工業高校教育の質保証 工業高校生の専門的職業人として必要な資質・能力の評価手法の実践研究

公益社団法人全国工業高等学校長協会 研究担当 鳥居 雄司

 2013(平成25)年から公益社団法人全国工業高等学校長協会(全工協会)と株式会社ベネッセコーポレーションは、共同で3年間、そして16(平成28)年から全工協会事業として研究を継続し9年目を迎えた。

 この研究は、生徒の学習意欲の低下など、高校教育に対する信頼性や質保証に対する要請を受けて、筆記試験などでは評価が困難な、高校生が身に付けるべき幅広い資質・能力について、評価の妥当性の確保や信頼性の向上などに向け、多様な学習成果についての評価手法に関する調査研究と成果の普及を図るものである。形成的評価、観点別評価、指導と評価の一体化、主体的に生徒が学習に取り組む態度、学校が育成を目指す資質・能力をいかにして育むかの実践研究である。

 参加した研究校は、全国19都道府県延べ80校(24工業高校、1総合学科高校、1科学技術科)におよび、次期学習指導要領の実施、スクールポリシー策定に至る研究である。

文科省受託事業

 1年目に研究校11校を対象に学習意欲などを調査した。工業高校は99%を超える就職内定率と就職3年後の極めて高い定着率に見られる社会・職業へ円滑な移行の要因などを調査した。

 工業高校生の「気付き」では、「入学後、すすんで勉強するようになるきっかけがあった」の質問に対して、3年生の65%が肯定し、さらに「入学後、すすんで勉強するようになったのはいつ頃」という質問に3年生の52%が1年生と回答した。また、日本の競合国として進展著しい韓国、タイの実態と現地で働く日本人に求められる資質・能力を調査した。

 2、3年目は、パフォーマンスに関わり、工業高校教育で日常的に行われる特色ある学習活動で、成果を上げている評価行為を「暗黙知」と捉え、ルーブリックなどを活用して「言語化」するなど、「形式知」として共有しやすい評価行為にする実践研究を進めた。工業高校教育の特色ある分野を「専門科目」「実習・課題研究」「地域と連携した工業教育」の3カテゴリーで評価手法を研究し、3年間の文科省受託研究を終了した。

全工協会事業

 2016(平成28)年以降は、①専門科目・実習②課題研究③地域と連携――の3カテゴリーで研究の深化と成果の普及を図った。

 ①専門科目・実習では、生徒に求める到達点に至る知識・技能を、スモールステップに分けて各段階の評価を簡潔で明解に表現したシートを開発し、教員と生徒が共有して、指導と評価の一体化と生徒の主体性ある学びの推進を図った足利工業高校。

 ②課題研究では、電気科のボランティア活動で、生徒はプログレスシートに自己評価を記入し、スマートフォン入力する。シートと入力データを教員の分析会評価資料にまとめ、教員の助言を記入したシートと一人一人のレーダーチャートを生徒に戻す仙台工業高校。

地域と連携の様子

 ③地域と連携では、地域産業に活力を与える専門的職業人を育成する学校設定科目を開設し、生徒に授業の見通しを持たせ、学習到達点に向けた段階を自ら把握できるルーブリックの開発と活用を実践研究した石川県立工業高校。

 各研究校は設定した研究仮説を生徒の変容で検証し、研究成果を報告書にまとめて、成果を蓄積することができた。

 各年度の研究報告書は公益社団法人全国工業高等学校長協会ホームページの[調査・研究]→[研究報告]に掲載している。

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