地産地消の推進と伝統的食文化の継承 学校給食で社会的課題に対応するために

愛媛県松前町立松前小学校

親子料理教室も開催

愛媛県は30年連続で「はだか麦」生産量が日本一で、松前町は県内第2位の生産量を誇る産地である。毎年5月初旬頃から、麦の穂が揺れる黄金色の畑を大型機械が動き、次々と麦を刈り取っている。

本町は一つの給食センターで、小学校3校、中学校3校の約2700食の学校給食を提供している。古くから学校給食の献立に特産物である、はだか麦を取り入れてきた。2016年度の県内産地場産物活用率は、食材数ベースで59.2%と非常に高かった。しかし、田畑の広がる農村地域であり漁港もあるにもかかわらず、町内産地場産物の活用率は17.5%と県内20市町のうち12番目で高いとはいえなかった。

そこで、17年度文部科学省委託事業「社会的課題に対応するための学校給食の活用事業」の指定を受け、本町を中心に松山市、伊予市、久万高原町、東温市、砥部町の中予6市町で「地産地消の推進」と「伝統的食文化の継承」の二つの課題の解決に取り組んだ。

地産地消の推進
夏休みにワーキンググループで地場産物を活用したメニューを開発

(1)本町では地元業者の学校給食への安定的な供給体制を構築するために、過去の給食で使用した農産物リストと各生産者の成果物リストを作成した。さらに新しい農作物についての計画的な栽培について検討し、円滑な発注、納品ができる仕組みの発注フロー図を作成した。

(2)給食センター、納入業者および生産者が連携して地場産物の生産状況の情報を共有することにより、近隣市町間でも地場産物を相互調達することができる流通体制について検討した。ワーキングによる業者間交流や愛媛県ブランド戦略課農林水産部が作成している「学校給食食材データベース」を活用し、6市町間における地場産物の調達方法を生産者と連携して研究した。

伝統的食文化の継承

(1)地元の高等学校や小・中学校の児童生徒および保護者、調理専門学校講師のアイデアを取り入れながら、地場産物を活用した給食メニューの開発を行った。夏休みには、ワーキンググループ構成員の栄養教諭8人と調理員が講師となり、給食センターの大型調理機器を使用して料理教室を行い、試作調理した。小・中学生とその保護者、高校生も参加した。「味」「地場産物の活用」「調理作業、衛生面等学校給食として適切であるか」の三つの観点で評価した。

(2)愛媛県の特産品「じゃこ天」に町内産のはもや、中予地域の郷土菓子「りんまん」に町内産の米粉やもち米を使用し、加工品を開発した。また、6市町の特産品(はだか麦、もち麦、地とうきび、トマト、ひじき、干ししいたけ、赤しそ)をフリーズドライにしたまぜご飯の素を開発した。

6市町の特産品をフリーズドライに

(3)ライフスタイルの多様化により、郷土料理や地場産物を活用した料理は、家庭で作られる機会が少ない。子供たちにとって、なじみの少ない食材や調理方法であり、学校給食の人気メニューとして定着しづらい。そこで、新しく開発したメニューについて学校給食で調理するための作業手順書をマニュアル化し、メニューとしての定着化を図った。

成果

(1)給食物資納入関係者が業者間交流として、それぞれの地域の地場産物を相互調達したり、地場産物を活用した新メニューを考案したり、栄養教諭による加工品開発を行ったりして、学校給食で繰り返し提供した。これらの取り組みによって、地場産物の活用率が16年度59・2%から73・4%まで上昇した。この活用率は、現在も維持できている。

(2)地場産物を活用したメニューを計画的に提供し、給食掲示や給食時間中のテレビ放送で児童生徒に食に関する指導を繰り返し行った。各学校のリクエスト給食も、テーマを地産地消の一つの食材に絞って考案させた。6年生の家庭科では栄養教諭が指導し、開発した新メニューを活用した1食分の献立を考えさせ、3校のコンテスト形式にして給食に採用した。

資料を展示し児童の興味を喚起

町内産の食材を使った体験授業や生産者の農場での収穫体験をし、収穫した食材を松前町文化祭の学校給食展で地域の方に配布することにより、児童生徒が地域の食材に興味関心を持ち、生産者への感謝の気持ちや地域の食文化に対する認識が高まった。

昨年度は、地元の農業高等学校が松前町産のはだか麦を使った麺づくりの出前講座に来校し、体験授業を行った。

現在は、本町独自の生産者や納入業者との定期的な会議を持ち、町内産の食材の種類や量が安定的に供給してもらえるようになってきている。今後も、小・中・高等学校の連携を深めながら、地域の良さを感じられる取り組みを継続していく。


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