新聞がつくる図書館の未来 継続したスクラップを活用し 相模原市立小山中学校

はじめに

相模原市立小山中学校は生徒数約700人の中規模校で、図書館は学校の中央という好位置にある。立地の良さからか、昼休みには多くの生徒が訪れる。そんな図書館の新聞を利用した取り組みを紹介する。

廊下掲示の工夫
「好きを極める」新聞記事と関連本の展示

人通りの多い図書館前の廊下は情報発信の場にうってつけだ。図書館には朝日、読売、毎日、神奈川新聞、朝日中学生新聞が届く。昨今で話題になった記事、朝日中高生新聞の「ニュース1週間」、読売新聞「Pop Style」など、ジャンルを問わずに掲示している。推しの俳優やアーティストの新聞が貼ってあると、生徒から「掲示が終わったらあの新聞はもらえますか」「新聞で紹介している宝塚の舞台の原作本『壬生義士伝』はありますか」と声が掛かる。

ある日、「阿部亮平君が載っている読売新聞ありますか」と尋ねてきた生徒がいた。彼女はアイドルグループ「Snow Man」の阿部君が大好きで、彼がアイドル活動で忙しい中、難関の気象予報士の試験に5回目の挑戦で合格したことを、みんなに知らせたいから、その新聞記事を掲示してほしいというのだ(20年11月23日・読売新聞)。同じ頃に「宇宙開発を目指す教え子が新聞に載った」という教師からの話もあった(20年12月7日・読売新聞)。

そこで、「好き」を極めた人たちの記事と関連本の展示をしようと考えた。阿部君推しの生徒に「POPを書いてよ」というお願いは軽くスルーされたが、小さいコーナーができた。

そよかぜ級スクラップ
そよかぜ級「新聞スクラップ」の発表

特別支援学級の教師から「新聞を使った授業を行いたい」との依頼があった。参考資料として朝日新聞社の「新聞授業ガイドブック」や読売新聞社の「ワークシート通信」を提供した。生徒が好きな記事をクリッピングし、その新聞名を考え、感想を書き込めるワークシートを教師が作成した。そして1カ月間作成したスクラップを月末にみんなの前で発表することになった。

授業が始まると、野球、鉄道、それぞれ興味のある記事を見つけて、クリッピングしていく。

1人の生徒が、カルロス・ゴーン氏に注目して、毎回記事を探しては、顔写真を貼っていった。19年春にはあふれるほどあったゴーン氏の記事は、日を追うごとに少なくなり、半年たった頃、「最近ゴーンの記事がない」と生徒がつぶやいた。毎日の華やかな記事に目を奪われがちだが、1つの事にこだわって収集すると見えてくるものがあることを実感した。

環境調べに協力(3年理科)

「環境を6つのテーマに分けて調べる授業を行いたい」と、理科の教師から相談があった。環境の関連資料を見ながら教師が考えている授業案を聞くと、それぞれのテーマを深く調べる、というより「『環境問題』を大テーマにして、イメージマップを作成したい」というものだった。「言葉」を広げていくなら、と新聞記事を一緒に使うことを提案した。

日頃、授業でよく調べる「福祉」「職業」「食」、また、まだ書籍化されていない「環境」「宇宙工学」など最新情報の新聞記事は、図書学習委員に協力してもらって、クリッピングしファイル資料として保管している。クリッピング作業をしている委員から時々「これ役に立つの?」といった意見を聞く。記事を読んで、選んで、切って貼る作業は彼らには大変らしい。確かにそれほどの利用がないので、「役立つ」と胸を張って言えてなかった。しかし、今回授業で活用され、3年の委員は「みんなが使ってくれた!意味あったね」とうれしそうにしていた。

終わりに

ここに書いたことは、多分どこの学校図書館でも日常的に行われているだろう。図書館では、本や展示・イベントを通して、生徒の間に会話が生まれる。それを拾って活動につなげる。楽しむ。そうすると生徒の一言から新聞記事に絡んだ展示ができたり、継続したスクラップから気付きがあったり、委員会活動が活発になったりする。新聞を活用した授業は、コミュニケーションを生んだだけでなく、内容の濃いものになった。

そよかぜ級のスクラップでは、1年間授業を続けてきた中で、生徒は新聞名のつけ方が格段に上手になった。環境のイメージマップは黒板から言葉があふれていた。新聞記事は内容が端的にまとまっているため、短い時間で多くの関連語句を効率よく調べることができた。

コロナ禍でコミュニケーションが薄れ、さまざまな文化に触れる機会がなくなっている。新聞をはじめ、多様なメディア・資料を活用し、生徒、教師と一緒に情報を発信する。そんな学校のハブになるような学校図書館をこれからも目指していきたい。

(前相模原市立小山中学校司書教諭・田村駿)

(相模原市立小山中学校図書整理員・中塚ゆり子)


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