(鉄筆)先月、哲学者で文化勲章受章者の……

先月、哲学者で文化勲章受章者の梅原猛先生が亡くなった。昭和、平成を代表する日本の知性がまた一人亡くなったことに深い悲しみを覚える。ご冥福をお祈りしたい。

平成時代も終わりに近づき、このところ、平成を象徴する出来事を振り返る報道が目に付く。先日も、平成の国内外の主な出来事を給食で振り返る、ある小学校の取り組みの報道があった。第1回は、平成2年の「東西ドイツの統一」。給食もドイツにちなんだメニューが用意されたそうだ。

平成後半に生まれた児童に平成を振り返らせることに違和感を覚える向きもあろうが、それはそれとして、大きな出来事を風化させず、次の時代に教訓として生かすことは平成を生きた大人の使命である。

ところで、平成の大きな出来事の中で、いまだ十分に解明されたとは言えない事件の一つに「オウム真理教事件」がある。この事件直後、梅原先生は、『心の危機を救え―日本の教育が教えないもの』(平成7年、光文社)という書を出版された。その中で、サリンを引き起こしたのは戦後教育だとして、「心の教育の不在」を指摘し、宗教心に基づく道徳教育の必要性を強く訴えられた。

思い出したくもない事件として葬り去りたいところだが、それでは大人として、とりわけ教師としての責任は果たせまい。なぜ、あのような事件が起きたのか、梅原先生や他の先達の知見も得つつ、改めて、自ら納得のいく解釈を持つことが強く求められよう。そのことが、あのような悲惨な事件を防ぐ唯一の手だてと考える。