(鉄筆)「人間は平等で、努力は報われ…

「人間は平等で、努力は報われ見た目は大した問題ではない——だが、それらは絵空事だ。往々にして努力は遺伝に勝てない。知能や学歴、年収、犯罪癖も例外でなく、子育てや教育はほぼ徒労に終わる」

今春発売された作家の橘玲氏の著書『言ってはいけない—残酷すぎる真実』(新潮新書)が話題を集め、すでに30万部を突破した。教育界ではこれまでタブー視されがちだった進化論や遺伝学、脳科学の最新知見から大胆に「残酷すぎる真実」をあぶり出した。

多様な反響があり、中には「『知能は7~8割は遺伝する』『犯罪者の子どもは遺伝的に(環境とは関わりなく)犯罪者になりやすい』など、みんな薄々は感じてきたことだ。研究機関のデータを証拠に挙げおり、傾向としては事実なのではないか」という、まさに危うい考えもあった。

著者は結論として「結局、子どもがどう成長していくかは、生まれたときにすでに決まっている遺伝的資質と、その後の、親が関与できない友人たちとの人間関係でほとんど決まってしまう」と言っている。

本を一読して「不愉快な現実」にあえて立ち向かい、タブーに挑戦している著者の勇気に感心した。そうではあっても、人は変われる。そうでないと教育の営みは運命論に没する。だからこそ、多くの教育関係者が進化医学や遺伝学、脳科学と子育てや教育との関連について研究を一層深め、そこから、人は何によって変われるのか、平等で努力が報われる社会を構築するには、どんな知見が必要なのかを突き詰めていってほしい。

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