SPHの取り組み 熊本県立熊本工業高校

SPH研究主任 千場 博文

はじめに

本校は、1898年(明治31年)創立、2018年に120周年を迎えた歴史ある学校である。生徒数は、全日制と定時制を合わせて約1300人。19年3月には卒業生総数が4万3千人を越えた。

全日制10科10クラス・定時制3科3クラスという多くの学科を有する工業高校である。秋に行われる10科対抗体育大会は、各科それぞれの力を合わせて熾烈な争いを繰り広げるため、地域の方をはじめ多くの保護者が応援に駆け付ける。

部活動では、野球部が春・夏通算42回甲子園に出場し、吹奏楽部は全日本マーチングコンテストで11回の金賞を受賞するなど、部活動が盛んな学校である。

一方、全国工業高等学校長協会が主催するジュニアマイスター顕彰制度では、毎年180人を超える生徒が称号を受賞し、認定者上位校として表彰されている。

文科省から指定される

18年4月に、文科省から九州の工業高校で初めてとなるスーパー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)の指定を受け、現在2年目として取り組んでいる。

研究テーマは、「産学官協働により災害対応型エンジニアを育成する教育プログラムの開発」。16年4月に、熊本県東部地区で震度6強の地震が2度発生し、本校も建物・実験機器など多くの被害に遭った。16日の本震後には最大1200人の地域の方が本校に避難し、5月10日の学校再開まで自治会、職員、生徒を中心に避難所運営を行った。

この経験から、学校・地域と連携し、「災害に対応できる生徒を育成する」ことの大切さを痛感し、授業・実習等を通して防災に関する内容をテーマとして取り組んでいる。

SPHへの取り組み

土木科、建築科、インテリア科を中心に、土木科は「インフラ復旧に貢献できる人材育成」、建築科は「耐震建築の構造を理解し復興に寄与できる人材育成」、インテリア科は「居住空間のコミュニティ促進に貢献できる人材育成」に取り組んでいる。

例えば、土木科は災害現場で小型無人機ドローンを活用できる人材を育てるためにドローンの操縦技術を学んだ。建築科は災害後に建物の耐震構造を把握するために赤外線探知機を用いて鉄筋コンクリート構造の劣化現象と原因を調査診断する技術を学んだ。また、インテリア科は甚大な被害に遭った東北を訪問し、復興が進められている現地の方から話を聴き、今後熊本でやるべき事について理解した。

成果と課題
〇成果(評価:1低い~4高い)

①産学官連携による学校との協力体制の構築

②災害復興に対する生徒の興味・関心の向上(評価値3.3)

③将来の職業に対する生徒の意識向上(評価値3.0)

〇3学科の成果

◇土木科=災害に対応できるエンジニアとしての役割の理解と意識の向上。

◇建築科=防災の意識向上や耐震建築の知識・技術の向上。

◇インテリア科=災害支援や復旧・復興に対して、地域及び専門業者や公的機関等と協力して対応する能力の向上。

〇課題

①課題を整理し、解決の道筋を探る課題発見力(評価値2.7)

②自助・共助・公助を担いうる人材の育成

③他科、他校、地域等、協働の輪を広げる

今後の取り組み

①指定された3年間で終わるのではなく、継続し取り組める教育プログラムを構築する。

②生徒の変容を評価し、PDCAサイクルにより事業を効率化する。

③自助・共助・公助を担い得る資質・能力として自ら課題を発見し、解決のための問いを立て、行動を継続し得る力の養成を図る。

最後に

今、全国で発生している災害に対し、適切な対応ができる人材が求められている。このSPHの取り組みを通して、生徒達が将来、全国どこに行ってもその地域の防災リーダーとして活躍できる人材を育成していきたい。

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