1人1台時代の幕開けへ 今井裕一文部科学省初等中等教育局情報教育・外国語教育課長に聞く

「端末の整備、今年度末までに」

新型コロナウイルスの感染拡大による一斉休校を受け、GIGAスクール構想は一気に加速した。当初「2023年度まで」とされていた小中学校への1人1台端末整備の予定は大幅に前倒しされ、今年度中には多くの自治体で端末が学校現場に届く見通しとなった。来年度にはいよいよ、1人1台の時代が幕を開ける。個別最適な学びにつながる新たな扉を開く一方、学校現場からは効果的な活用や情報管理について戸惑いの声も上がる。

学校現場の期待と不安に、文科省で学校のICT環境整備を担う、初等中等教育局情報教育・外国語教育課の今井裕一課長は「文科省も急ピッチで現場を支えていく」と力を込める。


今年度内の1日も早い1人1台端末の整備へ

2019年から4年間をかけて整備されていくはずだったGIGAスクール構想。コロナ禍の一斉休校で子供たちの学びの保障が叫ばれる中、大幅な前倒しが決まった。小学5・6年生と中学1年生に1人1台端末を優先的に整備する経費として19年度補正予算で計上していた2318億円に加え、今年5月には20年度補正予算案で2292億円、合計4610億円を計上し、20年度中に全ての小中学校で1人1台端末の実現を目指すこととなった。

それでは、実際に教育現場に端末が届き、授業に使えるようになるのはいつになるのか。「公立の義務教育段階の学校の設置者を対象とした調査結果(8月末時点)によれば、多くの自治体では議会承認、事業者の選定などを経て、年明けから年度内には納品が完了する」と、今井課長は説明する。

GIGAスクール端末の調達状況

多くの自治体では今年度末までに端末が届き、来年4月の新年度にはGIGAスクール構想で整備された端末を活用した学習活動が実施されるというスケジュールになりそうだ。「もっと早くできないのかという声もあるのは承知している。議会承認・調達など行政レベルでの対応の後、事業者と連携して進める形になる。早く届けばその分、授業の準備も早く進められるので、一日でも早く納品できるよう取り組んでいきたい」と今井課長は意気込む。

文科省は9月11日、ICTを効果的に活用した授業改善の事例を各教科別にまとめた、学校現場向けの参考資料をウェブ上に公開した。

例えば国語では、タブレット型端末などを使って、班員同士で提案の練習の様子を撮影し合い、その動画を実際に見ながら互いの提案の中での実物の提示や実演の仕方の良さや課題などを伝え合う。理科では、流れる水の働きを調べるモデル実験を行う際、タブレット型端末などで、土地の変化の様子を録画し、後で再生しながら事実を確認するといった活用例を具体的に示した。

今井課長は「現場の先生にはこうした事例も見てもらいつつ、手元に端末が届いたらどう活用するか、準備を進めてほしい」と話す。

学校現場をサポートする人的支援も

1人1台端末が整備されると、学びの在り方が劇的に変わる。その一つが、2024年をめどに本格導入が検討されている学習者用デジタル教科書だ。書き込み機能や拡大表示のほか、振り仮名表示、音声読み上げなどの機能があり、従来の教材では学びが困難だった子供たちにとっても学びの幅が広がることが期待されている。

来年度の概算要求では、1人1台端末の環境が整った小中学校を対象に、学習者用デジタル教科書・教材を提供し、普及促進を図る実証事業を行うことを目指している。約7割の小中学校の参加を想定しており、来年度には学習者用デジタル教科書を使った授業を体験できる教員も増えそうだ。

ただ、端末というハードが整備される中、ICTに不慣れな学校や教員の中には不安を感じる者も少なくないようだ。文科省の調査によれば、今年3月時点での教育用コンピューター1台当たりの児童生徒数は平均4.9人。今井課長は「これが1人1台になることを踏まえると、学校の支援を行う人の手当ても、来年度に向けて引き続き必要になってくる」と話す。

文科省では、学校現場でのICT活用などに詳しい有識者を「ICT活用教育アドバイザー」に選定し、各教委への助言・支援や、指導事例やオンライン教員研修プログラムの作成を行うことを予定している。

また学校現場により近いところでは、小・中・高の学校設置者が主体となり、環境整備の設計やオンライン学習のシステムサポートを行うGIGAスクールサポーターや、普段の授業の支援を担うICT支援員の配置を進める。ICT関係企業のOBといった、環境整備の知見のある地域の人材を募り、その人件費などを国が補助する。

GIGAスクール構想における1人1台端末では、クラウドサービス上の学習ツールの利用が前提とされていることから、個人情報保護の問題を気にする現場も多い。

端末が届くまで「活用の準備を進めてほしい」と話す今井裕一情報教育・外国語教育課長

文科省は19年12月、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」を改訂し、クラウドサービスの利用に際して気を付けるべきポイントをまとめている。「個人情報保護を前提にしつつ、ICTの活用を進めていく必要がある。こうしたガイドラインに沿って、積極的に取り組んでほしい」と今井課長は話す。

高校の1人1台環境や更新が今後の課題に

今後の課題として考えられるのが、義務教育ではない高校での1人1台端末の整備だ。これまでGIGAスクール構想における端末整備は、小中学校を主眼に行われてきた。ただ、中学校の1人1台端末で学んだ生徒が高校に進学するのは時間の問題で、学びの連続性を保障するためにも、高校での環境整備が合わせて必要だと指摘する向きもある。

今井課長は「高校についても今後、さらに環境整備を進める必要がある。高校生になれば家庭や個人で端末を持っていることも多く、それを学習に活用するBYOD(Bring Your Own Device)も視野に入れている自治体もあると聞いている」と話す。

今回の概算要求では、GIGAスクールサポーターの配置や高速通信インフラ「SINET」の整備などについては高校も対象としている。

さらに1人1台の端末が行き渡った後の課題は、数年後に訪れる端末の更新だ。今井課長は「どのように安定してICT環境を維持していくかは、関係省庁や自治体の声を聞きながら、汗をかかなければならない問題だ」と認識を示し、「数年後の更新の時期に向けて、国としてどのように取り組んでいくのか、しっかりと検討していきたい」とした。


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