【提言】これからの学校図書館に求められる課題

 1人1台端末環境での学習が本格的に始まってから約1年、教育現場は教育の転換期を迎えている。学校図書館も、情報サービスや学習支援、読書推進の在り方などに対して変化が迫られており、ICTを日常的に目的達成のための手段として有効活用することが必要となってきている。そのような背景を踏まえ、「これからの学校図書館に求められる課題」をテーマに、文科省担当者、現場の教諭、学校図書館に関わりのある各団体の識者から意見を寄せてもらった。

文部科学省総合教育政策局社会教育振興総括官
安彦 広斉 氏
(公社)全国学校図書館協議会理事長
設楽 敬一氏
日本児童図書出版協会会長
岡本 光晴 氏
東京都新宿区立津久戸小学校主幹教諭
博田 かおり 氏

第6次5か年計画を踏まえた推進を

文部科学省総合教育政策局社会教育振興総括官 安彦 広斉

 GIGAスクール構想では、1人1台端末、通信ネットワークなどの学校ICT環境を整備・活用することで、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実など、教育の質を向上すること、また、これまでのわが国の教育実践と最先端のICTのベストミックスを図ることにより、教師・児童生徒の力を最大限に引き出すことが目的とされています。

 また、新学習指導要領においては、情報活用能力を「学習の基盤となる資質・能力」と位置付け、学校のICT環境整備とICTを活用した学習活動の充実に配慮することが、明記されました。

 学校図書館は、「読書センター」「学習センター」「情報センター」の機能を持ちます。学校図書館はこれらの機能が発揮されることにより、子供たちの学びが深化するもので、GIGAスクール構想下においては、ICT環境を整備すると同時に、情報教育と連携し、ICTを道具・手段としてどのように活用していくか考え、従来からの学校図書館とデジタルとのベストミックスを実践していくことが求められています。

 2021年度の委託事業「学校図書館の活性化に向けた調査研究」において、インターネットを活用した蔵書検索や貸出予約の実施、より確かな情報が発信されているインターネットサイトを導くQRコードの活用などと合わせて、インターネットでは確かな情報が得られにくい内容の専門書を学校図書館の蔵書構成に含めるといった事例も見られました。

 文科省では、今年1月に22年度から26年度までの5年間を対象期間とする第6次「学校図書館図書整備等5か年計画」を策定しました。本計画では、全ての小中学校等において学校図書館図書標準の達成を目指すとともに、図書の更新、新聞の複数紙配備および学校司書の配置拡充を図ることを目的としており、計画に基づいた地方財政措置が講じられています。

 各教育委員会におかれましては、GIGAスクール構想を踏まえた、それぞれの地域での必要性や整備水準などについての議論を深め、必要な経費の予算化をお願いします。そのためには、各地方自治体に設置される総合教育会議において、首長と教育委員会が協議・調整することも有効であると考えられます。

 文科省としましては、23年度から始まる第5次「子供の読書活動の推進に関する基本的な計画」の策定に向けて状況把握に努めるとともに、各学校における取り組みを支援するため、参考となる事例や各種データなどを提供してまいります。

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紙から電子の活用へと容易に移行できる手だてを

(公社)全国学校図書館協議会理事長 設楽 敬一

 2021年度は、GIGAスクール構想により、小中学生に1人1台の情報端末(PC端末)が整備されました。これをどのように活用するかが、喫緊の課題です。ネットを介したキーワード検索では膨大な量の情報が表示されます。さらに、情報の信ぴょう性について主体的に吟味できる批判的思考力が必要になります。

 本から情報を得る場合は、目次で全体の概要をつかみ、索引を使うと該当ページにたどり着きます。学校図書館では、こうした目次や索引の使い方などを学び方指導として培ってきました。また、本の内容は、著者や監修者、編集者などにより体系化され信ぴょう性が担保されます。紙に印刷した情報は、固定(変更不可)され、信ぴょう性が高まります。学校図書館では、信ぴょう性の高い資料を的確に読み解く指導を通して、自立した読者を育ててきました。

 具体的には、発達段階に応じた読み聞かせや朗読などで語彙(ごい)を増やし、事象と言葉・文字の対応を促進します。また、話すことや書くことにより、言葉を使った思考力も深めています。これまで、文章の内容を正確に「読み取る」ことが読解力だとされてきましたが、「読み取る」だけでは、論理的に考えることや多様な視点での見方・考え方ができません。

 学校図書館で培ってきた本を使った読解力や情報リテラシーの指導を情報端末の活用場面においても応用できるようにしたいと考えています。前文科相は、「PC端末は鉛筆やノートと並ぶマストアイテム」とコメントしています。このことは、PC端末をシミュレーションやドリル学習に使うと同時に、学びの道具としての活用を示唆しています。

