新たなフェーズを迎えた学校現場 プログラミング教育の進捗状況は 求められる実践的知識の獲得 茨城大学教育学部情報文化課程准教授 小林 祐紀

 1人1台端末および校内ネットワークに関する整備が一段落し、現在は持ち帰りを含めた日常的な活用を推進することに、多くの自治体が注力している状況といえる。従って、数年前に見られたプログラミング教育への過熱気味ともいえた熱気は、随分と落ち着きを取り戻したように感じる。多くの自治体では、すでに必要な教材、モデル指導案、ベーシックカリキュラムなどのモノ、そして教員研修というコトの整備および実施を終えている。

 このような取り組みによって、プログラミング教育は教師の中で一定程度は認知され、特に高学年においては教科書に記載されている学習内容を中心に授業が実施されている。加えて、新しいタイプの授業に可能性を感じる教師たちを、多数見いだすことにつながったことは、副次的とはいえ今日までの大きな成果といえる。

 一方で、すでにプログラミングの授業は一部の得意な教師が行うものという、かつてのICT活用のような現状となっているところもあると聞く。いわゆる二極化の進行といえよう。

 しかし、考えてみるとICT環境の整備によってプログラミングの授業に対する環境面のハードルは、かつてないほどに低くなっている。また学習指導要領によって、かねてから重視されてきた「情報活用能力」は「学習の基盤となる資質・能力」と位置付けられ、教科横断的に育成することが明記されている。そして、プログラミング的思考は情報活用能力の一部を構成するものと位置付けられていることを考えると、今このタイミングで、プログラミング教育の重要性を再確認し、各学年で多様な実践を追求することが望まれる。まさにプログラミング教育は、新たな環境下において次のフェーズへの移行が求められている。

 全国を見渡してみると、少なからず継続的かつ計画的に取り組んでいる自治体・学校が存在し、「まずはやってみる」ことを繰り返しながら、「よりよい教育実践」へと歩みを続けている。例えば、ある自治体では、市内全域への水平展開と継続的な授業の実施を意図し、市内全域の4年生の児童全員が同質の授業を受けられるよう、5時間で実施できる授業パッケージを開発した。また毎年、プログラミング教育に関する研究協力員を選定し、授業開発を行なっている。1、2年目はA分類に該当する算数と理科の授業を開発し、公開授業を実施した。また3年目にあたる今年度は、B分類に該当する授業を新たに開発し、公開することになっている。

 興味深いのは、公開授業の際には、参観を希望する教員はもとより、公開授業と同じ学年を担当する教員が各学校から必ず1人参加することを要請している点である。このように特定の参加者を指名することで、確実な水平展開を実現しようとしている。このような取り組みの結果、当該授業の実施はもちろんのこと、同僚の授業に触発され新しい授業の実施やクラブ活動での取り組みなども報告されている。

 さらに今後は、STEAM教育を見据え、教科横断的に工学的かつ探究的に取り組む授業において、プログラミングを取り入れた授業の開発を視野に入れている。なお、STEAM教育を扱うNHK for School「ツクランカー」においてもプログラミングを取り入れた回がすでに公開されている。ぜひご覧いただきたい。

 上に挙げたような自治体や学校では、先行実践を「まねる」ことから始まったプログラミングの授業は、今や同僚と共に新しい分野を開拓し「創る」ものへと変質してきた。授業を創るという過程は、わが国において重視されてきた授業研究の営みそのものであり、このような営みを通じて、教師たちはプログラミングの授業を実践する際に必要な実践的知識を獲得していく。

 筆者は、プログラミングの授業を「創る」ことに取り組む教師が、実践の際にどのような点を重視するのかという授業設計の視点を明らかにした。その結果、授業においても重視されていた協働的な学びなどの視点と日常生活とプログラミングの関わりなどのプログラミング教育に特徴的な視点の両方を含むことが示された。今後、中学校、高等学校へとつながるプログラミングやSTEAM教育の実践を着実に実施するためには、プログラミングやテクノロジーの知識だけにとどまらず、授業方法や教科内容に関する知識との関わりの中で実践的知識を獲得していくことが私たちには、今求められている。

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