神谷正孝の5分でわかる教育時事2017-2018(5)生徒指導上の諸問題(H28データ)その2 データの読み方を覚える②

eye-catch_1024-768_kamiya2017kei塾主任講師 神谷正孝

皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷正孝です。この連載では独学で対策が難しいとされる教育時事について、各回テーマ別に解説を行っています。

第5回目の今回は、前回に引き続き文部科学省の「問題行動調査」を取り上げます。10月下旬に公表された速報値を基に、試験で押さえるべき内容を確認します。

平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(文部科学省)から作成
平成28年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(文部科学省)から作成

□暴力行為

調査結果によると、小・中・高校での暴力行為(対教師暴力・生徒間暴力・対人暴力・器物損壊)の発生件数は5万9457件(前年度5万6963件)と前年度より微増しています。学校種別にみると、1番多い中学校と2番目に多い高校では、前年を下回っていますが、小学校で前年を大きく上回りました。小学校の暴力行為は、国私立学校も含む現在の調査方法になった平成18年度以降、増加の一途をたどっています。

なお、暴力行為の形態別では「生徒間暴力」が1番多く、以下「器物損壊」「対教師暴力」と続きます。

暴力行為への対応については、生徒指導提要で、「学校においてもいかなる理由からも認められないし絶対に許されない行為である」と暴力を明確に否定するとともに、「暴力は人権の侵害でもあり人権尊重の精神に反する」との認識を全教職員が共有した上で、学校における一致協力した取り組みを進めることが示されています。

暴力行為が起きないような学級経営を心掛け、規範意識の醸成を図ることはもちろん、暴力行為が発生した場合は、それが学校における秩序の破壊や他の児童生徒の学習を妨げるものであれば、統一した指導観・指導基準の下、「教職員の毅然とした対応」や「解決に向けた粘り強い姿勢」、場合によっては「出席停止などの措置」で対応することも必要になると理解しておきましょう。

□高校中退・高校不登校

高校での不登校生徒数は、約5万人で、不登校生徒の割合は約1.5%です。前年とほぼ同じ結果が報告されています。また、高校中退者数は減少傾向にありますが、中退率はほぼ前年並みの1.4%でした。

高校での不登校や高校中退の問題は、キャリア形成の問題と直結するだけに、しっかりと受け止める必要があります。ちなみに高校中退の理由は、「学校生活・学業不適応」と「進路変更」が毎年拮抗しています。いずれにしても、高校だけの問題ではなく中学校段階での進路指導や、小学校段階からのキャリア教育に課題があるといえるでしょう。したがって、高校不登校や高校中退の問題は、高校教員を受験する人たちだけの問題ではないのです。

□自殺

児童生徒の自殺については、合計244人(前年214人)が報告されています。内訳は高校生が1番多く7割強を占めます。以下、中学生・小学生と続きます。自殺した児童生徒が置かれていた状況として、「いじめの問題」が確認されたケースは10人でした。感覚的には「いじめ自殺」はもっと多いように思われますが、客観的に「いじめ」の事実が確認されたケースは少ないということです(ただし、これは「確認されていない」ということを意味しているだけです)。

【例題】1 下のA~Eの文のうち、平成18年6月5日に文部科学省から出された児童生徒の規範意識の醸成に向けた生徒指導の充実について(通知)」に示されている内容として正しいものに○、誤っているものに×をつけたとき、正しい組合せはどれか。次の1~6から1つ選びなさい。

A 生徒指導上の対応に係る学校内のきまり及びこれに対する指導の基準をあらかじめ明確化しておくこと。その際、各学校の実態に応じ、米国で実践されている「ゼロ・トレランス方式」にも取り入れられている「共感的指導」等の方法を参考とするなどして、体系的で一貫した指導方法の確立に努めること。

B 生徒指導に係る指導基準については、あらかじめ児童生徒又は保護者等に対して明示的に周知徹底することとし、もって、児童生徒の自己指導能力の育成を期するとともに、家庭や地域レベルにおける児童生徒の規律ある態度や規範意識の育成に向けての指導(しつけ)との連携の確保にも配意すること。

