豊かな海の保全めざし 国連海洋科学の10年を展開

子供のオーシャンリテラシーの育成を

未来を生きる子供たちに美しい海を残すために――。2021~30の10年間は、「持続可能な開発のための国連海洋科学の10年」とされ、ユネスコのリードにより世界規模で海洋保全活動などが展開される。島国の日本にとって、海の保全と日々の暮らしは切っても切れない関係だ。この世界規模の運動に学校教育はどのように関わったらよいか、文科省の日本ユネスコ国内委員会の担当官に聞いた。


国連海洋科学の10年は、ユネスコの政府間海洋学委員会(IOC)からの提案によるもので、17年12月の国連総会で採択・宣言された。

「持続可能な開発目標(SDGs)」の14番目に掲げられる「持続可能な海洋資源の保全と活用」を達成するために、世界各国の専門家が集結し、科学的な視点から海洋の現状課題を解決に導いていく。

18~20年を準備期間と定め、世界中の各エリアでワークショップを開催し、それぞれの海域が抱える課題を整理。21~30年の10年間で実行に移していく。

横浜市立みなとみらい本町小学校の海洋教育の実践

具体的には、健全な海洋環境を考慮した漁業の方法など経済活動についての研究や、海洋科学についての人材育成を強化するなど、人間と海洋のより良い関係性を探っていく予定である。

国内委員会の担当官は、「海が深刻な問題に直面していることは多くの者が知っている。10年間の活動は研究者だけにとどまらず、漁業関係者や自治体、学校教育などさまざまな分野の人間を巻き込んでいくことが重要であると考えている」と語る。

学校教育に期待することについては、「海洋と人間の親和性を理解する『オーシャンリテラシー』の育成」と指摘。これは、IOCが海洋の重要性に鑑み、世界の市民に育成すべき海洋に関する資質・能力を七つの基本原則から構成し、提唱したもので、昨年、世界中の先進的な海洋教育の手法などをまとめたガイドブック「Ocean Literacy For All」を公開している。

わが国からは、東京海洋大学らが取り組む東日本大震災の復興や新たな水産人材育成を目的とした教育プロジェクトが紹介された。

学校の授業を通し、海の役割や海洋生物に触れるきっかけを作ることが重要だとした。実際に、四方が海であるわが国では、海洋教育に関する実践も少なくなく、積極的に取り組む学校もある。

例えば、横浜市立みなとみらい本町小学校は、海をテーマにESDに取り組んでいる。ごみ拾いや海草の植え付け体験などを通して、児童は日常的に海と触れる。6月には海中と教室をライブ映像でつなぐ「海中教室」を実施。子供たちは海を内側から体感し、海洋生物の生態や、海に捨てられたプラスチックごみが生物に与える影響などについて理解を深めた。

オーシャンリテラシーの育成を軸に、学校教育においても、ぜひ、「海洋科学の10年」に注目してもらいたい。

海洋教育に詳しい東京大学海洋教育センター・及川幸彦主幹研究員の話

「国連海洋科学の10年」が始まるにあたり、学校教育においても、学習指導要領がめざす『持続可能な社会の創り手の育成』の観点から海洋に関する学習プログラムの開発と実践が期待される。

海洋は、現在クローズアップされる海洋プラスチックごみなどの環境問題にとどまらず、気候変動による海水温の上昇に起因する生物多様性の減少や異常気象による苛烈(かれつ)化する災害など、生命や安全をも左右する鍵を握っている。

ユネスコIOCでは、『オーシャン・リテラシー』を提唱するとともに、SDGs目標14達成に向けて、認知的、社会情緒的、行動的という三つの観点から具体的な学習目標を設定し海洋に関する学習を推奨している。

海に囲まれたわが国こそが最新の海洋科学の知見を生かし、子供の未来のために、海を環境・生命・安全の視点から地球的視野で学ぶ海洋教育を主導する時が来ている。


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