学校図書館とICT活用 教育課程の展開に寄与するためには

GIGAスクール構想の加速化により、学校現場では1人1台端末環境が本格化し、新たな局面を迎えようとしている。そのような中、学校図書館も、情報サービスや学習支援、読書推進の在り方などに対して変化が迫られている。学習指導要領に掲げられている主体的・対話的で深い学びに寄与するためにも、今後はICTを日常的に目的達成のための手段として効果的に活用することが求められるようになるであろう。今回は「学校図書館とICT活用 教育課程の展開に寄与するためには」をテーマに、学校図書館の関係者から意見を寄せてもらった。


全ての子供たちの可能性を引き出す
文部科学省総合教育政策局地域学習推進課長 横井 理夫

文科省では、Society5.0時代を生きる全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと協働的な学びを実現するため、「GIGAスクール構想」を推進しているところであり、本年4月から、全国の義務教育段階の学校において、児童生徒の「1人1台端末」および「高速大容量の通信環境」の下での新しい学びが本格的にスタートしています。また、高等学校段階においてもICT環境の整備を図ることとされています。

この各学校におけるICT環境の整備を踏まえ、学校図書館が一層の機能の向上や活性化を図るためには、学校図書館におけるICT活用が一層重要になると考えています。

学校図書館は、学校図書館法に規定されているように、学校教育において欠くことのできない基礎的な設備であり、図書館資料を収集・整理・保存し、児童生徒および教職員の利用に供することによって、学校の教育課程の展開に寄与するとともに児童生徒の健全な教養を育成することを目的としています。機能としては、「読書センター」「学習センター」および「情報センター」の3つがあります。

2020年度より順次、新学習指導要領が実施され、その総則において「学校図書館を計画的に利用しその機能の活用を図り、児童(生徒)の主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善に生かす」ことが、学校図書館に関する新たな役割として明記されています。この「主体的・対話的で深い学び」を実現するために、各教科等を横断的に捉え、計画的かつ体系的に指導を進めるカリキュラム・マネジメントが必要とされている中で、学校図書館は、上述の3つの機能を向上させ、その役割を十分に果たすことが必要と考えています。

学校図書館におけるICT活用の具体的な取り組みとしては、図書とパソコンなどの情報端末を併用した授業の実施、電子書籍の導入などによる電子図書館の取り組みがあります。

特に電子図書館については、昨年の新型コロナウイルス感染症の感染拡大による学校の臨時休業期間において学校図書館が利用できず、一部の学校において、電子図書館サービスの導入やその検討が行われました。現在、図書館サービスを導入している学校図書館は、ごく一部にとどまっていますが、今後、「GIGAスクール構想」の進展とともに、学校図書館におけるICT活用の動きが広がっていくものと思われます。文科省としても、各学校における取り組みを支援するため、状況把握に努めるとともに、先進的な事例について情報提供を行っていく所存です。


「支援」の場面で資料や学び方を提供
(公社)全国学校図書館協議会理事長 設楽 敬一

新型コロナウイルスの脅威は、日常生活ばかりではなく家庭での遠隔授業などが導入され児童生徒の学びも大きく変わりました。加えて、2020年度は、「GIGAスクール構想」での1人1台の情報端末が整備されました。

現在、学びの場が「教室」での対面授業に加えて、「家庭」での遠隔授業へと広がろうとしています。これは、コロナの有無に関わらず新しい学習形態が導入されたことになります。学習の場が「家庭」へと広がると、教員の指導を直接受けることができず、学習者(児童生徒)が主体とならなければ、学びが成立しません。学習者は、学習材の内容を自らの力で読み解くことが必須となります。もちろん、教員による資料の提示や学び方などの「支援」は欠かせません。

ところで、児童生徒は、読み聞かせや朗読を聞くなどにより、語彙(ごい)を増やしながら、言葉と文字が対応できるようになります。また、話すことや書くことを通して言葉による思考力も深めています。これまで、文章の内容を正確に「読み取る」ことが読解力だとされてきましたが、「読み取る」だけでは、論理的に考えることや多様な視点での見方・考え方ができません。まず、文章を読み取り、自分に必要な情報を見つけ出し、自らの知識や経験をもとに要約したりまとめたり、話し合ったりできる資質・能力の育成が喫緊の課題です。

こうした資質・能力は、PISA型読解力(自分で立てた目標を達成し、自分の知識と可能性を伸ばし、効果的に社会参加するために、テキストを理解・利用・熟考する能力)として定義されていて、「読み取る」ことから「読み解く」読解力(読書力)が求められています。

主体的な学びには、PISA型読解力の習得が欠かせませんが、教員が児童生徒を「支援」する場面で、必要な資料や学び方を提供するには学校図書館の機能が活用できます。このとき、学校図書館の機能を十分に活用して、学びを「支援」できる教員の力量が欠かせません。児童生徒主体の学習では、教科書に加えて質の高い資料やその活用方法などの支援が必須となるからです。このことから、教員に求められる力量は、児童生徒が探究型の学び方を通して知識の定着や思考力・表現力等を高めることが加わります。

