新フェーズ見据え組織改編 「未来を切り拓き幸せを追求する力を」 安彦広斉文科省初中局修学支援・教材課長に聞く

 GIGAスクール構想による1人1台環境が多くの学校で実現してから半年が過ぎ、文科省は10月、新たなフェーズを見据えた組織改編を行った。これまでICT環境整備や、端末を活用した学びを中核的に担ってきた情報教育・外国語教育課を廃止し、教育の情報化を初等中等教育局全体で推進する方針に転換。合わせて、端末整備やデジタルを含む教材などハードの整備と、経済的に困難を抱える家庭への支援を担う「修学支援・教材課」、部署を超えた調整役を担う「学校デジタル化プロジェクトチーム」を新設した。新たな組織体制で、GIGAスクール構想をどのように進めていくのか、修学支援・教材課の安彦広斉(あびこ・こうせい)課長に聞いた。

修学支援・教材課と学校デジタル化プロジェクトチームを新設

――今回の組織改編の狙いは。

文科省初等中等教育局修学支援・教材課の安彦課長

 これまで情報教育は、主に情報教育・外国語教育課が担ってきました。情報教育というと、学校の情報化や情報教育の内容そのものも含まれ、そもそも守備範囲がとても広いのですが、加えて昨今では教育全般のデジタルトランスフォーメーション(DX)の流れもあり、これまでの体制では担えない部分が出てきました。そこで今回、学習基盤審議官の統括のもと、主にICTの基盤整備を担う「修学支援・教材課」と、課を超えて司令塔機能を担う「学校デジタル化プロジェクトチーム」が新設されました。

 例えば小学校のプログラミング教育では、算数、理科など、いろいろな教科等を学ぶ中でコンピューターなどを使い、プログラミングを体験しながら、プログラミング的思考を身に付けていくという目標があります。こうした情報活用能力や問題発見解決能力の育成については教科等横断的に取り組む必要があります。組織としても情報教育担当だけではなく同様に取り組み、最終的には、教育課程や環境整備を担う部署と一体化させていく必要があります。

 そこで新たな体制では、修学支援・教材課が学校のICT環境の基盤整備を支えるとともに、学校デジタル化プロジェクトチームが、ICTを活用した指導方法や教育課程としての情報教育を、段階的に教育課程課に移行させていく役割を担います。また、学校デジタル化プロジェクトチームは同時に、総合教育政策局教育DX推進室やデジタル庁などとの省内外との総合調整や、教育データ利活用、校務の情報化、セキュリティー対策なども担当します。

――修学支援・教材課は、教材整備指針の策定のほか、高校生の修学支援や小中学生の就学援助などの業務も担当します。

 学びを支えていくという観点で見れば、ICT環境の整備や教材整備ともつながります。例えば経済的に困難を抱える家庭を対象とした高校生等奨学給付金や就学援助では、学用品費や修学旅行費などが補助対象となっていますが、ICTに関わる部分でいえば、端末を活用した家庭学習にかかる通信費も支援の対象に含まれています。

 また、GIGAスクール構想での1人1台端末整備の補助金の対象となっていない高校段階では、家庭での費用負担によりパソコンやタブレットを学習に活用するBYOD(Bring Your Own Device)方式が採られている実態が進んでいます。その場合は当然、費用負担が難しい家庭への支援をセットで考えていかないと、うまく進めていくことができません。

 昨年度の第3次補正予算では、経済的に困難を抱える家庭の高校生が使用できるようパソコン端末整備を支援していますが、今後は更新時期なども見据え、継続的な支援の在り方とセットで検討していく必要があるでしょう。

組織改編後の学校教育の情報化の推進体制(出所:文科省「文部科学省組織令等の一部改正について(初等中等教育局関係)」)
学校現場を支援する拠点を自治体に設置

――文科省の調べでは今年7月時点で、全国の公立小の96.1%、中学校の96.5%が、GIGAスクール端末の活用を開始しています。今後の課題は。

 GIGAスクール構想は、インフラ整備だけでなく、そのインフラを使って学校現場の教育の質の向上を図るものです。教師の働き方改革につなげて負担を軽減していく側面もあり、かなり幅広い狙いを持った施策です。そのため、一つの担当課だけで完結するというよりは、関係する課が連携していくことが大切で、その意味でも、つなぎ役となる学校デジタル化プロジェクトチームが果たす役割は大きいといえます。

