教員採用試験に出る教育時事ランキング

教員採用試験の教職教養で鬼門と言われる「教育時事」。問題集や参考書のみで対策するのは非常に難しく、「どの資料」の「どの部分」が出るか、検討をつけること自体に苦労している方も多いはず。

そこで、月刊『教員養成セミナー』前編集長で教育ジャーナリストの佐藤明彦氏が、独自に収集した膨大なデータから2020年実施試験を分析し、2021年実施教員採用試験の傾向と要チェックなテーマを予測します。

難解な教育時事をどう攻略するか

教職教養の中でも、最も対策が難しい領域が「教育時事」です。中央教育審議会の答申や文部科学省の通知などは内容が難解な上に、新しいものが次々と出てくるからです。加えて、問題集や参考書等にもほとんど載っておらず、「どの資料」の「どの部分」が出るか検討をつけるのは非常に困難です。

教育時事で扱われる答申・資料等は実に幅広く、2020年度実施試験では74種類、2019年度実施試験では68種類にも上りました(筆者調べ)。その約半数は、出題が1自治体のみというマイナーな資料です。教育時事対策がいかに難しいかがお分かりいただけるかと思います。

「的を絞って」対策

推奨しているのは、ある程度「的を絞って」対策することです。数ある資料の中から10~15程度にターゲットを定め、よく問われる内容・用語だけを徹底的に覚えていくのです。

もちろん、試験本番では必ずしもそれら10~15の資料から出されるとは限りません。しかし試験対策に費やせる時間は限られています。出題範囲が広大な教育時事対策に労力を使いすぎると、他の部分が疎かになりかねません。

2020年教員採用試験 教育時事の出題数ランキング

資料別の出題数ランキングをまとめると以下のようになります(資料名をクリックすると資料提供元にアクセスできます)。

順位 出題資料(外部リンク) 出題数
1 中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(2016年12月)※関連資料・通知を含む 15
2 閣議決定「第3期教育振興基本計画」(2018年6月) 14
3 文部科学省「特別支援教育の推進について(通知)」(2007年4月) 8
3 人権教育の指導方法等に関する調査研究会議「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]」(2008年3月) 8
5 文部科学省「いじめの防止等のための基本的な方針[平成29年3月改定]」(2017年3月) 7
5 中央教育審議会「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」(2019年1月) 7
7 中央教育審議会「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(2012年7月) 6
7 文部科学省「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン~発達障害等の可能性の段階から,教育的ニーズに気付き,支え,つなぐために~」(2017年3月) 6
7 文部科学省「第2次学校安全の推進に関する計画」(2017年3月)※関連通知を含む 6
10 中央教育審議会「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について ~学び合い、高め合う教員育成コミュニティの構築に向けて~ (答申)」(2015年12月) 5
10 文部科学省「平成29年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2018年10月)※関連通知を含む 5
10 文部科学省「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」(2016年9月) 5
10 中央教育審議会「今後の学校におけるキャリア教育・職業教育の在り方について」(2011年1月) 5
順位 出題資料(外部リンク) 出題数
1  中央教育審議会「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(2016年12月)※関連資料・通知を含む 23
2 文部科学省「いじめの防止等のための基本的な方針[平成29年3月改定]」(2017年3月) 8
2 人権教育の指導方法等に関する調査研究会議「人権教育の指導方法等の在り方について[第三次とりまとめ]」(2008年3月) 8
4 文部科学省「発達障害を含む障害のある幼児児童生徒に対する教育支援体制整備ガイドライン~発達障害等の可能性の段階から,教育的ニーズに気付き,支え,つなぐために~」(2017年3月) 7
5 文部科学省「特別支援教育の推進について(通知)」(2007年4月) 6
6 文部科学省「平成28年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2018年10月) 5
6 教育相談等に関する調査研究協力者会議「児童生徒の教育相談の充実について~学校の教育力を高める組織的な教育相談体制づくり~」(2017年1月) 5
6 閣議決定「第3期教育振興基本計画」(2018年6月) 5
6 中央教育審議会「今後の学校におけるキヤリア教育・職業教育の在り方について」(2011年1月) 5
6 閣議決定「人権教育・啓発に関する基本計画」(2011年4月) 5

教育時事の出題状況一覧(資料別)

全国の自治体でどのテーマ・資料が出題されているのか、一目で分かります。どのような資料、どのような用語がよく問われているのか、確認しましょう。

よく出るもの、出題が増えているものは

最頻出は「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」

2018年、2019年と、1位だったのは2016年12月に出された中央教育審議会の答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」(2016年12月)でしたが、2020年度は出題した自治体が8つのみと3位にとどまりました。代わりに1位となったのは、「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」です。2016年9月に出されていた同名通知の改訂版に位置付けられ、冒頭の「『学校に登校する』という結果のみを目標にするのではなく」の部分から、多くの自治体が出題しました。ここ数年、不登校児童生徒数は増え続けており、学校教育の大きな課題とされています。2021年度も引き続き、要チェックな通知と言えるでしょう。