 情報端末のコンテンツとして、読物の電子書籍や百科事典、図鑑などの電子書籍版を思い浮かべると思いますが、紙と電子の特色を生かして、児童生徒が紙から電子の活用へと容易に移行できる手だてが必要です。

 例えば、図書目録の電子化です。学校図書館管理ソフトに入っている書誌データをPDF化して情報端末に入れます。お薦めの本は解題付きにすると図書目録を見て、学校図書館で本を借りるようになります。同様に、『よい絵本 読書活動ノート』や『学校図書館学びかたノート』などもPDF化することで、目次をクリックすると必要なページを表示できます。この使い方は紙と電子の良い点を生かしたものといえます。こうした活動により、紙も電子も使いこなせる児童生徒を育てることができると期待しています。

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第6次「学校図書館図書整備等5か年計画」に期待

日本児童図書出版協会会長 岡本 光晴

 第6次「学校図書館図書整備等5か年計画」が策定されました。まずは、学校図書館の重要性と整備の必要性が理解され、活動が継続されることについて安堵しております。

 近年の調査結果として、図書標準達成率が向上していることは大変喜ばしいことです。しかしながら、主に新刊購入に充てられる「不足冊数分」購入予算が減少した(単年度:65億円→39億円)ことについては残念でなりません。他方、「更新冊数分」(単年度:155億円→160億円)や「学校図書館への新聞配備」(単年度:30億円→38億円)、「学校司書の配置」(単年度:220億円→243億円)への予算は増額されました。

 学校司書の配置率の高い都道府県は、図書標準達成率、図書の選定基準・廃棄基準の策定率、新聞配備率が高く、図書購入冊数も多い傾向にあることが分かっています。さらなる学校図書館の充実に向けて各自治体、各学校での取り組みに期待しています。

 「GIGAスクール構想」によって、ICT活用と紙の本とを併用しての学びというものが重要になっていると考えています。どちらか一方のみというわけにもいけませんし、どちらかが欠けてもいけません。1人1台の情報端末ICT環境整備が進む中、学校図書館の環境整備だけが取り残されてはいけません。両輪がうまくかみ合って回っていくためには、ICT化の環境整備同様、学校図書館の環境整備を継続していく必要があります。

 図書標準達成率は一つの目安ではありますが、達成がゴールではありません。むしろ、そこからの運用、活用が問われていくものと思います。地方財政措置ではありますが、まずは、これからの5年間で策定された名目ごとの予算をしっかりと消化し活用していくことが求められていると思います。

 学校司書の配置が進み、活動が充実することにより、子供たちの豊かな学びにつなげてほしい、そのためには今まで以上に学校図書館を整備することが必須と考えます。

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1人1台端末のより効果的な活用を

東京都新宿区立津久戸小学校主幹教諭 博田 かおり

 1人1台端末が導入され1年が経過しました。3年生担任としての1年を振り返るとともに、今後の学校図書館教育への展望を考えます。

 3年生は、ローマ字入力やタイピングなど、端末の基本的な操作技能を習得するのに多くの時間を割きました。その中でも、国語科の昔話を紹介する学習や社会科の昔の道具調べにおいて、図書資料を活用した授業を展開しました。インターネットのサイトを活用する方法もありましたが、情報量が膨大な上、発達段階に応じた、児童が内容を理解できるページにたどり着くことが困難でした。

 その点、図書資料は、児童が調べやすく、理解しやすいため、有効に活用することができました。図書資料から得た情報を、端末を使って入力する形での学習が定着しました。これは、児童の操作技能の向上に役立つとともに、これまで紙で行ってきた学習がデジタル化され、児童の興味関心を引き出す教材となりました。

 今後は、児童の端末で学校図書館資料の検索ができたり、予約に関する操作が端末上で可能になったりすると、さらに便利になると考えます。

 デジタルコンテンツ(電子図書館)の導入については、教員としてぜひ望むところです。児童が活用できる場面として、主に読書活動と調べ学習が挙げられます。読書活動では、学校でも家庭でも、気軽に本を読むことができます。デジタル化によって、これまで本に興味がなかった児童にも豊かな読書体験をさせることができるかもしれません。調べ学習では、探究的な学習の過程のそれぞれに、電子書籍などを適切かつ効果的に活用して、情報を収集・整理・発信するなどの学習活動が期待できます。これらの学習を繰り返すことは、主体的・対話的で深い学びの実現にもつながると考えます。

 しかし、これらの導入には、膨大なお金がかかることは言うまでもありません。子供たちの豊かな学びのために、1人1台端末がより効果的に活用されることを願っています。

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