学校現場へのICT環境整備と活用サポートの留意点~自治体の立場から~

文科省ICT活用教育アドバイザー
辻 慎一郎(鹿児島市教育委員会学務課長)
木田 博(鹿児島県総合教育センター情報教育研修課情報教育研修係長)

1 はじめに

筆者(辻)が教員に採用された1986年は、鹿児島県教育委員会が発表したコンピュータ導入計画「コアラ計画」により、初めて学校にパソコンが導入された年である。あれから30数年。今回の「GIGAスクール構想」はまさしく夢のような出来事である。

「GIGAスクール構想」は「令和の教育のスタンダード」とされ、Society5.0時代を生きる子供たちの資質・能力の育成のために、1人1台端末などを整備することで、これまでの「教師が教える学校」から「児童生徒が学び取る学校」に大きく変わる契機になることが期待されている。

そのためには、教育委員会を含む全ての関係者がこれまでの考え方や先入観にとらわれることなくGIGAスクール構想の推進に取り組む必要がある。

2 「GIGAスクール構想」は「学びのDX(デジタルトランスフォーメーション)」

「GIGAスクール構想」は、単なる大規模な端末とネットワークの整備ではない。「学びのDX」であると捉え、それを基底とした環境整備や活用に向けた取り組みこそが「GIGAスクール構想」における成否の分水嶺(れい)となる。

3 1人1台端末整備と1人1アカウント

「GIGAスクール構想」が目指す個別最適化された学びの実現のためには、教師が、児童生徒の学習状況や学習ログをつぶさに把握でき指導に生かすとともに、児童生徒自身がそれを活用できなくてはならない。そのためには一人一人にアカウントが必要となる。また、それを小・中・高校などにわたって継続して使用できるような仕組みが重要であり、計画段階からそれを想定したシステムの設計や構築が必要となる。

4 「学び」のシームレス化

今後、学習のオンライン化や端末の持ち帰りなどが促進されることとなる。それに伴い、前述の1人1アカウントにより、学校での「学び」は、家庭や校外での「学び」とシームレスにつながることになる。これまで学校と家庭などで分けられていた「学び」は連続性を持つことで、その双方において個々の学習状況の可視化がこれまで以上に可能になる。このことから「学び」の在り方を、より巨視的視点で俯瞰して考えていくことが重要である。

5 学習者視点での教員研修の実施

端末の使用主体は児童生徒であることから、教員による活用研修と並行して、児童生徒の主体的な活用を促す研修が重要である。そこで、児童生徒が日常的にどのように活用できるかを具体的に示すために、本県総合教育センターでは、それを「しら(調べる)・とる(撮る)・つく(創る・作る)・とる(記録する)」として示している(※詳細は、下記ウェブページに掲載)。

また、県域でのオンライン研修や、情報発信や情報交換のためのウェブページの開設を含めた「鹿児島県GIGAスクールオンラインコミュニティ」を設置し、その推進に努めている。

※鹿児島県総合教育センター=http://www.edu.pref.kagoshima.jp/GIGAschool/top.html

6 求められる「オール○○(自治体など)」での取り組み

「GIGAスクール構想」は教育委員会の担当部署だけで実現できるものではない。計画・整備・活用・成果検証に至るまで、教育委員会、学校、児童生徒、保護者、地域などがその理念を共有し、「オール〇〇(自治体など)」で取り組んでこそ、令和のスタンダードとして結実するものだと考える。

そのためには、学校においては、ICT活用にあまり積極的でない教員にも配慮した校内研修の充実を図ったり、地域・保護者へGIGAスクール構想の概要や目的を周知したりすることが必要であろう。

また、教育委員会においては、縦割りを超えた推進チームを編成したり、灯台下暗しとならないように全職員に対する研修を実施したりすることも大切であろう。

本市教育委員会では、早速、推進チームを結成し、150人を超える学校籍・市役所籍の職員全員に対して「30分一本勝負!GIGAスクールって何?」というテーマで悉皆研修を実施した。さらに各課協力のもと10月の校長研修会で「学校グランドデザイン」にGIGAスクールを位置付ける研修を行った。

7 終わりに

学校と教育委員会は同じ目標を目指す、いわばパートナーであり、これまで以上に協働することが大切である。令和の時代に変革を求められているのは学校だけでなく教育委員会も同じであろう。GIGAスクール構想が授業を変える、学校を変える。いよいよ楽しみである。


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