探究の過程に習熟するとは、目標を明確に定めて段階を踏んで「学び方」や「学ぶための手だて」などを身に付けることです。こうした「学び方」の支援は、紙の資料の活用はもとより、デジタル資料の活用場面においても共通するものです。


新しい時代の図書館を授業で活用
滋賀県長浜市立中学校教諭 丸本 高祥

Society5.0の新しい社会に向けて、学校の授業が大きく変わろうとしています。情報社会から情報活用型社会に向けて、GIGAスクール構想の実現の一歩として、生徒1人1台の情報端末がある授業・学習環境が整えられました。このICT環境と学校図書館の活用で新たな時代の新しい授業をデザインしていくことが私たち教師に求められているものだと感じています。

学校図書館は情報センターであり多くの情報があります。学校図書館で授業を行うことで、その情報を効果的に活用できます。生徒1人1台の端末とインターネット環境によってICT機器でのコミュニケーション技術を活用でき、情報センターである学校図書館が世界に向けたグローバルな情報発信の基地とすることもできます。今までの授業では難しかった情報発信が1人1台の情報端末の整備により容易になり、情報を発信していくことで情報活用型の授業の展開が期待できます。今までの図書の情報だけでなく、インターネット資料も活用でき、声・音楽・映像・画像・プログラムを用いてまとめたり共有したりという選択肢が得られました。

学校から情報を世界に発信するために授業では、その作品を伝える相手や見る可能性のある相手を今まで以上に意識して生徒は情報を用いる必要が出てきました。当然のことながら図書やインターネットの記事、音楽には著作権があり、その利用方法が引用であればその表示の方法、音楽についてはロイヤルティーの制限について、考える機会を学校図書館での授業でつくることができます。コピーアンドペーストや図書の情報をそのまま用いても学習効果は上がらず、引用した作品にはなりません。手に入れた情報を既習事項とともに解釈して自分の言葉として要約できれば学習効果は上がり、またICTにより情報を正しく発信し共有を行おうとすれば今まで以上に授業の目的を明確にさせて効率を上げることができます。

学校図書館での授業で生徒は目的が明確ならタブレットやPC端末を使うことに没頭し、そうでなければ何をしようかと迷います。没頭している生徒たちに教師や学校司書からの指示は通りにくいものです。ICT機器を用いる授業の流れや目的は初めに理解できます、またはそれらの機器でコミュニケーションが取れる環境が確立しているように工夫することが大切です。

端末の使用では生徒の健康にも配慮します。図書とデジタルがうまく共存できる空間の1つに学校図書館があります。デジタルデトックスも取り入れながら新しい時代の図書館を授業で活用していきたいと考えます。


学校教育の情報センターとして活用を
日本児童図書出版協会事務局長 赤石 忍

2019年12月に示された文科大臣メッセージに表記されているように、未来に生きる子供たちは、今以上に予測不可能な社会を自立的に生きるために、豊かな創造性を備える事が求められています。それには激しい社会の変化を前向きに捉え、分断することなく、持続可能な社会に作り替えるその担い手として、自らの資質、能力を高める必要性が前提となります。そして、その想定される社会とは、内閣府が提唱するような、狩猟、農耕、工業、情報に続く、第五の近未来社会、仮想空間と現実空間を高度に融合して、経済発展と社会的問題解決を図る人間中心の社会「Society5.0」に違いありません。

その近未来の社会のおよそ半分を担う、サイバー(仮想)空間を生き抜くための必須要件こそがICT(情報通信技術)であると言えます。そのために政府は喫緊の課題として、学校教育における高速大容量の通信ネットワーク整備と、児童生徒個々に対して端末機器を提供するGIGAスクール構想を掲げました。それは多様な子供たちに対して、教育の均等性を保障すると共に、インターネット上にある、多大な情報に触れる機会を提供するためと理解しております。

ただし、文科省提言にもあるように、情報手段の適切な活用と、必要な情報の主体的な収集、判断、表現などから成る情報活用の実践力向上と共に、情報のエビデンスと、情報や伝達方法の社会的モラルを自省する力の育成を教育現場に強く求めています。そのために大きな役割を担うのが、学校図書館であり本であると、私は確信しています。

現在、ネット上の情報は誤謬も含め、さまざまな形で混在しており、出会った情報の正誤を確認する場所こそが、多数の情報フィルターを通った書籍の集合体であり、今後さらに、学校教育の情報センターとして活用されるべき学校図書館であると思います。また、社会的モラルの育成、向上には、児童読み物、文学作品などの読書は欠かすことはできません。その情報は相手の立場を正しく考慮しているのか、そのような他者への思いやりは、歴史的に読書が大きな役割を果たしてきた、と言っても過言ではないでしょう。

紙の書籍の中には、近未来には電子の姿に変わるものも出てきます。しかし、図書室で何気なく手に取った本から人生の指針を得た、という事例が少なからずあるように、その本質は少しも変わるものではありません。近未来社会のもう一方を占めるフィジカル(現実)空間を生きる子供たちに、本そして読書は必須であると、改めて私は強く感じております。


【学校図書館特集】トップページに戻る