学校給食における衛生管理

食中毒ゼロを目指して 6つのポイントに留意を

公益社団法人日本食品衛生協会
食品衛生研究所 微生物試験部 部長 甲斐 明美

新型コロナウイルス感染症の流行のために3月から始まった臨時休校が5月中旬まで続き、今やっと学校が再開され、給食も始まりつつある。子供たちにとって重要な給食を安全に提供することは、学校給食に関係する全ての人々の責務である。

ここ数年の学校給食における食中毒発生件数は年間数件程度に減少しているが、いまだゼロではない。「学校給食における食中毒ゼロ」を目指さなければならない。

最近8年間(2011~18年)に発生した学校給食における食中毒の病因物質は、ノロウイルス21件、ヒスタミン4件、サポウイルス1件、黄色ブドウ球菌1件であった。

ノロウイルスやヒスタミンによる食中毒防止が最も重要なことはもちろんであるが、2010年以前に多く発生していたサルモネラ、カンピロバクターやO157などによる食中毒予防についても注意を怠ることがあってはならない。

サルモネラ食中毒の原因の一つである鶏卵のサルモネラ汚染率は、3000個に1個から3万個に1個に低下したことが報告されている。しかし、その汚染率が低下したといえども、汚染した鶏卵に出会うリスクはある。肉類のサルモネラやカンピロバクターの汚染率が低下したわけではない。さらに近年、野菜類のO157汚染も危惧されている。

すなわち、流通食材には病原微生物汚染の可能性があるという認識を持って業務に当たらなければならない。また、従事者も病原微生物を保有している可能性も否定できない。

数カ月の停止を経て再開された学校給食について、改めてその衛生管理の留意点を確認するとともに、なぜそれが重要なのかを認識することも不可欠である。

(1)手洗いは、衛生管理の基本である。肘まで十分に洗える設備の充実と、正しい洗い方を身に付けることが重要である。手洗い後にペーパータオルで水分を拭き取ることや、アルコール製剤を刷り込むことは、手に残っていた微生物をさらに減少させる効果が期待できる。ただし、濡れた手にアルコールをかけても効果はない。

(2)検収室では、納入業者を下処理室などに立ち入らせることなく、食材の検収(数量、製造業者、鮮度、品温、包装の破損等の確認)を行う。さらに、納入食材からの二次汚染防止のために、洗浄・調理用の容器に入れ替える作業も行われる。特に、生肉などは2人で使い捨て手袋を使って入れ替え、食材間の相互汚染防止に留意する。生肉に直接触れた手袋を無造作に置くことは避けなければならない。そして室温放置せず、速やかに冷蔵庫や冷凍庫で保管することも忘れてはならない。

(3)汚染区域と非汚染区域の明確化は、交差汚染の防止のために不可欠である。食材に付着した外部からの汚れを非汚染作業区域に持ち込まないこと、従事者や台車を介して汚染を広げないことが重要である。

(4)作業動線を一方向にすることは、食品の交差汚染を防止するために非常に重要である。病原微生物汚染の高い食品(食肉、魚介類、卵)と、加熱済みあるいは非加熱調理食品の交差を回避し、作業の合理化も図れる。

(5)ドライ使用およびドライ運用により、床面での微生物の増殖を防ぐことができる。また、食品や調理器具は、床面から60センチメートル以上の高さの場所に置くようにされているのは、床面からの跳ね返り防止のためである。ドライシステムの調理場においてもドライ運用が出来ていなければその意味を果たさない。従事者の工夫も要求される。

(6)過去に発生したサルモネラやカンピロバクター食中毒の原因として指摘されたことは、①加熱不十分②器具の洗浄不足――により生残した病原菌が増殖し、次にその調理器具を使って和え物などの非加熱食品を調理した時に二次汚染させたこと、などであった。器具の十分な洗浄を怠ってはならない。また、消毒用アルコールは多くの場面で使用されるが、消毒効果を発揮するのは、乾燥した面に噴霧した時である。濡れている場所にかけても効果のない点を認識してほしい。

最後に最も多く発生している食中毒に対する課題として、以下の点を挙げたい。

ノロウイルス食中毒の原因の多くは、ノロウイルス保有調理従事者である。調理従事者は手洗いの徹底の他、ノロウイルスに感染しないように十分注意し、少しでも具合の悪い時には休業する必要がある。さらに、職場内でのコミュニケーションも大切である。

一方、納入後加熱することなく提供されるパン、和洋菓子、きざみ海苔などのトッピング食材が原因となった事例も少なくない。食品納入業者の選定と継続的な確認などを十分に行う必要がある。

ヒスタミン食中毒対策には、十分な検収(特に鮮度、品質、品温)が不可欠である。食品納入業者の選定と継続的な確認などのために、物資選定委員会を設置し活動することも推奨される。

学校給食の再開にあたり、「学校給食における食中毒ゼロ」を希求する思いは皆同じである。


【トップに戻る】