「第3期教育振興基本計画」

2019年度2位の「第3期教育振興基本計画」は、2020年度も同じく2位にランクインしました。この計画で、特によく問われているのは、「基本的な方針」の5つの項目です。この部分は、暗記するくらいのつもりで覚えておいてもよいでしょう。なお、教育振興基本計画は、国の計画を受けて、各自治体も策定しています。そこから出す自治体も多いので、チェックしておきましょう。

「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)」

学習指導要領改訂に関わる中央教育審議会の答申は、出されてから4年が経過し、すでに小学校で全面実施となったこともあって、出題自治体数が激減しました。恐らく、2021年度実施試験では、さらに減少するでしょう。ただ、この答申の肝となる部分を押さえておけば、学習指導要領の総則について問う問題にも対応できます。「社会に開かれた教育課程」「カリキュラム・マネジメント」「主体的・対話的で深い学び」など、主要なキーワードに関わる部分は、チェックしておいて損はないと思われます。

「教育の情報化に関する手引」

2019年12月、約10年ぶりに改訂された「教育の情報化に関する手引」からは、8自治体が出題しました。全国各地の小中学校では、「GIGAスクール構想」に基づくデジタル端末の整備が進んでおり、これから教員になる人はICTを活用して指導する力が求められます。そうした流れからも、この手引からは2021年度以降も多くの自治体が出題するものと思われます。

「小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」

2020年度実施試験では、この通知について問う自治体が7自治体に上り、前年度の2自治体から一気に増えました。特によく問われているのは、3観点のうち「主体的に学習に取り組む態度」の部分で、「学びに向かう力、人間性等」は「個人内評価」を通じて見取ることなどについて、多くの自治体が出題しました。

「特別支援教育の推進について(通知)」「発達障害のガイドライン」

「特別支援教育の推進について(通知)」は、もう10年以上前の資料ですが、今なお多くの自治体が出題しています。発達障害への対応など、特別支援教育が校種を問わない課題となっているからです。同様の理由で、2017年3月に出された発達障害のガイドラインも、2019年7位(6自治体)、2018年4位(7自治体)と上位に入っています。

「いじめの防止等のための基本的な方針[平成29年3月改定]」「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」

「いじめ」に関しては、教育法規分野の「いじめ防止対策推進法」から多くの自治体が出題していますが、教育時事分野でも「いじめの防止等のための基本的な方針[平成29年3月改定]」と「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」を中心に、多くの自治体が出題しています。いじめの定義、重大事態の定義などを中心に、要点を押さえておきましょう。

「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」

2019年は5位(7自治体)だった働き方改革の答申(「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」(2019年1月))は、2020年度も6位(6自治体)と、多くの自治体が出題しました。特によく問われているのは、答申内で示されている「基本的には学校以外が担うべき業務」「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」の3区分についてです。最低限、ここだけでも押さえておきましょう。

2021年実施試験で初出題が予想される資料

教育時事の対策を困難にさせる理由の一つは、過去に出題されたことのない新しい資料から出題される可能性があることです。2020年実施試験では、「教育の情報化に関する手引」が、初出題にもかかわらず3位(8自治体が出題)となりました。2021年度試験では、どのような資料が初出題されそうなのかを見ていきます。

中教審「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」

2021年実施試験から出題が予想される資料の中で、最も要注意なものは何と言っても2021年1月に出された中央教育審議会「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」です。「個別最適な学び」は、GIGAスクール構想に基づく学校のICT化とセットで進められ、「指導の個別化」と「学習の個性化」という二つの側面から推進することなどが、この答申には示されています。また、小学校高学年における教科担任制、履修主義・修得主義の適切な組み合わせといったことも示されており、今後の学校教育を形づくるものとして、多くの教育関係者が注目を集めています。文部科学省のホームページには、概要版も公開されているので、最低限、それを見ながら要点を押さえておくことをお勧めします。

文部科学省「各教科等の指導におけるICTの効果的な活用に関する参考資料」

2020年9月に出された「各教科等の指導におけるICTの効果的な活用に関する参考資料」も、押さえておきたい資料の一つです。現在、GIGAスクール構想に基づき、学校のICT化は急ピッチに進められています。デジタル端末や電子黒板などを使った授業が具体的にどのようなものなのか、この資料に目を通せば、面接・論作文の対策に役立てることもできます。

月刊『教員養成セミナー』前編集長/教育ジャーナリスト 佐藤明彦氏

合格者に、試験対策をいつごろスタートしたかを聞くと、「試験前年の10月ごろ」と言う人もいれば、「年明けごろ」と言う人もいます。中には、「直前の4月ごろ」という強者もいますが、これはやや例外的で、確実に合格を勝ち取りたいのであれば、前年の秋ごろには着手した方がよいでしょう。最初にすべきは試験内容の確認です。教員採用試験は自治体単位で行われ、試験内容も自治体ごとに異なります。まずは募集要項を見て、筆記試験、面接試験、論文試験、実技試験などの中から、自分が何を受けなければならないか確認しましょう。

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