小学校のプログラミング教育 必修化に伴う現状の課題と展望

宮城教育大学技術教育講座教授 安藤 明伸

今年度から全面実施の小学校新学習指導要領は、誰もが予想もしていなかった状況でのスタートとなった。多くの教育関係者が「学びを止めない」という責任感と努力によって可能な限りの対応をしている。双方向、オンデマンドなどの遠隔での教育の提供をゼロから進めている学校も多い。

非常にシビアな状況だが、これらの取り組みは、ポストコロナの時代における教育活動にとって重要な視点がある。プログラミング教育はまさにその1つだ。

遠隔で何を伝え・教えられるのか。これはICTという機器利用の促進ではなく、「コンピュータ」を活用し、「デジタル」の特長を生かすことに他ならない。教育の情報化に関する手引(p.15)には、デジタル化された情報の特長として以下のように整理されている。

  1. 多様で大量の情報を収集、整理・分析、まとめ、表現することなどができ、カスタマイズが容易であること
  2. 時間や空間を問わずに、音声・画像・データなどを蓄積・送受信でき、時間的・空間的制約を超えること
  3. 距離に関わりなく相互に情報の発信・受信のやりとりができるという、双方向性を有すること
    ●瞬時の共有、遠隔授業、メール送受信など

そして、これらの特長を機能させているのが「プログラム」だ。コンピュータの働きは、人間がコンピュータにさせたいことを「デジタル」に思考し記述した「プログラム」によって実現されている。

このプログラムを考えるという知的で創造的な行為としての思考(狭義のプログラミング的思考)は曖昧さを一切排除した表現であり、結果に対して必ず因果関係を持つ。故にプログラミングは論理的思考として捉えられる。

図1 曖昧さのある処理(左)と数量的に処理したプログラム(右)例

このことが理解できてくると、例えばプログラム内の「ゆさぶられた時」という曖昧な表現に違和感が出てくる。「ゆさぶる」とはどんな状態なのか、数量でどう表されるのか、などの疑問を持てるようになる。これはコンピュータを理解し、デジタルを意識する上でも貴重な疑問である(図1)。

こうした疑問は、中学校技術への接続やコンピュータサイエンスとして情報を科学的に理解するための原体験となる。アナログを扱う思考とデジタルを扱う思考の両方が必要なのだ。

さて、プログラミング教育は、学習指導要領において「学習の基盤となる資質・能力」とされる「情報活用能力」の育成等を進める中に適切に位置付けられなければならない。特に、児童には、以下の点に気付かせるような教師の働き掛けが大切だ。

  • コンピュータはプログラムで動いていること
  • プログラムは人が作成していること
  • コンピュータには得意なこと、できないことがあること
  • コンピュータが日常生活のさまざまな場面で使われ、生活を便利にしていること
  • コンピュータに意図した処理を行わせるためには必要な手順があること

こうした理解があってこそ、プログラミングは単なる体験ではなくコンピュータのことを理解する第一歩となる。プログラミングのやり方であれば、チュートリアルや放送番組・オンラインのコンテンツで学習も可能だ。

学習指導要領総則でプログラミング教育は、「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」の文脈に書かれている。「プログラミングのやり方をどう教えるか」という段階から、「プログラミングでどう教えるか」という議論に早く移ろう。プログラミングを手段として位置付けた活動からは「プログラミングすることで役に立つものが作れる」という感覚が得られる。

これは、アプリを探す・情報を消費する視点から、さまざまな課題に対してどんなアプリを作れば解決できそうかという創造的・成長的な思考態度へと変容させるために欠かせない。

新型コロナに対する新しい生活様式は、プログラミング教育の必要性を加速させた。もう猶予は無い。校内での指導体制、授業研究も加速させていこう。


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