高まる学校図書館の役割 主体的・対話的な学びの推進に向け

友人同士の活動で読書への関心高める

文部科学省総合教育政策局地域学習推進課図書館・学校図書館振興室長 平川 康弘氏に聞く

本年度から全面実施される新学習指導要領で目指す、「主体的・対話的で深い学び」のためには、児童生徒の「読書センター」「学習センター」「情報センター」としての学校図書館の充実がますます求められてくる。文科省総合教育政策局図書館・学校図書館振興室の平川康弘室長に、学校図書館を巡る施策と、今後の展望を聞いた。


4年目を迎える第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」
――本年度で4年目を迎える第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」の内容を教えてください。

文科省では、2017年度から第5次「学校図書館図書整備等5か年計画」をスタートさせており、17~21年度までに、学校図書館の図書整備として約1100億円(単年度約220億円)、学校図書館への新聞配備として約150億円(同30億円)、学校司書配置に約1100億円(同220億円)の地方財政措置を講じています。

それぞれの内訳は、図書配備として学校図書館図書標準の不足冊数分に約325億円、更新冊数分に約775億円を支出。新聞配備としては小中学校に約100億円、高校に約50億円を予定しています。また、学校司書は小中学校のおおむね1.5校に1人程度の配置を計画しています。

22年度からは、新たな予算措置を講じていく方針です。

――地方財政措置ということもあり、その活用については各自治体によって差がありますね。

地方財政措置は使途を特定しないため、自治体ごとに対応に差があるのは否めませんが、16年度の調査で、公立小中学校における学校司書の配置状況は、公立小学校が59.3%、中学校が57.3%でした。新聞配備では15年度末時点では、公立小学校が41.1%、中学校が37.7%、高校が91.0%以上配備されています。

学校図書館における図書標準の達成状況では、公立小学校が66.4%、公立中学校が55.3%となっています。これは、各自治体の財政事情に依拠するので100%を達成するのはなかなか難しく、古い蔵書の更新も進みづらい状況がありますが、20年度以降もそれぞれの配備・配置が進むように各自治体に促していきたいと考えています。

主体的・対話的な学びの実現のために、高まる学校司書の役割
――学校図書館における図書標準の達成率が低い自治体では、どのような対応を取られていますか。

実態調査まではできていませんが、近年は学校図書館と公共図書館の連携によって学校図書館で配備されていない図書を、地元の公共図書館が学校に貸し出している自治体の事例も報告されています。

また、指導力のある学校司書や司書教諭がいる学校では、授業に必要な教材となる図書を選定したり、学校図書館と連携した教育活動を実施したりするなど、新学習指導要領で目指す「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて大きな役割を担っています。

学校司書の配置率は、16年度は公立小学校59.3%(14年度比4.8ポイント増)、公立中学校57.3%(同4.5ポイント増)でした。年々配置率は高まっていますが、まだ十分とはいえず、専門的な知識・技能を持った学校司書のさらなる拡充を目指していきます。

――「GIGAスクール構想」の中で、学校図書館の電子書籍化も進むでしょうか。

学校図書館で、電子書籍を購入しているのは私立学校を中心に約30校程度にとどまっています。やはり、財政面がネックで、電子書籍化は進んでいないのが実情です。

発達段階ごとに変わるとは思いますが、文科省として電子書籍化を進めるべきかどうかの見解はまだ示しておらず、電子と紙の両方の特性を踏まえて検討することが必要と考えています。

いずれにしても、情報化の推進は欠かせませんので、学校司書や教員がICT活用能力を高めることなども併せて進める必要があるでしょう。

友人同士の活動を通じて、読書への関心高める
――読書活動の推進状況について教えてください。

18~22年度までの第四次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」は、「子どもの読書活動の推進に関する法律」に基づき策定されました。

1カ月に1冊も本を読まない子供の割合(不読率)を、22年までに小学生2.0%(17年5.6%)、中学生8.0%(同15.0%)、高校生26.0%(同50.4%)にまで下げることを目標としています。小中学生は改善傾向にありますが、高校生の不読率は依然として高い状況が続いています。

同計画は、「子どもの読書活動の推進に関する法律」の中で基本計画を定め、それを基に各地方公共団体が自治体の推進計画を策定するものです。

第三次から第四次へと移行する中で、児童用図書の貸出冊数は、10年の1億7956万冊から14年には1億8773万冊にまで増加しました。また、全校で一斉に読書活動をする学校の割合も小中高でそれぞれ上昇しましたが、まだまだ不十分な状況です。

その理由として▽中学生までの読書習慣の形成が不十分▽高校生になり読書の関心度合いが低下▽スマートフォンの普及などによる子供の読書環境への影響の可能性――があるのではないかと分析しています。

特に、高校生が小中学生と比較して不読率が高い背景には、部活動や塾などで多忙なために読書の機会が失われていることも考えられます。

第四次計画では、そうした実態分析を基に、①読書習慣の形成に向けて、発達段階ごとの効果的な取り組み②友人同士で本を薦め合うなど、読書への関心を高める取り組み③情報環境の変化が子供の読書環境に与える影響についての実態把握・分析――をポイントにしました。

――具体的な取り組み事例を教えてください。

読書習慣の形成では、家庭での読み聞かせの推奨や、赤ちゃんに絵本を手渡す活動「ブックスタート」や家族みんなで本を読む「うちどく(家読)」などに取り組む自治体もあります。

国立青少年教育振興機構が、子供の読書活動に助成する「子どもゆめ基金」に取り組んでいますので、このような事業もうまく活用していただければと思います。

中学校や高校では、図書委員やブックトークのほかに、書評合戦「ビブリオバトル」などに取り組む学校が増えています。友人同士で本を紹介し合う中でプレゼンテーション能力の向上が図れることも注目されているようです。近年は、新聞社主催の全国大会も開催され、全国レベルで普及活動も進んでいますので実態調査も検討しています。

新学習指導要領でも、国語や特別活動などで児童生徒の主体的で意欲的な読書の推進が明示されています。そのためにも、学校図書館のしっかりした利活用が重要となります。予算についても、第5次5か年計画において財政措置が盛り込まれていますから、積極的に活用してほしいと思います。


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