(鉄筆)『漫画 君たちはどう生きるか』…

『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス刊)が2017年8月の発売以来、200万部を突破した。原作者は雑誌「世界」の初代編集長で、岩波少年文庫の創刊に深く関わった吉野源三郎(1899~1981年)。父を亡くし母と2人暮らしの15歳、中学生のコペル君が叔父とのやりとりを通じて成長する物語が描かれている。いじめや貧困、学びが主題になっている点は、教育問題につながっている。

「漫画版」と同時に発売された文字だけの「新装版」も50万部を超えた。元々は1937年の刊行。今、中高生に最も読んでほしいと教師が薦める本だという。ジャーナリストの池上彰氏は東京都練馬区の武蔵高等学校中学校を訪ね、この名著について特別授業をした。それがNHK出版のムック本にまとめられ、こちらも反響を呼んでいる。

なぜ、吉野源三郎なのか。池上氏は「いろいろな読み方ができ、読むたびに新たな発見があって、それだけの深みがあるものだから」と秘密を解き明かす。本の構成が、著者は脇役、読者が主役になっているという。多様さ、気付き、深さを学び得る機会は、読書に限ったものではなく、対人関係においても数えきれないほど与えられる。

教師が児童生徒に接する教室で、それぞれに新たな個性を発見し、彼ら彼女らの深さ(時には浅さも)について理解する姿がそのことを教えてくれる。テーマに掲げた「本当に大切なことって何だろう」は、「本当に大切な教育って何だろう」という言葉となって、教室にはね返ってくる。