神谷正孝の5分でわかる教育時事2017-2018(8)特別支援教育ふたたび

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求められる「合理的配慮」の提供

皆さん、こんにちは。仙台を拠点とする教員採用試験対策専門スクールkei塾主任講師の神谷正孝です。第8回目の今回は、出題頻度も上がっていることも踏まえて再度、特別支援教育について解説します。昨年度のこの連載の第1回の記事も併せてご覧ください。

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最初に特別支援教育とは何か、ポイントを押さえます。従来の特殊教育が、「障害種や程度に応じた手厚くきめ細かい指導を特別の場で実施」するものであったのに対して、特別支援教育は、最初の段階で障害の有無で切り分けず、全体的に捉えているところに違いがあります。障害の程度で線引きするのではなく、一人一人の教育的ニーズに応じた適切な指導・必要な支援を行っていくという考え方です。したがって、特別支援学校や特別支援学級といった場だけではなく、特別な支援を必要とする児童生徒が在籍する全ての学校で実施されます。

2007年以降の特別支援教育をめぐる動きは図を参照してもらうことにしますが、「障害者の権利に関する条約」の発効以降は、国内の体制整備も進められています。

神谷正孝8_表

特に14年度からの就学先の決定方法の変更については、その背景も含めて押さえる必要があります。それまでの、就学基準に該当する者は原則特別支援学校就学、特別の事情により普通学校へ就学する児童生徒を「認定就学者」として切り分ける制度から、基本方針を転換し、障害のある児童生徒も普通学校で対応することを基本路線に、特別支援学校に就学する児童生徒を「認定特別支援学校就学者」とする制度に変更しています。

「障害者の権利条約」に示される「インクルーシブ教育システム」とは、端的に言えば、「障害のある児童生徒と障害を持たない児童生徒が共に学ぶ仕組み」であって、自己の生活地域における初等中等教育の場を確保することが求められます。新制度では、知的障害や肢体不自由の児童生徒が、自己の生活地域の中で初等中等教育を受けることが基本路線となりました。今後は、普通学校の中で障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の交流学習や共同学習がこれまで以上に盛んに行われます。留意点などを確認しておきましょう。

交流学習や共同学習が多く展開される中では、障害のある児童生徒への「合理的配慮」の提供が求められます。「合理的配慮」とは平たく言えば、障害のある児童生徒がスムーズに活動していけるようにするための変更および調整のことです。個別の障害による困難の状況や教育的ニーズに基づいて提供されますが、特例措置や個別サポートといったソフト面での対応をイメージしておきましょう。また、これとは別に、施設・設備等の環境を整備することを「基礎的環境整備」といいます。校舎・トイレのバリアフリー化などのインフラ面を整備するのは管理者の仕事です。区別しておきましょう。

なお、「合理的配慮」の提供を拒むことは、障害者差別に当たるとされ、学校を含めた行政機関においては、配慮の申し出を検討せずに断ることは認められないことにも注意しておきましょう。

おしまいに、新しい動きを。この4月1日付で学校教育法施行規則が改正され、高校においても「通級による指導」が制度化されました。特別な支援を必要とする生徒の進路支援やキャリア教育など、さまざまな取り組みが期待されます。こうした動きも押さえておきましょう。

【例題】
例題1 「障害者である児童及び生徒が障害者でない児童及び生徒と共に教育を受けられるような教育の体制」は,我が国において平成26年2月19日に効力が生じた障害者の権利に関する条約第24条の英文では何と書かれているか。次の1~6から1つ選べ。

1.integrated education system
2.exclusive education system
3.isolation education system
4.inclusive education system
5.special education system
6.special needs education system

解答 4

解説:「インクルーシブ教育システム」のことである。

例題2 次の文章は,平成24年7月の中央教育審議会初等中等教育分科会で報告された,障害者の権利に関する条約への対応としての「合理的配慮」における記述である。( ① )~( ④ )に当てはまる語句として適切なものの組合せを,次の1~6から1つ選びなさい。

「合理的配慮」とは,「障害のある子供が,他の子供と平等に『教育を受ける権利』を享有・行使することを確保するために,学校の設置者及び( ① )が必要かつ適当な( ② )を行うことであり,障害のある子供に対し,その状況に応じて,学校教育を受ける場合に( ③ )に必要とされるもの」であり,「学校の設置者及び( ① )に対して,体制面,( ④ )面において,均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。

1.①学校   ②変更・調整  ③個別   ④財政
2.①担任   ②指導・助言  ③総合的  ④環境
3.①保護者  ②変更・調整  ③個別   ④人材
4.①学校   ②指導・助言  ③総合的  ④環境
5.①担任   ②変更・調整  ③個別   ④人材
6.①保護者  ②指導・助言  ③総合的  ④財政

解答 1

解説:「合理的配慮」は求められたことにすべて応えるのではなく、提供する側の「体制面・財政面において均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」とされている。合理的配慮の提供例は、文部科学省ウェブサイトで以下のように例示されている。


1.共通
・バリアフリー・ユニバーサルデザインの観点を踏まえた障害の状態に応じた適切な施設整備
・障害の状態に応じた身体活動スペースや遊具・運動器具等の確保
・障害の状態に応じた専門性を有する教員等の配置
・移動や日常生活の介助及び学習面を支援する人材の配置
・障害の状態を踏まえた指導の方法等について指導・助言する理学療法士、作業療法士、言語聴覚士及び心理学の専門家等の確保
・点字、手話、デジタル教材等のコミュニケーション手段を確保
・一人一人の状態に応じた教材等の確保(デジタル教材、ICT機器等の利用)
・障害の状態に応じた教科における配慮(例えば、視覚障害の図工・美術、聴覚障害の音楽、肢体不自由の体育等)

2.視覚障害
・教室での拡大読書器や書見台の利用、十分な光源の確保と調整(弱視)
・音声信号、点字ブロック等の安全設備の敷設(学校内・通学路とも)
・障害物を取り除いた安全な環境の整備(例えば、廊下に物を置かないなど)
・教科書、教材、図書等の拡大版及び点字版の確保
3.聴覚障害
・FM式補聴器などの補聴環境の整備
・教材用ビデオ等への字幕挿入

4.知的障害
・生活能力や職業能力を育むための生活訓練室や日常生活用具、作業室等の確保
・漢字の読みなどに対する補完的な対応

5.肢体不自由
・医療的ケアが必要な児童生徒がいる場合の部屋や設備の確保
・医療的支援体制(医療機関との連携、指導医、看護師の配置等)の整備
・車いす・ストレッチャー等を使用できる施設設備の確保
・障害の状態に応じた給食の提供

6.病弱・身体虚弱
・個別学習や情緒安定のための小部屋等の確保
・車いす・ストレッチャー等を使用できる施設設備の確保
・入院、定期受診等により授業に参加できなかった期間の学習内容の補完
・学校で医療的ケアを必要とする子どものための看護師の配置
・障害の状態に応じた給食の提供

7.言語障害
・スピーチについての配慮(構音障害等により発音が不明瞭な場合)

8.情緒障害
・個別学習や情緒安定のための小部屋等の確保
・対人関係の状態に対する配慮(選択性かん黙や自信喪失などにより人前では話せない場合など)

9.LD、ADHD、自閉症等の発達障害
・個別指導のためのコンピュータ、デジタル教材、小部屋等の確保
・クールダウンするための小部屋等の確保
・口頭による指導だけでなく、板書、メモ等による情報掲示