 その中で修学支援・教材課は、デジタルを含む教材の整備、ICT機器・ネットワークの整備を担いますが、今後は活用のステップを進めていくために、持続的に学校現場を支えていく体制が必要だと考えています。そのため8月末に公表した来年度の概算要求では、新たに「GIGAスクール運営支援センター整備事業」として、64億円を要求しています。

「GIGAスクール運営支援センター」のスキーム(出所:文科省「令和4年度概算要求のポイント」)

――「GIGAスクール運営支援センター」とは。

 これまでも学校現場での支援が求められていましたが、対応できる人材の不足やミスマッチが課題となっていました。そこで、学校現場からのサポート依頼や、長期休業中などの家庭からのトラブル相談にも対応できるような「GIGAスクール運営支援センター」を自治体同士が連携して広域に設置してもらい、より安定的な支援体制のもとで、学校現場の負担を極力減らし、質的向上を支えることを目指します。

 設置のスキームとしては、学校設置者である自治体が民間事業者に業務委託する形を取り、費用の2分の1を国が補助します。政令市などの大きな自治体は単独での整備も考えられますが、より小規模な自治体は都道府県と連携したり、市町村同士で連携したりすることで、一定規模の地域単位(全国200カ所程度を想定)で共同により設置・運営することを前提として考えています。できるところから支援を開始し、端末の活用が安定軌道に入っていくまで、数年かけて立ち上げ支援を行っていくイメージです。

 GIGAスクール構想による環境整備で、端末が一気に学校現場に入ってきました。今後は、これまでと同様のICT支援員の役割に加え、学校現場への技術的サポートを中心に継続的な支援体制を整えていくことが重要です。中でも学校が快適にインターネットに接続するためのネットワークアセスメントと、応急対応のサポートは喫緊の課題だと考えています。

主体的に学ぶための道具に

――学校現場へのメッセージを。

 ICTを使いこなすことをはじめとした情報活用能力は、全ての学びの基盤となる資質能力であると新学習指導要領に新たに位置付けられました。子供たちが未来を切り拓き幸せを追求するためには欠かせない力となりますが、これは教師を含めた大人にも必要なものであり、同様に使いこなして幸せを追求すべきだと思っています。

 ICTをうまく使いこなすことで、雑用が劇的に効率化されたり、授業準備が省力化できたりすることで生み出された時間を本業である子供と向き合える時間に使えるようになることで、教師としての幸せや楽しさを再認識できることも大事です。

 あまりにも負担感が大きく、「無理だ」と思ってしまうようなら、いったん立ち止まって同僚や身近な専門家に相談したり、管理職にサポートを申し出たりしてほしいと思います。そのためにも「GIGAスクール運営支援センター」への今後の期待は高まります。

 ある尊敬する教師によるとICTはI(いつも)C(ちかくで)T(たすけになる)ツールであるとして、子供たちと一緒になって楽しそうに活用しています。教師も子供と一緒にICTの可能性を探究してみるところから気軽に取り組むことで、主体的に学ぶための道具として定着していくのではないでしょうか。

 大事なのは、子供一人一人が必要だと思った時に、端末をいつでも使える環境です。学校側が利用場面を限定的にすると、主体性は育まれず、高価なペーパーウェイトにもなりかねません。子供たちの「使いたい」という意欲を喚起し、主体的な学びにいざなうための道具として、まず一緒に使ってみる、みんなで使ってみる、必要なだけ使わせてみるなど、優良事例をいきなり実現しようとせず、階段を「昇る」ことを意識して取り組んでいただきたいと思います。教師も子供も幸せになることは、GIGAスクール構想の大事なゴールの一つです。

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