教科横断的に海洋教育に取り組む 「親しむ・知る・守る・利用する」の4観点に整理

東京都新宿区立富久小学校

海が身近ではない地域での実践

本校は新宿駅から靖国(やすくに)通り沿いに約2キロ、近くに防衛省を望む高台に位置している。周囲は住宅地、商業地である都市部にある小規模な小学校である。

2016年度より、海洋教育パイオニアスクール(主催・日本財団、東京大学海洋アライアンス海洋教育促進研究センター、笹川平和財団海洋政策研究所)の指定を受け、「海に面していない都市部の小学校における海洋教育カリキュラムの開発」を進めている。

海洋教育を推進している学校の多くは所在地が海に近く、子供たちが海を身近に感じ、生活しているのではないだろうか。しかし、本校のように比較的内陸部に位置し、子供たちが日常的には海と関わらず生活をしている学校は全国に多々存在すると思われる。

海洋実習

例えば、本校の調査では、海の満ち引きを知らないと答えた児童も多く存在した。海洋教育の推進、普及のためには本校のような海の存在が身近でない地域においてもいかに授業を組み立てるべきか、そのための授業モデルやカリキュラムモデルはどのようなものであるべきかと考え、海の存在が身近でない地域における海洋教育モデルとなることを目標にパイオニアスクールの活動に取り組んでいる。

海洋教育の取り組みはまず、現在の教育課程における海洋に関係する学習内容の分析から始めた。実際に海洋や海洋生物が教材として取り上げられている例は多くある。

例えば、国語科では「スイミー」や「うなぎの謎を追って」などの教材において、社会科では「水産業」や「島嶼部の暮らし」などの単元において、図画工作科では絵画や造形の題材としてなどである。

また、音楽科で扱う歌唱教材には、「海」や「ソーラン節」のように海洋を題材としたものが多数ある。正月の代表的な曲である筝曲「春の海」は、美しい瀬戸内海の景勝地である鞆の浦(とものうら)の情景を表現したものといわれている。

このような海洋に関する学習内容を、「海に親しむ」「海を知る」「海を守る」「海を利用する」の4観点で整理し、教科横断的に学習を組み立てる方法を考えた。

多様な取り組みを展開
神田川実習

本校で行った授業の一部を紹介する。

『海水と淡水はどのように存在しているか』

汽水域の環境に着目した学習「塩水くさび」の現象の再現から、淡水と海水の関係を考え、海の仕組みや、自然の仕組みに関心を持ち、関連付けたり推測したりして調べる学習を行った。比重の違いが生む現象を手がかりに自然現象の共通点を発見した。

『海浜実習・河川実習・JAMSTEC(海洋研究開発機構)見学』

実際に海の環境に触れることは、海洋への関心を高めるために欠かせない。葛西臨海水族園の協力の下、葛西臨海公園西なぎさにおいて、干潟や岩場の環境における生き物と触れ合う海浜実習を実施している。

この海洋実習では、採集した干潟の生き物の一部を学校に持ち帰りミニ水族館で飼育し、継続的に観察できるようにしている。新宿区内を流れる神田川の生物生態調査を行い、海の生き物や海とのつながりを調べている。

社会科学習の発展として、JAMSTECの協力の下で日本の海の海洋資源の開発について学習を行っている。実際に横須賀本部の見学を通して、日本の海の海洋資源の豊かさを知り、持続可能な利用について考える機会とした。

『海洋プラスチック汚染』
海洋ミニ水族館

昨年度から新たに取り入れた学習として「海洋プラスチック汚染」の学習がある。

海洋に浮遊するプラスチックごみの多くは、河川から流入した物であるという調査報告もある。内陸部に生活する児童にとって、海洋と自分たちの生活圏が密接につながっていることの現れでもある。

学習は、海洋プラスチックの汚染の現状の調査から始めた。海岸の砂地を調査し、1ミリ以下のマイクロプラスチックの採集を行った。持ち帰った砂の中にどれくらいのマイクロプラスチックが存在するのかを分析した。この学習は2年計画の学習であり、学習の成果は新宿区の環境学習発表会で発表する計画である。

教育課程全体を通しての実践へ
JAMSTEC見学

海洋の四つの観点のうち、海洋を利用する学習は本校の立地の面から実施が難しい分野であるが、海に親しむ、海を知る、海を守る学習を重ねることで、海洋への関心が高まり、児童一人一人が海洋の持続可能的なよりよい利用者につながっていくことを期待している。

今後はまだ海洋教育との関連が十分ではない教科領域においてもカリキュラム開発を進め、教育課程全体を通した海洋教育の充実を図っていく所存である。


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