C 学校や社会のきまり・ルールを守ることの意義・重要性について、学級活動・ホームルーム活動や道徳、さらに別途通知する「非行防止教室」等における指導の場を積極的に活用しながら、繰り返し指導を行うことにより、児童生徒の規範に対する認識と理解の向上を図ること。

D 学校内の決まり等を守れない児童生徒の問題行動や非行等に対しては、個々の教員が自らの判断で適切な罰則を課するなど、毅然とした指導を行っていくこと。

E 問題行動等への対応に当たっては、児童生徒の規範意識の向上を図るための取組みと併せて、個々の児童生徒の状況に応じて、教育相談等を通じて、問題行動等の背景やそれぞれの児童生徒が抱える問題等をきめ細かく把握して対応することが必要であり、このような観点からの教育相談・カウンセリング機能の一層の充実に努めること。

A B C D E
1.○ ○ × × ○
2.× ○ × ○ ○
3.× × ○ ○ ×
4.○ × ○ × ×
5.○ ○ × × ×
6.× ○ ○ × ○

例題1 解答 6

【解説】
A:「共感的指導」ではなく「段階的指導」
B:正しい。
C:正しい。
D:「自らの判断で適切な罰則を科する~」の文が不適切である。
E:正しい。

ゼロ・トレランスとは、「寛容の名のもとに曖昧な指導をしない」ということである。大きな問題行動に発展させないために、小さな問題行動から、あいまいにすることなく注意をするなど段階的な指導を行う。小さな違反行為の見逃しは、学校内の秩序を低下させ、やがて重大な問題へと発展する危険性がある。それを踏まえて、指導基準に基づき、段階的な指導を行う必要がある。

例題2 次は、「暴力行為のない学校づくりについて(報告書)」〔平成23年7月文部科学省暴力行為のない学校づくり研究会〕の抜粋である。( ① )~( ④ )に入る語を下の語群ア~クから選び、記号で答えなさい。

(基本姿勢)
学校の秩序を乱し、他の児童生徒の学習を妨げる暴力行為に対しては、児童生徒が安心して学べる環境を確保するため、適切な指導、措置を行うことが必要である。(中略)暴力行為が発生した場合には、( ① )を根底に置きつつ、毅然とした姿勢で加害児童生徒への指導に臨み、全ての児童生徒が学校生活によりよく適応し、充実した有意義な学校生活を築けるようにすることが求められる。

(個に応じた指導)
個々の暴力行為の背景には、児童生徒の抱えるさまざまな課題、個人を取り巻く家庭、学校、社会環境などの要因があるものと考えられる。その指導の際には、関係する児童生徒の多面的、客観的な理解に立ち、( ② )を育てることに重点を置いて教育的に指導を進めることが必要である。

(教職員と児童生徒の人間関係の重視)
教員は、教科の学習指導の専門家であるだけにとどまらず、教育全般の専門家であることは言うまでもない。このことから、問題の有無に関わらず、一人一人の児童生徒の( ③ )に配慮し、教員と児童生徒、児童生徒間で、信頼関係に基づく好ましい人間関係が成立するように努めることが肝要である。

(新しい傾向の暴力行為への対応)
近年の暴力行為の状況を見ると、その背景には、児童生徒の学校外における活動範囲の拡大や、インターネットや携帯電話の普及に伴う問題などがあり、その指導には、学校と家庭や地域社会、関係機関とをつなぐ( ④ )のシステムづくりが必要である。

ア 道徳的実践力 イ 人権  ウ アセスメント  エ 自己指導能力
オ 教育的配慮  カ 学力  キ 行動連携  ク 友好関係

例題2 解答 ①オ ②エ ③イ ④キ

【解説】 「暴力行為のない学校づくり研究会」とは、教育現場における暴力行為への効果的な対応の在り方について、即時的な対応、予防的な対応、予後的な対応といったさまざまな観点から検討し、各学校において活用しやすい研修教材を提案することを目的として設置された研究会である。

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