教育の情報化に対応した教員養成の留意点 PC1人1台環境を迎えて

東京学芸大学ICTセンター 教育情報化研究チーム 准教授 加藤 直樹

この原稿を書いているのは2020年10月上旬である。この数日だけでも「オンライン教育の恒久化」「教科書は原則デジタル」など教育の情報化に関するニュースが数々流れている。COVID-19への対応対策がきっかけとなって、社会の情報化、そしてなかなか進まなかった教育の情報化が急速に動き始めた。

児童生徒が使うPCについて、1年と少し前の時点では3クラスに1クラス程度という数が示されていた。ところが、昨年末にGIGAスクールネットワーク構想として全ての児童生徒が1人1台のPCを持つ環境を数年かけて整備することとなり、さらに上記したCOVID-19への対応に絡んで今年度中に整備を終えることに繰り上がった。

1人1台PC時代の学びの風景

現状の児童生徒用PCは、平均で6クラスに1クラス程度、1人1台の環境をすでに有しているところもある。一方で、40台以下しかない学校もあり、来年の春に1人1台となることは児童生徒にとっても教員にとっても大きな変化である。筆記用具やノートのように常に児童生徒の手元にPCがあることになり、これまでの「これからPCを使うので準備をしましょう」というスタイルとは全く異なるものとなる。

それにも関わらず、夏前くらいまではGIGAスクールネットワーク構想を知らない教員も多かったようだ。しかし、よくよく足下を見てみると、教員養成課程にいる学生はそれ以上にこのことを知らないという現実もある。

1980年代頃から活発となった教育の情報化推進の流れの中で、特に2000年代以降、教員のICT活用と児童生徒の情報活用能力の育成(情報教育)を行う力が重要項目として挙げられてきたが、教員養成での対応は十分ではなかった。実物投影機や電子黒板、指導者用デジタル教科書など、上手に活用することで教育効果の向上を可能にする機材・教材が次々に出てきたが、どこの学校にもあるものではないという認識がその背景にあるのであろう。

しかし、PC1人1台環境は全ての小中学校で整備される。また、デジタル教科書が紙の教科書に代わって標準的な教科書となることも議論されている。加えて児童の情報活用能力は新しい学習指導要領において学習の基盤となる力として位置付けられており、また情報教育の一部としてプログラミング教育も必修となった。ICT活用と情報教育を行う力を教員養成段階で育むことが必須である点には同意いただけると思う。

教員養成課程での学びを定める教育職員免許法と同法施行規則は、学習指導要領改訂に合わせ改正され、教育の方法および技術でICT活用法と情報教育指導法を、各教科の指導法で教科の特性に応じたICT活用法の学びを、そして、情報機器の操作の学びを規定している。

これら学びをきちんと実施することは当然ではあるが、現状を考えると喫緊に達成しなければならないことである。ここで、学びの内容が具体的すぎると技術革新によって陳腐化してしまいかねない。情報科学・教育工学に基づいた理論的な面からの学びも行い、知識・技能を更新すれば自ら応用できるようにすることも重要である。この点については教員養成課程に限らない高等教育としての情報教育をしっかりと行うこととつながる。

また、教育現場の体験を通して学んだ知識・技能の体系化や自らの研究課題の発見のための重要な学びの機会である教育実習において、ICT活用を体験・実践することも重要である。これらを実施するためにも、教育の情報化を専門とする教員スタッフをそろえること、教育実習の場となる附属や地域の学校との連携を強めることは教員養成課程を抱える大学の課題である。

PC1人1台環境は、単純に児童生徒が常にICTを活用できるようになるだけにとどまらず、授業のスタイル自体に変化をもたらす。家庭への持ち帰りや家庭で用意したPCの学校への持ち込みへと展開していくことで、学校教育の在り方も変化する可能性がある。

教育の情報化への対応だけではなく、このような大きな変化にも対応していける資質をもった教員を育てていくこともこれからの教員養成の課題であろう。


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