1人1台端末環境から半年でみえてきたこと 確かな手応えを感じる 信州大学名誉教授 東原 義訓

 GIGAスクールの時代になって、明らかに教室の様子が変わり始めた。環境が整って、先生方にとってやりたいことができるようになり、児童生徒にとっても活躍できる場が拓けたと表現した方が適切だろう。

 教育の情報化推進のために長年、効果のエビデンスを示すことや、効果的な活用方法を示すことが求められてきたが、最近の学校を訪問すると、ICT環境を整えることの方が先決だという主張の方が正しかったのではなかろうかと感じる。

 これまでの40年間、私が目にしてきたICTを活用した授業といえば、何らかのICT教育研究推進校の実証事業に当たる、いわば特別の授業であった。一方、この1、2か月間に私が目にしている長野県飯田市立小学校での授業は、まったく性質が異なるものである。

 日常の授業だから指導案を渡されることもなく、校長か教頭と指導主事と3人で、カメラを片手に廊下を歩きながら、ある教室では3分、また、別の教室では10分といった具合に、その教室に短時間滞在し、授業の様子を見学させてもらっている。

 正直なところ、驚きの連続である。情報端末やクラウドが、日常の授業の中で、自然に、なるほどという使い方で活用されているのである。しかも、授業者はICT活用に堪能な先生とは限らない。予約しなければならなかったコンピューター室時代とは異なり、GIGAスクールは、他の先生に遠慮することなく、共同で作成した指導案に沿わなければならないこともなく、自分の思いで活用できる環境と機会とを全ての先生に与えてくれたのである。

 そんな授業の中から、印象深かったものを紹介しよう。

 小学1年生にとって、クロームブックの活用はまだ2回目だというのに、クラスルームの画面上で、先生から送られたジャムボードを開いて、初めてお絵描きをするのだという。「タブレットの中に紙を送るよ。受け取って!」の先生からの比喩的表現で、1年生は直感的に意味を解して、ジャムボードを開く。児童の直感に訴える先生の一言で、ペンの色を変えたり、消したり、新たな機能を見つけていく。わずか45分間で、各自の作品全部を大型提示装置で鑑賞するところまで、できてしまった。その担任がICTに特に堪能なわけではないことは、参観すればすぐに分かる。でも、児童に何をやってもらいたいのかの伝達はすこぶる分かりやすかった。

 4年生の学級会の授業に遭遇した。付箋を使って、グループ内の話し合いを整理し、その結果から学級全体のジャムボードに意見を書き込み、討論するというものである。最後の先生からの質問「デジタルを活用した話し合いの感想は?」に対して、「いつもと違い、発言した人の考えだけでなく、全員の意見を知ることできた」「声だと聞こえなくなるけど、書いてあるので何度でも見ることができた」など、次々の発言から、本質的な特徴を児童が捉えていることに驚かされた。

 5年生の社会科では3クラスが同じ単元を、それぞれの担任の異なる指導方法で進めていた。廊下を歩くと、各クラスからもれてくる児童の声が全く異なる。いわゆる従来型の調べ学習のクラスでは、黙々と一人一人が教科書と資料集を読んで、ノートに書き出している。隣のクラスでは担任が各児童に複数枚の写真教材を配布していた。1枚1枚を切り離す作業だけでも時間がかかったことは容易に想像できる。それらの写真をノート上で並べて、順序を考えているクラスからは、児童同士の会話が時々聞こえてくる。最もにぎやかな声は、ジャムボード上の写真に気付いたことを付箋で貼り付けながら話し合っているクラスからだった。

 動き始めたばかりのGIGAスクールだが、教室に入ってみたり、先生と話したりしてみると、確かな手応えを感じる。

  • 使いたいときに、誰にも遠慮することなく使えるという、気軽さや安定感。
  • 頻度多く使えるので、試行錯誤的に使いながら改善していけばいいという安心感。
  • やりたいことが明確な先生にとって、自分の工夫次第で、これまでの環境では不可能であった授業展開が可能となり、自分の創意工夫を発揮できる楽しさや充実感。

 こんな感想を抱きつつ授業をしている先生方の思いや実践が、周りのクラス担任や管理職の先生方にも伝わっていく仕組みが、今後の課題といえるのかもしれない。

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