神谷正孝の5分でわかる教育時事2017-2018(1)道徳の教科化

eye-catch_1024-768_kamiya2017kei塾主任講師 神谷正孝

「考えて議論する」がポイント

皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷正孝です。今号から、装いも新たに電子版と連動した企画として、独学で対策が難しいとされる教育時事について、各回テーマ別に解説していきたいと思います。リニューアル第1回目の今回は、小学校で実施が来年度に迫った「道徳の教科化」について取り上げたいと思います。

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■道徳の教科化の背景

神谷正孝の5分でわかる・図表平成26年10月の中央教育審議会答申「道徳に係る教育課程の改善等について」を基に、平成27年3月に小中学校学習指導要領が一部改正され、道徳が「特別の教科」として位置付けられることになりました。

道徳の教科化についてはこれまで度々議論されてきましたが、その都度教科化は見送られてきました。しかし、首相の諮問機関である教育再生実行会議の提言に基づいて、中央教育審議会で議論し、「特別の教科」として位置付けられることになりました。

学校教育法施行規則の改正により、30年度から小学校で、31年度から中学校で、それぞれ「特別の教科 道徳」が教育課程に規定され、教科としての道徳が始まります。これまでの「読み物」中心の指導方法を改め、児童生徒同士の「議論」を重視した道徳教育への転換です。

中教審の審議では、現状の「道徳」について、授業時数の取り扱いの問題(道徳の時間が他の教科の指導の時間に奪われている)や、道徳の時間の授業内容の問題(読み物を読んで感想を述べ合う、教師が導いた答えをただ言わせるだけ、当事者としてどのように行動するかという点が弱い)が指摘されました。

教科化することにより授業時間をしっかりと確保し、内容についても「議論する」中で、当事者としての課題への向き合い方を考えられるよう目指すなど、充実が図られることとなりました。

■道徳の教科化のポイント

「読み物道徳」から「考えて議論する道徳」への転換がポイントです。

児童生徒が直面する現実の課題は、必ずしも白黒がはっきりつけられる問題ばかりではなく、葛藤を含んでいたり、当事者としての対応に悩んだりといったことが少なくありません。そうした課題と向き合い、判断し行動する資質能力を育成するためには、従来のような授業の在り方では不十分であるとされました。すなわち「読み物教材」を読んで、感想を述べ合うような授業では、道徳的な価値を頭では理解していても、現実場面での行動において、学習した成果が発揮されないのではないかということです。

したがって、価値葛藤を含むテーマ(例えば、環境問題と科学技術の進展、科学と生命倫理など)について討論を行い、児童生徒や教員がそれぞれの立場から意見を述べ合い議論する中で、各人の内面で課題に対する認識が深まるようにしていく必要があります。

道徳においては、評価も重要です。評価の基本は、「他者と比較すること」を避け、児童生徒個人の中でどのように成長したか、どのように深まったかを評価する「個人内評価」を軸にする必要があります。

なお、評価や指導については、道徳教育に係る評価等の在り方に関する専門家会議が28年7月に出した報告書「『特別の教科 道徳』の指導方法・評価等について」に詳しく記載されています。

【例題】
1.特別の教科道徳や道徳教育についての説明として適切なものを1つ選びなさい。

1.道徳は、平成27年の学習指導要領一部改正により特別の教科として示されたので、他の教科と同様に教科目標に照らし合わせて数値による評価を行う。

2.「道徳の時間」に校長や教頭が授業参加することが認められているが、その一方で社会人の活用については、教科の性質上、制限されている。

3.高校における道徳教育は特別活動の中で実施するため、道徳教育の全体計画・年間指導計画の作成は必要ない。

4.平成20年・21年版学習指導要領からは「情報モラル」についての記述が加わった。

5.各学校においては、校長の方針の下に道徳教育コーディネーターを中心に、全教師が協力して道徳教育を展開しなければならない。

解答 4
[解説]1:数値評価は行わない。2:外部人材の登用も期待されている。3:特別活動の中で実施という点が誤り。また、全体計画は作成することが求められている。5:道徳教育コーディネーターではなく、道徳教育推進教師である。
2.次の文章は小学校・中学校学習指導要領「特別の教科 道徳」からの抜粋である。空欄に適語を補充しなさい。なお[ ]内は中学校のみの記述である。

(1)[学級担任の教師が行うことを原則とするが,]校長や教頭などの参加,他の教師との協力的な指導などについて工夫し,( 1 )を中心とした指導体制を充実すること。

(4)児童[生徒]が多様な感じ方や考え方に接する中で,考えを深め,( 2 )し,表現する力などを育むことができるよう,自分の考えを基に話し合ったり書いたり[討論したり書いたり]するなどの( 3 )を充実すること。[その際,様々な価値観について多面的・多角的な視点から振り返って考える機会を設けるとともに,生徒が多様な見方や考え方に接しながら,更に新しい見方や考え方を生み出していくことができるよう留意すること。]

(5)児童[生徒]の発達の段階や特性等を考慮し,指導のねらいに即して,( 4 )的な学習,道徳的行為に関する( 5 )的な学習等を適切に取り入れるなど,指導方法を工夫すること。その際,それらの活動を通じて学んだ内容の意義などについて考えることができるようにすること。また,特別活動等における多様な実践活動や( 5 )活動も道徳科の授業に生かすようにすること。

(6)小学校 児童の発達の段階や特性等を考慮し,第2に示す内容との関連を踏まえつつ,( 6 )に関する指導を充実すること。また,児童の発達の段階や特性等を考慮し,例えば,社会の持続可能な発展などの( 7 )な課題の取扱いにも留意し,身近な社会的課題を自分との関係において考え,それらの解決に寄与しようとする意欲や態度を育てるよう努めること。なお,多様な見方や考え方のできる事柄について,特定の見方や考え方に偏った指導を行うことのないようにすること。

(6)中学校 生徒の発達の段階や特性等を考慮し,第2に示す内容との関連を踏まえつつ,( 6 )に関する指導を充実すること。また,例えば,科学技術の発展と生命倫理との関係や社会の持続可能な発展などの( 7 )な課題の取扱いにも留意し,身近な社会的課題を自分との関係において考え,その解決に向けて取り組もうとする意欲や態度を育てるよう努めること。なお,多様な見方や考え方のできる事柄について,特定の見方や考え方に偏った指導を行うことのないようにすること。

解答
( 1 )道徳教育推進教師、( 2 )判断、( 3 )言語活動、( 4 )問題解決、( 5 )体験、( 6 )情報モラル、( 7 )現代的