図書とネットのベストミックス 埼玉県入間市立野田中学校

互いに不足情報を補い合う 学習効果の向上のために

 狭山茶の産地としても有名な入間市の最も北西に本校はある。学校からは加治丘陵の山々を眺めることができ、河岸段丘からなる校区には湧水がでるところもあり、豊かな自然に恵まれた立地にある。また、古くから栄えてきた校区は、人も温かく日ごろの教育活動にも積極的に協力していただき、地域と学校が支え合う関係となっている。そこで、地域の力と自然を活用しながら、図書とネットのベストミックスを図った授業づくりについて述べていく。

iPadの導入

 私が教師になり、12年がたつ。中学生の頃、総合的な学習の時間に図書室で調べ学習を行い、新聞などにまとめていたことをよく覚えている。その頃から時は流れ、本校にもGIGAスクールの一環で1人1台のiPadが貸与された。iPadが導入されたことで、高校調べや、校外学習調べなどは、個人個人がインターネットを利用して行えるようになった。同じテーマについて調べるときに図書で起こりがちなのは本の取り合いである。それがiPadを利用すると、個人個人がそれぞれのペースで場所を問わず調べることができる。教室で、生徒が机に向かい黙々と調べ学習を行う姿は、今までにない驚きに満ちた光景であった。

図書とネットの利点・欠点

 ネットの利点は、情報の新しさにある。旅行雑誌を片手に修学旅行の行先を考えるとき、記載されていた店舗などがすでになくなっていることや、寺院が改修工事に入っていたなどは起こりがちだった。それが、ネットでは最新の情報を調べられるため、そういったことが起こりにくい。

 では、図書の利点は何かと考えたときに、目的とする正確な情報にたどり着きやすいことだと私は考えている。行ったことのない場所、知らない言葉や知識などを調べようとしたときに、手掛かりとなる言葉が見つからず、ネットの検索欄のページで固まっている生徒を見掛けることがある。それが、図書だと、図書室や図書自体に索引があり、索引に従っていくと目的とする情報にたどり着きやすい。

 例えば、『好きな天体について調べなさい』というテーマだった場合、「自然科学」→「天体の本」→「気になる天体のページ」というように、たとえ知っている天体がなかったとしても、本を読み進めるうちに、出会える可能性が高い。また、ネット上には憶測にまつわる情報など、不正確なものが多々あり、情報の取捨選択が十分にできない生徒たちには触れさせたくはない情報でもある。対して図書は、十分な選考がなされており、情報の正確さが図書の利点ともいえ、教師の立場として安心して生徒を見ていられることにつながる。

図書とネットのベストミックス

 中学3年生の理科の学習内容に『生態系』について学ぶ単元がある。毎年、学校の近くにある「谷田の泉」に行き、動植物の観察を行っている。昨年度からは、iPadを持っていき、発見した動植物を写真に収めさせている。そして、撮影した写真をもとに、図書室で動植物について調べ、生態系内の役割別に分類する授業を行っている。

 上記で述べた通り、名前の分からない生物を調べるときは図書の方が圧倒的に早い。ネットには写真から検索する機能もあるが、認識精度の問題や、撮影の技術の問題、カメラの性能の限界(鳥に気付かれずに近づいてiPadで撮影するのは不可能に近い)から役に立たない。多くの生徒が、図書から名前を特定し、名前をネットで検索し、確かめていた。

 そのような中で私が驚いたのは、鳴き声から鳥の種類を特定していた生徒がいたことだ。その生徒は、鳥の鳴き声の本に記載されていた鳴き声(もちろん文字である)から、鳥の名前の見当を付け、その名前をもとにしてYouTubeで検索し、実際の鳴き声と聞き比べ特定していた。これこそ、まさに図書とネットのベストミックスではないだろうか。図書にできることには限界があるがネットも同様である。互いに不足している情報を補い合うことで、最適な答えへと導くことができる。

今後の学校図書館の在り方

 GIGAスクール構想により、PCやタブレット端末が普及した。同時に、図書室の利用率が下がっているといった話を耳にする。しかし、図書とネットで優劣を決めるのではなく、互いの有用性について理解し、ベストミックスを図ることで、関数的に学習効果を向上させることができることを実感した。また、他教科や、さまざまな調べ学習で同様に活用することができる。今後も、この学習活動を継続すると共に、学校内外問わず、学校図書館の有用性について発信していきたい。

(埼玉県入間市立野田中学校教諭・浅見浩佑)

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