新指導要領の円滑な実施と読解力向上 大きな役割を果たす学校図書館

小学校では新学習指導要領の実施が始まった。次年度以降、中学校、高等学校と順次実施されていく。今後は、「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」の視点から、「学び」の本質として重要となる「主体的・対話的で深い学び」の実現が重要となる。また、PISAの学力調査結果にもみられるような、子供たちの読解力の低下に向き合っていくのも課題である。

そのような中、学校図書館は、子供にとっては「学び方を学ぶ」場所として、教師にとっては「教え方を学ぶ」体験の場所として大きな期待が寄せられている。今回は、「『主体的・対話的で深い学び』を円滑に行うための学校図書館の役割」と「読解力の向上と学校図書館の役割」について、学校図書館の関係者から意見を寄せてもらった。


学校図書館の整備・活用を図る

文部科学省総合教育政策局地域学習推進課長 水田 功
読解力の向上と読書活動

2020年度より小学校から順次新学習指導要領が全面実施されます。小学校、中学校、高等学校とそれぞれの新学習指導要領において、学校図書館に関する新たな役割が明記されており、総則では、「学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り、児童(生徒)の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に生かす」こととされています。

「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、各教科等を横断的に捉え、計画的かつ体系的に指導を進めるカリキュラム・マネジメントが必要とされている中で、学校図書館の持つ役割は大きいと考えています。

また、読解力と読書活動の関係については、19年12月3日に公表された、「PISA(生徒の学習到達度調査)2018」の調査報告において、日本の生徒は「読書は、大好きな趣味の一つだ」と答える生徒の割合がOECD平均より高いなど、読書を肯定的にとらえる傾向があるとも分析されており、こうした生徒ほど読解力の得点が高い傾向にあるとの結果となっています。この結果を踏まえ、学校図書館の整備・活用などの言語環境の整備を図ることが重要であると考えています。

「学校図書館図書整備等5か年計画」を推進

文科省では、17年度を初年度とする「学校図書館図書整備等5か年計画」(2017~21年度)を策定し、図書整備などに係る経費として、5年間で毎年度約220億円、総額約1100億円の地方財政措置を講ずることとしており、学校図書館への新聞配備に要する費用も、毎年度約30億円(5か年総額約150億円)を措置することとしています。

学校司書の配置についても、今回新たに5か年計画に位置付け、17年度から毎年度約220億円(5か年総額約1100億円)を措置することとなっています。

市町村は地方財政措置を生かして

「主体的・対話的で深い学び」や「読解力の向上」ともに推進していく上で、学校図書館の役割は非常に大きいと考えられることから、市町村においてはこの地方財政措置を生かして学校図書館図書標準の達成率(小学校66.4%、中学校55.3%/2016年学校図書館の現状に関する調査)と学校司書の配置率(小学校59.2%、中学校58.2%、高校66.6%/同調査)を100%に近づける努力を続けていく必要があると考えています。


自分の力で学べる児童を

埼玉県川越市立南古谷小学校司書教諭 中島 晶子
自然に読書の質を向上させる工夫を

読書を通して児童は言語感覚を身に付けていきます。言葉の意味だけを理解するのではなく、情景や心情を想像しながら言葉を学べる読書は、読解力を向上させるためにも有効です。

しかし、学校図書館に訪れる児童にとって読書は楽しみであり強制されるものではありません。そこで、いかに自然に読書の質を向上させ、さまざまな分野の図書に触れさせるかという工夫や仕組みが必要になってくるのです。

例えば、低学年の絵本から読み物へのステップアップの手助けとして低学年向けの読み物を難易度に合わせて分類して読ませたり、学年に合わせて選定した図書や教科書に紹介されている図書を集めて配架したりすることも読書の幅を広げ、読む力を向上させる一助になります。意図的な読書指導の必要性を教師に提案していくのも学校図書館の役割です。

一人一人の読解力や興味関心を把握し、少しずつ読む力を上げることが読書嫌いをつくらずに読む力を付けさせるポイントとなるのではないでしょうか。学校司書や教員が子供の本について知り、一人一人の児童に合わせた読書指導ができれば読書の質は向上するでしょう。児童だけでなく教員にも情報を発信する学校図書館でありたいと考えます。

ICT活用も積極的に

学習への興味や関心を支えるためには、学校図書館の資料が学校のカリキュラムに合っていて児童の発達段階にふさわしいものであることが要求されます。各教科や総合的な学習の時間などで必要とされる資料をそろえて、児童に情報を得るためのスキルを体系的に学ばせることが主体的な学びにつながると考えます。

そのためには、児童の発達段階に合わせた学び方スキルの学習計画づくりや司書教諭による授業実践、教員への情報提供などを行い、自分の力で学べる児童を育てていくことが必要です。自分が得た情報について複数の資料で確認したり、友達と話し合ったりする学習を学校図書館で展開することによって、学習の幅が広がるでしょう。

