始動から半年―創造性を育む教育の実現に向けて 端末利用姿が当たり前に 千葉県柏市立手賀東小学校校長 佐和 伸明

 2019年12月19日、「子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けて~令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境~」というタイトルで文科大臣メッセージが出された。そして、21年度より本格的に1人1台端末環境下での新しい学びがスタートし、約半年がたつ。

 学校現場では、子供が必要に応じてネット検索したり、デジタル教科書やAIドリルなどを利用したりする姿が日常化し、公正に個別最適化された学習を目指すための1人1台端末活用のイメージは、だいぶ共有されてきたように思う。しかし、もう一つの狙いである、創造性を育む教育については、まだあまり進んでいないように感じている。その理由の一つは、「1人1台端末で、創造的な学びをどのようにデザインしていったら良いか分からない」という教師が多いことではないだろうか。

 そこで、本校では、創造性を育む学びの実現に向けた単元開発に取り組むことにした。全学年で実践を始めているが、ここでは、2つの学年について紹介したい。

 まず、5年生は、外国語の授業で、外国人や他校の友達をオンラインでつなぐ協働学習を行った。外国人(ALT)と英語で話す機会を増やしたいと考え、子供たちを3人ずつのグループに分け、オンラインで交流を続けた。さらに、市内の学校と、「サプライズでTシャツをプレゼントする」という共通のゴールを設定し、ALTから収集した情報をもとに、Tシャツのデザインについての話し合いをオンラインで行った。お絵描きアプリで作成し、ネット印刷で完成したTシャツを手に取ったALTの喜びを見て、子供たちの達成感や満足感も高まった。

ザリガニ釣りの実験を動画で撮影し編集

 2年生は、生活科でザリガニ釣りを扱い、「どんなエサで釣れるか」について検証する実践を行った。「イカで釣れるなら、白い消しゴムで釣れるのでは?」「匂いに寄って来るなら、ニンニクでも釣れるのでは?」「カラフルなピーマンは見つけやすいのでは?」など、子供たちの予想は、教師の想定を超えるものであった。各自の予想について、1人1台端末で実験の様子を動画で撮影し、編集した作品を発表した。ちなみに、上記の予想例については、全てザリガニを釣ることができた。しかし、釣れるものと、釣れないものの理由がはっきり分からないので、動画をYouTubeで公開し、一般の人から意見をもらいながら研究を継続している。

 これらの事例のように、創造性を育むことを狙いとし、解のない課題を設定し、対話的な学びを通して最適解を見つけていくといった学習は、1人1台端末によって実現しやすくなった。今後は、このような創造力を育む学びの実践事例を、多くの教職員と共有していくことが必要だと考える。

 創造的な学びを実現する上で、もう1つの課題は「子供たちのタイピング力」である。それぞれの意見を同時に書き込んだり、コメントを打って話し合ったりする活動をする上で、学習の支障になるのは文字入力の速度である。15年に文科省が子供たちのタイピング力を測る調査を行った結果、小学生の1分間あたり入力数は平均5.9文字であった。10秒に1文字程度しか入力できなかったことになり、これでは、端末を使い自分の考えを表現したり、意見を交換したりすることはできそうにない。

タイピング調査の結果(2021年4月~10月/手賀東小学校調べ)

 本校でも21年4月に同様の調査を実施してみたところ、5年生の平均が17.7文字であった。3年前から1人1台の端末を利用しているため、国の調査より3倍くらい良い結果であったが、一方で個人差が大変大きいことが分かった。そこで、全校体制でタイピング力の向上を図ることとした。朝学習の時間や授業でのちょっとした時間をタイピング練習に当てた。また、アプリによるタイピング練習を宿題にしたり、夏季休業中は日記を書くことを課題に出したりと、家庭学習としても取り組ませた。その結果、6月は26.6文字、10月には39.2文字にまで向上した。

 子供たちが学校や家庭で端末を利用する姿が当たり前になったことは、21年度前半の大きな変化であり、GIGAスクール構想の成果である。今後は、どのような力を付けるために端末を利用しているのかといった、目的や内容がますます問われてくるだろう。本校では、創造性を育む学びの実現に向けて、引き続き、教師の授業デザイン力を高める研修と、子供の端末活用のスキル向上を図る取り組みを進めていきたい。

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