(鉄筆)100メートルを13.48秒で走る……

100メートルを13.48秒で走る米国の7歳の少年の姿をテレビで見た。驚くばかりに速い。全世界がこの少年スプリンターに熱い視線を送っているという。4歳から父親の指導の下、トレーニングを開始したというが、その体は成人の運動選手そのもののように見えた。小さい頃からトレーニングを続けるとこのような能力が身に付くという成功事例の一つだが、全ての早期教育がこのようなよい結果をもたらすとは言えまい。

そんな折、「生命とは動的平衡である」ことを分かりやすく解説した生物学者、福岡伸一氏の『生物と無生物のあいだ』(講談社現代新書)を読んだ。いくつもの「目から鱗(うろこ)が落ちる」知見を得た。とりわけ、「生命には時間がある。その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことができないものとして生物はある」の言葉と、エピローグの、トカゲの卵のふ化が待ちきれず、殻を小さく開けて中をのぞいた結果、中で息づいていたトカゲの赤ちゃんが外気に触れて腐り始めたという小学生の頃の苦い体験が強く心に残った。

それぞれには、それぞれ内在する固有の時間があり、人為的にそれを早めたり遅くしたりはできないと言うことであろう。……

この記事は購読会員限定です。購読を申し込むと、続きをお読みいただけます。