(鉄筆)いじめ、子供の貧困……

いじめ、子供の貧困、インクルーシブ教育の実践――こうした教育課題に対峙(たいじ)するとき、教師が行き着くのは「教育における正義とは何か」という考えではないだろうか。そのヒントを導き出せそうな本がある。「正義とは何か―現代政治哲学の6つの視点」(神島裕子著、中公新書刊)がそれだ。

リベラリズム(自由主義)、リバタリアニズム(自由至上主義)、コミュニタリアニズム(共同体主義)など、六つの政治哲学の思想から公正な社会とは何かを探っていく内容で、教師向けに書かれた本ではないが、教育の視点を重ねてみると新たな発見がある。子供たち一人一人の自由や権利と、平等・公正な教育を実現するためには何が必要か、あらゆる視点から考える鍵をくれる。

この本が提示しているのは、絶対的な「正義」などないということだ。時代や置かれた場所、視点が変われば正義の在り方も変わってしまう。学校における正義もまたしかりで、目の前の問題の芽を一方向から摘むことが最良の策とは限らない。重要なのは、つねにどうすれば全ての児童生徒の幸福につながるか問いつづける姿勢である。

世界に目を転じれば、自国第一主義の台頭で多国間の協調関係は揺らぎ、日本経済への影響も懸念されている。自らが信じる社会正義のみを追求するリーダーたちの判断がどういった結果をもたらすのか、われわれは注視していかねばならないが、この状況を学校に置き換えてみるとどうなるか。自らに問い掛けながら考えてみてもよいかもしれない。