GIGAスクール構想実現にむけた環境整備 明確な目標を設定し着実に実行 埼玉県川口市教育委員会

 2021年4月から学校現場における1人1台端末環境が全国的に整備された。埼玉県川口市教育委員会では、1人1台端末環境整備に向けて明確な目標設定を行い、着実に実行し成果を上げつつある。どのようにして現体制を構築し、課題を見出しながら成果につなげていったのか、同市教委指導課の村越崇指導主事、庶務課の西袋宏成主任を取材した。

【協賛企画/株式会社内田洋行】

重点項目を明確化し民間の力を活用

 21年4月から市内全小・中学校80校で1人1台端末の円滑な運用が開始できるよう、同市教委は実情を踏まえながら課題を解決していった。

 まず取り組んだのがネットワークの構築である。「GIGAスクール構想では、高速大容量の通信環境の構築がうたわれていたが、従来のパソコン教室を対象としたセンター集約方式では対応することが難しかった。そのため、各学校にネットワーク回線を敷設し、直接学校から接続できるローカルブレイクアウト方式を採用した。また、プロバイダー選択も吟味を重ねた。セキュリティに関しても、UTMを各学校に設置し、さらに、家庭への持ち帰り運用に備え、フィルタリングソフトを全端末にインストールした」と西袋主任は準備期間当時を振り返る。

学校ヘルプデスクを起点とした運用保守体制によるサポート体制を充実させた(川口市教育委員会提供)

 合わせて取り組んだのは「1人1台端末の運用保守体制の構築」である。市内小・中学校80校、47550台もの端末やICT機器の運用保守は、教委に掛かる労力と負担は大きい。そこで、(株)内田洋行と市内のIT関連企業の協力を得て、運用保守(学校ヘルプデスクも含めて)の業務委託を行った。負担の軽減と業務対応のキャパシティを広げ、端末の故障やネットワークの不具合など、現場で起こりやすいトラブルからクラウドサービスなどの問い合わせまで、きめ細かく学校現場に対応できるようにした。

 民間の力を効果的に活用したことは、1人1台端末運用を円滑に行う上で参考になる点だろう。

 運用保守体制の構築後、今年の6月には端末の持ち帰り運用を開始した。国の補助金でモバイルWi―Fiルーター1500台を導入し、家庭に通信環境が整っていない児童生徒世帯に対し、原則1世帯当たり1台の貸し出しを実施した。生活保護世帯および就学援助世帯には、月20GBまで使用できる通信SIMを無償で貸し出している。

 「緊急事態宣言下の2学期開始当初は、分散登校・分散授業を実施せざるを得なかったが、オンライン授業の実施を併用していく際に、今までの積み重ねが大いに生かされた」と、村越指導主事も、西袋主任も手応えを感じていることを語った。

学校現場のサポートを充実させる

 ICT機器の効果的な活用から授業支援・研修会など、学校現場の教職員をサポートするICT支援員の導入や研修体制の充実も課題であった。そのため、学校ヘルプデスクの設置と合わせ、ICT支援員の導入に関しても業務委託を行った。(株)内田洋行から8人のICT支援員を派遣してもらい、1人につき10校を担当し、月に2回学校を訪問するという体制を取った。学校ヘルプデスクとICT支援員の両輪による対応で、学校現場の不安解消と円滑な運用を図った。その結果、学校ヘルプデスクやICT支援員では対応が難しい案件に対して、教委が専念して対処できるようになった。

 1人1台端末導入に向け、2021年1月から3月にかけて、導入研修(1回)及び活用研修(2回)を実施してきた。村越指導主事は「現在、教育委員会と市内各校の情報担当の教職員がMicrosoft Teams上でチームを結成し、教育委員会で取り組んでいること、学校現場で不安に感じていること、成功事例、失敗事例など、日々、最新情報を共有している。大切なのは、学校現場の疑問や不安を素早く解決してあげることである。研修会を効果的に開催していくためにも、常に最新の動きをキャッチしていくことが重要だ」と述べた上で、「今後は、学校現場での最新の話題を踏まえながら、オンライン形式による研修も積極的に実施していきたい」と展望を語った。

見え始めてきた成果と今後の課題

 「1人1台端末環境整備に取り組んできた中、管理職向け会議もオンラインにシフトしていくことで、学校現場の管理職のICT活用に対する意識が高まった」と西袋主任は業務負担軽減以外の成果について語る。村越指導主事は「ICT活用に関して、学校現場から子供たちの自己肯定感が向上したという意見もあれば、課題や問題点の指摘もある。それは教職員も子供たちもICTを活用しているからこそ提起されるものだと思う」とICT活用が日常化してきていることを実感している。

 明確な課題も見えてきた。「小学校低学年や外国人児童生徒へのICT活用の対応、1人1台端末の配布の目的と意味を子供たちに理解させること、ICT活用が苦手な子供たちを取りこぼさないようにするためのアプローチ等が主な課題だ。今後は情報モラル教育の浸透・強化に加え、ICT機器の活用による個別最適化された学びを実現するための子供たちへのアプローチの仕方を含め、学校現場と議論し課題解決策を見つけ出していきたい」と村越指導主事、西袋主任は先を見据えていた。

制作:教育新聞ブランドスタジオ

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