また、学校図書館もICT活用に積極的に関わっていきたいものです。図書から得られる情報とインターネットを通じて得られる情報の特性を教え、どちらも活用できるようにすることがこれからの児童には大切です。日々更新される新しい情報を得られるインターネットは便利でありますが、信用できる情報を見分ける必要性や良識ある使い方などの指導を学校図書館も情報教育と連携して担っていく必要があります。


創造する力と想像力を育む

日本児童図書出版協会会長 竹下 晴信
読書、学習、情報の三つのセンターとして

「学校図書館法」が1953年にでき、「学校図書館が、学校教育において欠くことのできない基礎的な設備である」と規定されました。

1947年に「教育基本法」と「学校教育法」が制定され、戦後日本の教育は始まりますが、われわれが抱えるさまざまな問題を知識として覚えるのにとどまらず、問題として意識し主体的に関わることによって問題をどう解決していくか、がその教育目標になりました。学校図書館は、その後押しをするものであったといえましょう。

しかし、学校教育において、学校図書館が有効に活用されたとは言い難い歴史が長く続きました。その蔵書構成をみても大半は物語など文学系図書が占め、学習に使われる本は少なく、辛うじて読書センターとして機能してきました。そして、いま、文科省は学校図書館を読書に加え、学習と情報の三つのセンターと位置付け、再び光を当て始めています。ありがたいことです。

私たちは、読書は読解力を高め、判断力と推論する力を深め、創造する力と想像力を育む上で最も基本的な手段であると考えています。しかし、読書することは難しくもあります。さまざまなメディアが流す情報を私たちは受動的に享受するのに対し、読書は能動的に本と向き合わなくては成り立たないからです。

学校での読書を大系的かつ持続可能に

読書という行為は、本と親しむものではありますが、個人的には楽しみにとどまらず社会の要請によって勉学・研究のため、または時には闘いのために行われるものだと思います。「子どもの読書活動の推進に関する法律」も「文字・活字文化振興法」も、まさにその裏付けです。この2法を根拠に学習指導要領も改訂され、全ての教科における言語力の充実が図られるのに至ったのです。

これからは、学校での読書を大系的かつ持続可能にすることが求められているものと思います。教師を目指す教職課程においても、読書論と自然・社会・人間についてどう学ぶか、その学び方を学ぶ講座を必修科目として読書と図書館利用の指導のできる人材の育成をお願いしたいのです。

日本児童図書出版協会は、会員のみならず非会員の本を含め3万8000余点を解説付「Web版児童図書総目録」として発信しています。その大半は文学系図書でありますが、学校図書館が授業に活用されることにより、多様な本が必要とされるようになります。私たち出版社には、文学以外に多様な本とのバランスのとれた出版が求められているのです。


能動的な読書で深い学びを

(公社)全国学校図書館協議会理事長 設楽 敬一
教科横断的な授業で学校図書館の活用を

新学習指導要領では、「カリキュラム・マネジメント」による学校経営が強く求められています。その中に「教科等横断的な視点で組み立てていく」の記載があります。これまでは、各教科の「目標」の表記が異なることから教科横断的な学習を計画することが難しい状況がありました。

今回の改訂では、各教科の目標が冒頭文+箇条書きで「知識および技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」の順に表記されました。しかも、全ての校種で同一の構造なので、校種、児童生徒や各校の状況に応じて教科横断的な学習を進めるための視点の共有が容易になります。教科横断的な授業では、教科書に加えて学校図書館の多様な資料の活用が欠かせないことから、「主体的・対話的で深い学び」に立った授業改善が期待できます。

「主体的な学び」「対話的な学び」「深い学び」は、それぞれの視点から授業を捉えることが大切です。1時間の授業で3つの視点を実現するのではなく、単元全体を通して、児童生徒の学習状況を的確に把握しつつ、三つの視点についてバランスよく対応するのです。こうした授業改善には学校図書館の資料の活用が欠かせません。

読解力の向上と学校図書館の役割

2019年12月に「PISA読解力15位続落」が報道されました。読解力をもとにした多様な見方や考え方を育むことが喫緊の課題です。

学校図書館では、読解力を育むために読み聞かせやブックトークなどを通して、本の楽しさや面白さを十分味わわせて語彙(ごい)力を育んでいます。読書から日常の生活では触れる機会のない言葉や言い回しなどを読み解くことで、言葉の数が増えて想像力も養われます。

このように語彙力の育成により、自分の考えや思いを的確に表現できるようになります。また、相手の気持ちを正確に理解できるようになり、コミュニケーション能力の向上にも役立ちます。

次の段階は、自立した読み手に育つことです。本の内容をうのみにするのではなく、本に問い掛け本と会話しながら読み解き、本から答えを探す能動的な読書の積み重ねで、本から得た情報が自らの考えを深めたり知識として活用したりできるようになります。新学習指導要領にある主体的・対話的で深い学びの実現には、こうした能動的な読書が有効な手だての一つです。

学校図書館には、本と積極的に会話する能動的な読書による読解力を背景とした深い学びが期待されます。


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