変革進む教育現場の教材整備は 出塩教育財政室長に聞く

2020年度に小学校で全面実施となった新学習指導要領に合わせて、今年度から10カ年の新教材整備計画が動き出している。さらにコロナ禍でGIGAスクール構想による1人1台端末も前倒しで実現することになり、教育現場は大きな変革期に直面している。こうした中で現場のニーズに即した教材整備は欠かせない。デジタル化の波に「働き方改革」も叫ばれる中、教材整備には何が求められるのか。文科省初等中等教育局財務課の出塩進教育財政室長に聞いた。


――新学習指導要領の実施に合わせて「教材整備指針」が改訂され、新しい教材整備計画が動き出している。改めて改訂のポイントは。
新教材整備計画などについて語る出塩進教育財政室長

大きく分けてポイントは3つ挙げられる。1つ目はまさに新学習指導要領に対応した教材の見直し。今年度は小学校、来年度は中学校で全面実施となるのに合わせ、新たなカリキュラムで必要な教材の整備が求められる。「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」などを掲げる新学習指導要領に沿う形で、教材整備指針では学校に備える教材の例示品目として、統計的な手法でデータを処理するコンピューターソフトや、創作も可能な音楽関係ソフトウエアなどが新たに加わった。

2つ目のポイントは技術革新。教材に限らず技術の進歩は目覚ましく、例えば中学校の技術で3Dプリンター、特別支援学校で視線入力装置や音声入力装置などが新たに加わった。改訂した教材整備指針で示した教材は約1200品目に上るが、このうち170以上が新たな品目となった。さらに教員の負担軽減に向けた「働き方改革」に対応した機器が対象となったことも、大きなポイントといえる。

――新教材整備計画の初年度が間もなく終わる。教材整備を巡る最新の動きは。
出展:文科省

小学校で新学習指導要領がスタートしたばかりで、整備状況など実態の把握はこれからだが、新教材整備計画の予算は、安定的・計画的な教材整備につなげてもらうため単年度約800億円が、10年間措置される見込み。この予算は地方財政措置、いわゆる地方交付税措置で地方に配分されるので、補助金のような特定財源と異なり、何に使うかは自治体の判断で柔軟に対応することができる。

自治体の教材整備の予算措置には予算の権限を持つ首長の理解が不可欠であるため、総合教育会議の場などで、教材の整備計画などについてしっかりと議論していただき、現場の実態を踏まえた教材の計画的な整備を進めてほしい。文科省としては、自治体の教材整備が着実になされるよう、引き続き教材の必要性を理解してもらうための支援などに取り組んでいきたい。

――コロナ禍の中、GIGAスクール構想が加速していよいよ1人1台端末が実現する。さらに来年度には学習者用デジタル教科書の1教科分の活用も始まる。こうした動きは教材整備にどう影響すると考えられるか。

小中学校で1人1台端末が実現し、来年度からデジタル教科書の教育効果と提供にあたっての課題抽出、問題解決策などを明らかにするための実証事業も開始される。このようにICT環境が急速に進む中で、教材整備の在り方についても議論していく必要があると考えている。現在の教材整備指針にも記載しているが、例えば教材のソフトを導入して大型装置の画面に映すことで、例示教材に代わる教材として活用することなどが考えられる。一方で、標本などのように生徒が直接触れることで効果的に学習が可能となる教材もあると考えられるため、教育指導の内容や生徒の発達の段階に合わせて適切に活用されていくものと考えている。

――学校における「働き方改革」も改訂のポイントとのことだが、現場の負担軽減に向けてどんなものが整備されるのか。

新教材整備計画と同時に、20年度から学校における働き方改革のための「事務機器整備5カ年計画」として、複合機や拡大プリンターなどの整備に必要な経費も措置された。例えば、複合機であれば、丁合作業なども省略することができる。各自治体においてはこれらの措置を踏まえ、日々、学校現場でご苦労されている先生方の業務負担の軽減に少しでもつなげていただきたい。

――コロナ禍の影響も含めて教育現場を取り巻く環境が大きく変わっている。こうした中で今後の教材整備を巡る課題についてどう考えるか。

今回のコロナ禍において、児童生徒の「学びを保障」するため、学校の感染症対策やICT端末を活用しながら学習を継続するための環境整備などが進められた。これらの取り組みにより、学校のICT環境については、おおむね整いつつあるため、今後は、これまで積極的にICTを活用した取り組みを進めてきた地域や学校だけでなく、全ての学校においてICT環境をいかに生かしていくかということが課題となっている。

教材については、先の中教審答申の中にICTの活用を進める上でデジタル教材の普及促進を図る必要があると盛り込まれているとおり、今後の教材整備の在り方を学校などの関係者も含め丁寧に議論していかなければならないと考えている。ひとことで教材と言っても、教科書、副教材、教材整備指針に示している学校に備える教材・教具などさまざまな種類のものがあり、また、教材整備指針に示している教材についても、発表用、実験用などさまざまなものがあるため、それらについてデジタルとアナログの扱いをどう整理していくかということが今後の課題となっている。

――教材を提供するメーカーにもこうしたデジタル化への戸惑いがあると思うが、期待することは。

中教審答申では、「令和の日本型学校教育」の構築に向けた今後の方向性として、「デジタルかアナログか、遠隔・オンラインか対面・オフラインかといった、いわゆる「二項対立」の陥穽に陥らないことに留意すべきである。どちらかだけを選ぶのではなく、教育の質の向上のために、発達の段階や学習場面などにより、どちらの良さも適切に組み合わせて生かしていくという考え方に立つべきである」という指摘がなされている。これからの教材の役割についても、教育の質向上の観点、つまり、子供たちに学習内容をきちんと理解してもらい、学びをうまく進めてもらうためのツールとして何が効果的であるのかという視点が引き続き重要であると考えられる。

教材は、教育の効果を高め、子供たち児童生徒の基礎・基本的な学習理解を助ける上で極めて重要であり、その充実は不可欠。今後は全ての学校においてICT環境が整備されることを踏まえ、ICTも活用しながら、いかに教育の質の向上を図るのかということが議論・実践されていくと思うが、質の高い授業のためには、引き続き質の高い教材が必要となる。教材を提供するメーカーの皆さまにおかれても、デジタル・アナログに関わらず、各学校において学習指導要領に沿った質の高い教育が十分に展開されるよう、引き続き現場の実態などを踏まえながら、子供たちにとってよりよい教材を提供していただきたい。

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