神谷正孝の5分でわかる教育時事2017-2018(2)新学習指導要領の要点 その1

eye-catch_1024-768_kamiya2017kei塾主任講師 神谷正孝

皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷正孝です。この連載では独学で対策が難しいとされる教育時事について、各回テーマ別に解説を行っています。

第2回目の今回は、来年度から移行措置がスタートする新学習指導要領について取り上げます。来夏の試験において最重要事項の一つです。他の教育時事ともつながる内容なので、本格的な対策の最初にしっかりと内容を確認しておきましょう。

◇  ◇  ◇

神谷■改訂の経緯

これまでの教育課程の検証を踏まえ、中央教育審議会は、2030年以降の社会のメインストリームとなる次世代の児童生徒へ、今後求められる力を明確にし、急速に進むグローバル化やICT化への対応を踏まえた新教育課程を示しました。

■改訂の基本的方向性

文科省のウェブサイトによれば、改訂の基本的方向性は以下の通りです(傍線引用者)。

* * *

▽教育基本法、学校教育法などを踏まえ、これまでの我が国の学校教育の実践や蓄積を活かし、子供たちが未来社会を切り拓くための資質・能力を一層確実に育成。その際、子供たちに求められる資質・能力とは何かを社会と共有し、連携する「社会に開かれた教育課程」を重視。

▽知識及び技能の習得と思考力、判断力、表現力等の育成のバランスを重視する現行学習指導要領の枠組みや教育内容を維持した上で、知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成。

▽先行する特別教科化など道徳教育の充実や体験活動の重視、体育・健康に関する指導の充実により、豊かな心や健やかな体を育成。

* * *

基本理念としては平成10年版からの「生きる力」の理念を踏襲しています。その意味においては、平成元年以降の大きな流れの中に位置付けることができます。なお、前回改訂時にもみられたことですが、授業時数の増加や学習内容の追加などの動きにより、「脱ゆとり」と称されることがしばしばあります。しかし、文科省としては、一度もこの言葉を使っていないので、面接や討論、論文などでは安易に用いないほうがよいでしょう。昭和末期から平成にかけての大きな流れの中で、文科省が一貫して目指してきたのは学力の「量から質へ」という転換です。今回の改訂もその流れの中に位置付けておきましょう。

■育成すべき資質・能力の3つの柱

また、これまでも重要視されてきた「生きる力」を3つの側面から捉えた「確かな学力」「健やかな体」「豊かな心」を総合的に捉えて構造化し、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」の3つを育成すべき柱として示しています。こうした基本理念に関することは、多く出題されるので注意が必要です。

※次回は、内容面をもう少し掘り下げてみたいと思います。

【例題】次の文章は学習指導要領の改訂の経過について述べたものである。文章中の空欄にあてはまる語句を,下の語群から選びなさい。

○昭和33年の改訂では,学習指導要領の改訂に先立ち,学校教育法施行規則の一部を改正した。小学校の教育課程は,各教科,( 1 ) ,特別教育活動及び学校行事等によって編成するということを明示した。また,戦後,新教育の潮流となっていた( 2 )や単元学習への偏りすぎる傾向にかんがみ,知識の( 3 )を重視すべきではないかという観点に立ち,小学校では国語・算数,中学校では数学・理科の内容充実が図られ,授業時数を増加させた。高校では,必修科目を増加させた。

○昭和43年の改訂では,めざましい社会情勢の進展とともに教育内容の一層の向上が求められるようになった。小・中学校では特別教育活動と学校行事を統合し,( 4 )とし,中学校,高等学校では( 5 )を必修とした。この改訂後,我が国の学校教育は急速な発展を遂げ,高等学校への進学率が90パーセントを超えるに至った。

○昭和52年の改訂では,真の意味における知育を充実し,児童生徒の( 6 )の調和のとれた発達をどのように図っていくかが課題となった。具体的には,( 7 )のある学校生活を実現するため,各教科の指導内容を( 8 )し,標準授業時数を( 9 )した。

