51大学と協定で教員養成との連携深める 横浜市教委

松原雅俊教職員育成課長に2年間の成果を聞く

中教審は昨年12月の答申で、教員養成や現職研修の一体的な改革として、教育委員会と大学が連携を図る「教員育成協議会」の設置を求めた。横浜市教委はこの答申に先駆け、平成26年6月に教員養成を担う42の大学と「協定」を結び、大学における教員養成と現職教員の育成との接続を深める取り組みを行っている。本紙は同市教委の松原雅俊教職員育成課長に、大学連携の中心的な取り組みである「教育実習」「学校現場への学生ボランティア」「教職課程への指導主事派遣」について聞いた。k20160808_01

——大学連携強化のきっかけは。

教員採用後の育成だけでなく、在学中から今の教育現場で活躍できる教員を育てる必要があると考えたからです。

横浜市の今の教育現場は大量退職、大量採用を経て、教職経験10年までの教員が56%という状況(平成26年度調べ)です。

また、いじめや不登校の解消に向けた自己有用感や自己肯定感の醸成、特別支援の必要な児童生徒や日本語指導の必要な児童生徒の増加など、教育課題は以前にも増して多様化・複雑化しています。

さらに国レベルでは、中教審の論点整理に見られるような急激な変化の中で、学習指導や学校経営のあり方が問われています。

こうした諸課題や、時代要請に対応できる教員を育てるためには、大学と教育委員会、学校が、課題を共有し、「採用前の養成」と「採用後の育成」をつなぐ「連携・協働」を行うことにより、課題解決に向けた取り組みをつくりだしていく必要があると考えました。

——周辺の教育関係者の反応は。

横浜市大学連携・協働協議会が本格始動したのは平成26年度からです。それ以前にも、9つの大学と個別の協定を結んでいました。25年度の段階で、これらの大学をはじめ、本市に入職する学生を輩出している近隣の大学にお声掛けし、連携・協働に関わるプレ会議を開き、学校訪問を通じてネットワークを広げていきました。現在では、51大学と連携しています。

はじめは、何のための連携・協働か、共通認識を図るのは難しいと感じたこともありました。しかし今は、本市の取り組みをご理解いただいていると感じています。

——教育実習における成果や課題は。

大学訪問や協議会を通じて「実習先を確保したい」という要望が非常に多かったので、連携の第一歩として、実習先の安定した受け入れシステムが必要だと考えました。

実習生の受け入れは昨年度900人ほどでした。システムが稼働した今年度は、1100人まで増加しました。

教育委員会が取りまとめる一括方式と、学生や大学が個別で学校に交渉する内諾方式の2つの方法を選べるようにした結果だと考えています。

課題としては、実習に臨む学生のマナーやコミュニケーション力を高めていくことと、実習指導に当たる経験の浅い教員への支援があります。

以前は、こういった課題の共有は困難でした。連携が深まっていくことにより、実習校や教育委員会と大学が相互に連絡、相談し合えるようになってきました。

——具体的な対策は。

初めて実習生指導をする先生のために、教育実習指導者講習会を実施しています。

また、そのテキストとなる「教育実習サポートガイド」を作成し、全校が活用できるようにしました。作成にあたっては、大学の要望も盛り込んでいます。忙しい現場の教員が活用しやすいものを目指して、今後も改善していきます。養護教諭編、特別支援学校編も作成中です。

現在は、さらに、「教育実習ワーキンググループ」を立ち上げ、連携大学、学校の代表者と一緒に効果的な教育実習のあり方について研究を始めています。このような取り組みを通じて、大学と教育委員会、学校が率直に議論できるようになったことは、大切な変化だと感じています。

——実習生を配置するにあたり基準などは。

内諾方式では、学校との相談により受け入れを決めています。一括方式は、受け入れ数が限られていますので、教員志望であることを条件としています。

——学生ボランティアについての成果や課題は。

教育委員会事務局が把握している昨年度のボランティア実施総数は1100人でした。教職課程のない大学の学生も利用しています。ボランティアは、学校が独自に募集しているケースもあり、実際にはもっと多くの学生が学校に入って活動しています。

本市には、もともとアシスタントティーチャーや教育支援隊などの学生派遣事業があります。今回はこうした事業とは別に、採用前の学生が市立学校を足場に学ぶことを目的とする「教育実践ボランティア」事業を新たにつくりました。登録するとボランティア保険に入れるというのが特徴です。

学校現場からのニーズは高く、需要に供給が追いついていないのが現状です。学校のニーズに合わせながら、学校で活動することで、学生は、児童生徒や教職員、学校の組織などを肌で感じながら理解していきます。通常、大学がボランティア学生の様子を把握するのは難しいですが、「教育実践ボランティア」では、学生の様子を大学にフィードバックしています。

——教職課程への指導主事派遣等の成果や課題は。

学校・教育委員会と大学の双方からのニーズや協力者をウェブ上でマッチングする相互交流システムを通じて、昨年度は28人の指導主事を派遣しました。大学から学校への講師派遣は、今年7月現在で25人です。

学校現場は大学の専門性から学び、活用することができます。一方で大学側は学校を理解し、実践フィールドを得ることができます。システムの認知度を高め、活用事例を増やしていきたいと思います。

——最後に、横浜市が目指す養成・育成とは。

養成と育成の接続は、教員の資質・能力を向上させることがねらいです。教員志望者には学校現場の今を経験する機会を増やし、自身で教員としての適正をしっかりと見いだせるようになってほしいです。

また、教職課程のカリキュラム改革も必要だと感じています。採用後の成長を促すために、養成段階から教員としてのキャリアデザインを意識させる必要があると思います。

教育学や教科教育学に加え、学校マネジメントや人材育成など、教員の仕事全体に関わるのを養成段階から学んでほしいと思います。

こうした取り組みにより、入職後のミスマッチを回避し、柔軟でたくましい、学び続ける教員を養成・育成していくのが大切だと考えています。

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