「令和の日本型教育」支える教材整備は 文科省初等中等教育局財務課の鈴木教育財政室長に聞く

 中教審は2021年1月に「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」を答申した。個別最適な学びと、協働的な学びを充実させ、「主体的・対話的で深い学び」を実現するには、学校教材の計画的な整備が欠かせない。GIGAスクール端末の本格活用、社会のデジタル化が加速する中、教材整備に当たりどのような視点が必要なのか。文科省初等中等教育局財務課の鈴木健一教育財政室長に聞いた。


――現行の教材整備指針、また、20年度から始まった10カ年の新教材整備計画のポイントは。

 文科省では、累次の学習指導要領の改訂を踏まえ、各教育委員会、各学校の教材整備の参考資料として教材の整備基準を公表してきた。現行の「教材整備指針」は17年改訂に対応する。義務教育諸学校に備える教材の例示品目、整備数量の目安を参考資料として取りまとめ、19年8月に公表した。品目数は小学校367、中学校376、特別支援学校552の計1295に及ぶ。

 ポイントは大きく三つ。一つ目は新学習指導要領関連への対応で、プログラミング教育用ソフトウエア、ハードウエア(小学校)などの追加をした。2つ目は技術革新への対応で、3Dプリンター(中学校)などを例示した。3つ目は学校における働き方改革関連で、拡大プリンターや複合機など教育環境改善に資する教材を例示した。

 各教育委員会が財政部局に予算要求をする際に分かりやすいよう「ICT5カ年計画」との対応関係を示し、品目に整理番号を追加し、学校現場ですでに管理中の教材と対比しやすくしたのも、今回の整備指針の特徴だ。

 教材整備計画は、この教材整備指針の改訂を踏まえ、複数年にわたる計画的な教育環境整備に関する財政措置の見通しを示すもの。最新の計画は、20年度から10カ年計画で始まっている。単年度で約800億円、10カ年で総額約8千億円が措置される見込みだ。

 この措置で地方自治体に配分される地方交付税(普通交付税)は、使途の定めのない一般財源。国庫補助金と異なり自治体の判断で使い道を決めることができる。そのため、計画的で安定的な教材整備に向けては、予算編成の権限を持つ首長の理解が不可欠だ。総合教育会議の場を活用するなどして、各自治体版の教材整備計画を議論し、現場の実態を踏まえた計画的な整備、予算要求を進めてほしい。教材は子供たちの学習内容の理解を助け、教育効果を高めるのに欠かせないものだという認識を共有することが重要だ。

 そのためにも、各教育部局において地方交付税の措置額を試算することがポイントになろう。つまり「うちの措置額はいくらぐらいになるか」を把握するという意味だ。地方交付税は、標準的な行政サービスの提供に必要な「基準財政需要額」を賄えるよう、自治体の財政状況に合わせて配分する仕組みとなっている。大雑把に言えば、税収が足りず財源不足額が生じる場合はその分が手当されるが、税収が多く標準的な需要を賄える自治体に対しては不交付となる。

 基準財政需要額のうち教育関係経費は児童生徒数や学級および学校数などの施設規模に応じて算定される。教材整備計画に基づく教材整備に要する経費については学級数に応じて算定される。こうした措置の仕組みを理解しておけば、総合教育会議で「教材費の充実」を協議・調整する際の議論の土台として有効ではないか。

 教育はやり直しが利かない。どの世代の子供たちに対しても手を抜いてよい時期などはない。ぜひ、各自治体においては教材整備の必要性を理解してもらうための議論を続けていただきたい。

――GIGAスクール構想による1人1台端末での学習がスタートして1年。教育現場から見えてきた、教材整備に関する新たな課題や展望は。昨今のデジタル化の動きに、教材整備はどう影響するのか。

 児童生徒への1人1台端末を含むICT環境の整備に当たっては、19、20年度に3回の補正予算を組んで所要額を計上し、自治体や関係者の協力を得て、おおむね全国で整備が完了した。

 21年度は本格的な利活用が始まり、新たな課題も見えてきた。補正予算ではネットワーク構築や、教師への1人1台端末の整備などを計上して現場への支援を充実させている。

 22年度予算においても、GIGAスクール構想を次の段階にステップアップさせる施策を推進する。デジタル教科書を活用した教師の指導力向上、学習者用デジタル教科書の実証事業、CBTシステムの拡充などだ。

 一見すると、文科省はデジタル化に向けて一直線にまい進しているように受け止められるかもしれないが、それは違う。

 中教審答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して』においては、知・徳・体を一体的に育むためには、教師と子供、子供同士の関わり合いや、五感を働かせる実習・実験、体験活動などの「リアル」の重要性が指摘されている。

 そのためには、デジタルかアナログかの「二項対立」に陥らず、どちらの良さも適切に組み合わせて生かしていくとの方向性も示されている。ICT活用が自己目的化しないよう留意も促した。

 学校現場においても、子供一人一人の発達状況や個性、学習内容に応じた教材の使い分けの大切さが認識されつつあるのではないだろうか。

――今後の教材整備をめぐる課題や要望に対する備えは。

 現行の教材整備計画は、10年計画のうち2年が経過し、22年度で3年目に入る。教材整備の状況は複数年で把握し、年度間の増減も含めて総合的に判断する必要があるため、現時点において課題を明示することは難しい。まずは、各自治体において安定的で計画的な教材整備が行われることが第一だろう。

 ICT5カ年計画が22年度で最終年度を迎えることもあり、教材整備の在り方は現場目線を持ちながら不断に検討していきたい。

 1月には、中教審初等中等教育分科会に「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会」が設置された。ICT環境の整備と活用を進める中で、教科書・教材のデジタル化を推進するとともに、既存の教科書・教材との関係の整理に向け、専門的見地から議論いただく。その内容を教材整備のあり方に関する必要な施策に結び付けていきたい。

――変化の激しい時代にあって、教材メーカーに期待することは。

 教材を提供するメーカーの皆さまに対しても、デジタルかアナログかの二項対立に陥らず、それぞれの持ち味を生かした教材開発と提供をしていただくよう期待している。

 「1人1台端末の整備は、教材整備にかかる大きなパラダイムシフトだ」との声も聞く。確かに、社会全体のデジタル化が進み、新型コロナウイルス感染症の影響で加速する中、文教市場は大きな変革期に直面している。そのような状況下でも、子供たちの未来のために教材を製造・開発しようとする高い使命感の裏返しと受け止めている。

 ぜひ、自社の固有の強みを存分に発揮していただきたい。今後ともよりよい学校教材の整備・充実が進められ、全ての学校で学習指導要領に沿った質の高い教育が十分に展開されるよう、よりよい教材を提供していただきたい。

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