課の名田雅信専門員は「もともと授業力のある教員はICTを活用すれば、さらにいい授業ができる。同時に情報化は必ず業務改善に関わってくるので、授業の準備時間や校務の削減にもつながる。それがうまくできるかどうかは、組織や教員次第です。新しい気づきを得て自分の学校に合う方法を考えてもらい、リーダーとしてそれぞれの学校で実践してもらうことが研修の狙いです」と説明する。

こうした取り組みによって、日本教育工学協会(JAET)から、市内全小中学校が学校情報化優良校の認定を受け、草津市としても情報化先進地域の認定を受けた。また、校務の情報化についても、校務支援システムの導入で教員の校務時間を年間50時間以上削減するKPIを達成した。この成果は雄弁だ。


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