○平成元年の改訂では,( 10 )の基盤を培うという観点に立ち,21世紀を目指し社会の変化に自ら対応できる心豊かな人間の育成を図ることを基本的なねらいとした。具体的には,基礎的・基本的な内容を身に付けさせるため,個に応じた指導など指導方法の改善が図られ, ( 11 )に配慮した道徳教育の充実,人間としての( 12 )に関する教育の充実が提唱された。

○平成10年の学習指導要領は,各学校が( 7 )のなかで( 13 )を展開し児童生徒に( 14 )を育成することをねらいとして改訂されたものである。各学校が創意工夫を生かした教育活動を行う時間として( 15 )が創設された。

○平成20年の改訂では,引き続き( 14 )をはぐくむことが規定されたが,基礎的基本的な知識技能を確実に習得させ,それらを用いて課題解決するために必要な思考力・判断力・( 16 )の育成をねらい,約30年ぶりに授業時数を増加させた。また,小学校高学年で,新たに( 17 )を設定し教育課程に位置付けた。各教科や( 15 )を通して討論・発表など児童生徒の( 18 )を充実することが示された。なお,戦後60年を経て,( 19 )が,初めて改正され,それを受けた( 20 )の改正で明確になった義務教育の目的・目標を踏まえて指導要領が改訂された。
〔語 群〕
系統性  言語活動  経験主義  構造主義  系統主義  知・徳・体 道徳
総合的な学習の時間   クラブ活動  特色ある教育  生涯学習  心・技・体
在り方生き方  外国語活動  英会話  学校教育法  学校教育法施行規則
ゆとり  生きる力  特別活動   道徳的実践力 行動力 課題解決能力 増加
削減  精選  厳選  表現力  教育基本法  グループ学習
解答
1:道徳 2:経験主義 3:系統性 4:特別活動 5:クラブ活動 6:知・徳・体
7:ゆとり 8:精選 9:削減 10:生涯学習 11:道徳的実践力
12:在り方生き方 13:特色ある教育 14:生きる力 15:総合的な学習の時間
16:表現力 17:外国語活動 18:言語活動 19:教育基本法 20:学校教育法
例題2 次の文章は中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」の一部である。空欄に当てはまる語句を書きなさい。

○これからの教育課程や学習指導要領等は,学校の( 1 )の下,子供たちの多様で質の高い学びを引き出すため,学校教育を通じて子供たちが身に付けるべき資質・能力や学ぶべき内容などの全体像を分かりやすく見渡せる「学びの( 2 )」として,教科等や学校段階を越えて教育関係者間が共有したり,子供自身が学びの意義を自覚する手掛かりを見いだしたり,家庭や地域,社会の関係者が幅広く活用したりできるものとなることが求められている。教育課程が,学校と社会や世界との接点となり,さらには,子供たちの成長を通じて現在と未来をつなぐ役割を果たしていくことが期待されているのである。

○それを実現するためには,まず学習する子供の視点に立ち,教育課程全体や各教科等の学びを通じて「( 3 )」という観点から,育成を目指す資質・能力を整理する必要がある。その上で,整理された資質・能力を育成するために「( 4 )」という,必要な指導内容等を検討し,その内容を「( 5 )」という,子供たちの具体的な学びの姿を考えながら構成していく必要がある。

○これらをまとめれば,新しい学習指導要領等に向けては,以下の6点に沿って改善すべき事項をまとめ,枠組みを考えていくことが必要となる。

①「( 3 )」(育成を目指す資質・能力)
②「( 4 )」(教科等を学ぶ意義と,教科等間・学校段階間のつながりを踏まえた教育課程の編成)
③「( 5 )」(各教科等の指導計画の作成と実施,学習・指導の改善・充実)
④「子供一人一人の発達をどのように支援するか」(子供の発達を踏まえた指導)
⑤「何が身に付いたか」(学習評価の充実)
⑥「実施するために何が必要か」(学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策)
解答
(1)創意工夫
(2)地図
(3)何ができるようになるか
(4)何を学ぶか
(5)どのように学ぶか
解説 第4章学習指導要領等の枠組みの改善と「社会に開かれた教育課程」2.学習指導要領等の改善の方向性より

 

関連記事