【意見・体験発表】岡山県立倉敷中央高等学校

折鶴のお守り

福祉科3年 安井 陽香

介護実習中「Aさんはうつ病だから」と職員さんから言われた。居室にいるAさんは踏み込んではならない近づきがたい雰囲気に包まれていて、距離を取ろうとしている自分がいた。

その日の午後、Aさんとお話をする機会があった。最初は笑顔もあったが徐々に表情が暗くなり、涙を浮かべて「死にたい」「つらい」と呟(つぶや)くようになった。

「なぜこんなつらい気持ちになるのだろう」と私も心が苦しくなった。私は何もできない悔しさに押しつぶされそうだった。私にできることはないのか?考えた結果、傾聴と声掛けに努める決心をした。

次の日から、合間を縫ってAさんに会いに行くようになった。最初はぶっきらぼうに「またあんたか」と言われていたが、「あんたが来るのを楽しみにしとる」と言われた時はうれしかった。

そんなある日、「あんたの名前を書いて」と手帳を渡された。名前を書くと「ありがとう。お守りにするよ」と言われた。実習が終わる前日には「お礼がしたかった」と折り鶴を下さった。その日の夜、私も鶴を折り、心を込めて手紙を書いた。それを、ずっと隣で塗っていた塗り絵と一緒に渡した。Aさんは「幸せだった」と涙を流された。

うつ病の方は独りで居たいわけではないのだ。「死にたい」の中には心の叫びがある。私はその叫びに気付き、寄り添うことができたので、Aさんに幸せを感じていただけたのではないだろうか。

最初は涙を流されるAさんを私が笑顔で元気付けていたが、最後は涙が止まらない私をAさんが笑顔で送ってくださった。病気や症状だけでその人を決め付けてはいけない。勇気をもって一歩を踏み出すことが心の扉を開ける鍵となる。改めて介護福祉士の仕事の奥深さと責任を感じた。

介護の技術と共に、相手の思いに気付ける洞察力や寄り添い続ける真心を持った介護福祉士になりたいと思った。Aさんからの折り鶴をお守りとして心の支えにし、理想とする介護を目指して歩んでいきたい。

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